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「我が娘を救ってくれて、礼を言う」


「いや……別に当たり前のことをしただけだし」


「こ、国王の前だぞ!? もう少し、言葉遣いをだな」


 死にかけの護衛が慌てたように、俺に声をかける。言葉遣いって言われても、この世界のマナーもわからねぇし。


「よいよい、ケヒル。我が娘の命の恩人じゃぞ? ……ところで、リツ殿。その、心に決めた相手というのは、いるかね?」


 何言ってんだ、この国王。そう思いながら、万年引きこもりの俺は答える。


「いや、特にいませんが」


「ほう。よいよい、では、我が娘を娶ってくれぬか? 我が国でのしきたりで、命の恩人と婚姻を結ぶというものがある。さすがに王族がその慣わしを破るというのは、な?」


「はぁ」


 俺が興味なさげに答えるのを見て、死にかけの護衛……ケヒルさんとやらが、怒っている。


「お主、サーシャ様に承諾の意を示したのに、断るなどしないだろうな!?」


「承諾の意……?」







「その、よろしければ、我が家にお越しいただけますか? お礼をさせてくださいませ。命の恩人を放り出すなんてすると、父上に怒られてしまいます」


「あぁ、礼くらいなら受け取ろう。俺は、辺境の地からこの国に来たばかりなんだ。詳しくないから、道中いろいろと教えてもらえると助かる」


「かしこまりました」







 あれが、承諾の意になるらしい。


「では、婚姻の儀を」


「お待ちください、父上!」


 サーシャが俺の困惑を汲んだのか、声をあげてくれた。



「今回、命を救われたのは、妾だけではございません」


「は?」


 突然何を言い出すんだ、この姫君はと思っていると、国王は感慨深げに続きを促す。


「ほぅ」


「リツ様。あなたのような素敵なお方に、命を救っていただき、妾は幸せにございます」


「……どうも?」


「父上、リツ様は婚姻の了承という意と理解なさらず、こちらまでいらしたようです。しかし、我が国からすると、喉から手が出るほどお強いお方です。リツ様ほどのお方が、妾だけで満足できるとは思いません。我が子のみ継承権を持つとして、側室制度を認め、この国に自主的にとどまっていただけばよろしいではありませんか!」


「継承権……?」


 混乱している俺に、国王が分かるように言葉を紡いだ。


「確かに、我が国の継承者は、サーシャお主のみだ。側室制度の導入については、お主の言うとおりの継承権を指定した上で認めよう」


「ありがとうございます! では、リツ様。妾と側近の未婚の娘ナル共々、よろしくお願いいたします」


 サーシャの横にナルと言う少女が、三つ指をついて礼をした。


「は?」



 そんなこんなで俺は、二人の少女の夫となったのだった。



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