君と話したい本の話し
原稿用紙に全て書き終わり投稿する今日この頃
キャラクターの名前考えるのが1番難しいと実感
英語の単語 you soからでいいかと決めたあの日
桜がまだ咲いてる高校の図書室
小糠雨に濡れる窓ガラスを見ながら廊下を歩く2人の少年の会話が聞こえる
「尤、今度は何の本を借りるんだ」
尤と呼ばれた少年は田中尤であり声をかけた少年は田中奏である
「続きを借りるつもり」
「木の旅だっけ?」
「うん、23巻を借りるんだ」
2人は図書室に入りそれぞれ目当ての本のコーナーに行く
尤がその本棚にたどり着くと女の子がバレリーナのようにこれでもかと、つま先立ちをして本を取ろうとしてるところだった
「えっと音頭さんだっけ?よければ取るよ?」
音頭と呼ばれた少女は尤と奏のクラスメイトの音頭寧音であり、不意に声をかけられた寧音は言葉にならない音を口から出すだけで他には何も言わなかった。
取ろうとしてた場所を見るとちょうど尤も読んでる本-木の旅-だったので語りかけたがったが明らかに顔がこわばってた
「あぁ…なんかごめんね、声かけられたくなかった?」
口をパクパクさせた寧音はそのまま逃げるように図書室を出て行ってしまった
呆気にとられて見守ることしかできなかった尤はまぁいいかと思いながら踵をかえす
「あれ?尤、今なんか無視されてなかった?」
「音頭さんは返事してくれたよ、ありがとう、無視されたか気になったんだよね、僕は大丈夫だよ」
嘘をついたが何故この時に嘘をついたのか尤自身もわからなかった
本を借りて図書室から去った2人の田中、そのうちの尤は胸のうちで寧音も木の旅を読むんだ、今度はどのお話しが好きか訊きたいなと思うのであった
「木の旅ってどんな話しなの?」
教室に戻る道中で奏は興味津々にたずねる。
「国をとある事情ですてた女の子が旅をするお話しだよ、短編が多くて読みやすい」
教室に戻ると寧音は予習か復習か、ノートと教科書を昼休みというのに開いてお勉強をしていた
前に座ってる太田深美と後ろに座ってる工藤ららとお話しも片手間にはしてる、今日もノートを深美に貸しているのが目に映った
毎日のように目で追ってしまう
姿勢がよく、それもあるのか綺麗にみえ、ご令嬢と言われても信じる自信が尤にはある
寧音が勉強してるのに遊ぶのが後ろめたい尤は教科書をひろげ予習をする
「お?尤も勉強するん?」
「あぁ、僕はそんなに勉強できるわけじゃないからね」
「音頭みたいだな」
「姿勢がいいのも敵いそうにないや、それに音頭さんは成績が悪そうに見えないよ」
「話しを変えるけどさ、太田かわいいけど尤はどう思う?実際にクラスの奴のほとんど可愛いって言うけど」
「美人ではあるとは思う、あまり話さないから可愛いかは分からない」
心の中では可愛いとか可愛くないとか、そういう気持ちを寧音以外の女の子にもったことがないと尤は答えてる
今日もこっそりと寧音を視線で追い、クラスメイトの悩みとかに本気で相談にのったり勉強を教えたりする姿を堪能した
放課後、多くの男子に囲まれた深美を寧音とららは見送って帰る支度をしている
しかし、何かを話した後でららは教室をあとにし、反対に寧音は1人で帰る準備をしていた尤に近づく
「昼休みの時はすみませんでした」
「いや、僕もごめんなさい」
「あの時も結局お礼も言わないで帰りました、何かお詫びをさせてください」
「あっじゃあさ、音頭さんも木の旅を読むのか知りたい」
「え?えっと」
別ベクトルのお願いをされたからか明らかに動揺してる寧音はそれでもと考えて意を決した
「6巻まで読みました、今日は7巻めを借りようとしたところでした」
「邪魔しちゃったよね、ごめん」
「いえ、読んでる本が他にもあったので」
「ちなみになんの?」
「…あ、赤目のサナ」
「それ僕も読んだことある!妹が同じサナって名前で気になったんだ」
「妹がいるんですね」
「そうそう、漢字は花が咲くの咲くに、永遠の永で咲永」
久々に話した寧音との会話は楽しく、あっという間に日が沈む
尤はもう少し長く1日があればいいのにと思うのであった