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第1話 かつての英雄

この上田ウメの第2作目です。

足らぬ点が山ほどありますがよろしくお願いします。

かつて中央ユーラシア地方には英雄が存在した。

 その英雄たちの名はムーンブレイク。5人という少数で構成された冒険者たちである。20~30人で冒険者は構成されていた時代に5人は異常であった。

 この英雄たちは前衛2人、中衛、後衛、簒奪者がそれぞれ一人ずつの単純な構成をしており、今はこの構成が主流である。

 リーダーは剣樹と呼ばれる男であると文献には記されている。パーティ内では前衛の攻撃を務めており、刃渡りの短い両手剣を愛用していたそうだ。今の時代ではこの武器は使用者の危険が高いとして普及率は低い。

 剣樹を支えるのが副リーダーである守と呼ばれる男だ。文献には寡黙な男で誰も彼の笑顔を見たことがないほどらしい。パーティ内で前衛の守衛を務めており、彼が防げなかった攻撃はないことで有名だったそうだ。武器は大楯とランスロットで、こちらもカウンター攻撃は竜に対しては危険なため、普及率は低い。

 中衛はパーティない唯一の女性で、名は奈多。この女性の評判は最高に悪い。常に酒を持ち歩き、戦闘中でもタバコを吸う。ギャンブルにも手を出しており、パーティ内のお金を何度も溶かしたようだ。そんな彼女を一言で表すとクズである。しかし腕は確かなようで、前者2人の足りない部分を補っていたらしい。武器は薙刀で、それにより距離をとり2人の援護をしたと思われる。

 見たものが振り返るほどの美人であったと記載されており、数々の男を虜にしたそうだ。

 後衛の男は今でも有名である。名は檄。この男の評判もあまり良くない。乱暴者で、気に食わないことがあればすぐ暴力をふるったり、思い通りに

行かなかったら拗ねて戦闘に参加しないこともしばしばあったそうだ。しかし彼が扱う武器は対竜遠距離狙撃砲。言わばスナイパーと呼ばれる武器を扱っていた。

 スナイパーと言えば忍耐力のいることで有名であり、あれから70年たった今でもスナイパーをして活躍するものは少数である。

 彼は身体も大きかったらしく、隠れることが主流のスナイパーをどうやってこなしてきたのか今でも謎である。

 最後は簒奪者である玲仁。このパーティの指示塔であり、戦闘以外の業務を一人でこなしたできる男だったらしい。冷酷な男であり、感情的になりやすい檄とはよく衝突していたらしい。常にパーティのために心身共に全力を尽くしたらしく、偶に奇想天外な策を披露したこともあるようだ。

 そんなムーンブレイクだが、実は英雄になる前から中央ユーラシアでは有名な冒険者たちだった。

 乱暴で下品、追いはぎをしなくなった山賊のような雰囲気を醸し出していたらしい。ある老夫婦によると、当時はもう最悪冒険者が街の中に来たと絶望しことを今でも鮮明に覚えているらしい。

 無理もない、55年前とは言えば冒険者はお金が有り余って暇な富豪がスリルを求めてする大規模な遊びだったのだ。その中で冒険者が来たと街の人が外から繰り出したら、富豪とは真反対の5人が来たのだから。

 しかし見た目とは裏腹に、ムーンブレイクは街の人に対して真摯に対応し、些細な悩みごとや困りごとでも助けてくれたという。

「あの時は運んでいた荷物を手伝ってくれてな、今まで冒険者たちはそんなことしなかったから驚いたし、ありがたかったな」

「この人ったらその日ずっと彼らをほめていましたよ。私ったら耳にタコができるくらい聞きましたよ。」

またある人はこんなことを語っていた。

「ギャンブルがとても弱いやつがいてな、あまりにも顔に出てくれるもんだからがっぽり稼がせてもらったよ。その後強盗に襲われそうになった時助けてもらったもんで全額返金したがね!がっははは!」

 どうやら善悪にかかわらず困っていたら助けていたお人好し集団だったようだ。そのため、英雄になる前からそこそこの知名度を誇っていた冒険者だったようだ。


 そんな彼らが英雄と呼ばれるのは、神話の時代から存在したとされる噴隕龍「ゴルガルム」を討伐したからである。

 中央ユーラシアのアラト火山火口部に生息しており、普段は大人しい龍である。人が住み始めた10000年前から噴火もなく、比較的穏やかな火山だったそうだ。

 しかし数年前、今からだと58年前から龍が突然暴走し、火山が噴火した。その噴火はすさまじいものであり、噴火した日から2,3年は中央ユーラシア全域で火山灰の影響により空が見ることができなかったらしい。

 火山灰の影響は農作物が一番被害を受けた。日光が当たらないためほとんどの作物が育たなくなり、大飢饉となった。その年で飢餓により亡くなった数は100万人を超えるとされている。

 火山の噴火を止めるべく中央ユーラシアは各地で戦える冒険者を募り、トコル火山に向かわせた。後の英雄ムーンブレイクもその冒険者パーティの一つだった。

 そしてムーンブレイクはただ一組、見事生還し龍の討伐をして見せた。ムーンブレイクという名は中央ユーラシアの灰による夜を終わらせた冒険者パーティとして人々が呼び始めた名が定着したと考えられている。

 その後、ムーンブレイクは解散。原因は第二の人生を歩みたいかららしい。なんと冒険者らしい考えだと私は考える。ここまでが英雄ムーンブレイクとしてこの中央ユーラシア地域に伝わる話である。正直、ここまで情報を集めるのには苦労した。自身の足で町や村を歩き続け、文献をあさるのは久しぶりだ。それこそ神話の時代ぶりである。しかし楽しかった。人々の積み重ねた歴史が形となって現れるのは素晴らしい。これまでも、これからも人々は歩んで行くのだろう。

 私が集めた歴史が、後世に残ることを、英雄ムーンブレイクが残り続けることを切に願う。


調査日:龍滅歴  38329年

調査書作成日:龍滅歴  38334年

著者:月見里タケル


参考文献:中央ユーラシアの方々

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