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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
幕間 バーンズ家の色々諸々冬景色

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第481話 まずはカオスな宴会をお楽しみください:後

 ライミ・バーンズ、孫達に囲まれるの巻。


「やっほぉ~! ライミ、おっすおっす! 前のときはあんまり話せなかったから今日はいっぱい話そうぜ~! あ、オレはタマキなんだぜ~!」

「どもっす。今日は集さんはいないんすね。タマちゃんが言う通り、こないだはあんまりライミさんとは話せてなかったんで、今日は楽しみにしてたっすわ」


 と、タマキとケント。


「やぁやぁ、ライミおばあちゃん! 改めて自己紹介をしようじゃないか! 輝ける一振りの刃にしてバーンズ家五女にしてレフィード家の優しき母、ラララだよ! よろしく頼むよ! パパちゃんのママちゃんとのことで、実に興味津々さ!」

「ども、ラララの相方のタイジュです。エンジュとは俺達が『出戻り』する前からの知り合いらしくて、娘がお世話になってます。本日はよろしくお願いします」


 と、ラララとタイジュ。


「ムホホホホホホ! まさかととさまの異世界での実母とは、とんだサプライズじゃわい! よいのう、よいのう。イベントとはこうした予想外のハプニングがあってこそ盛り上がるというものよ! カリン・バーンズじゃ、よろしくたのむわえ!」

「…………父親の母親。つまり祖母。ボクはジンギ、いえい、いえ~い」


 と、カリンとジンギ。


「エヘヘヘヘヘ、サラさんの幼馴染なんですってぇ~。しかも父様の母親だなんてぇ~、奇縁奇縁。これはお酒も進みますねぇ~、あ、シイナ・バーンズです、よろしくお願いしますぅ~。……あれ、さっき自己紹介しましたっけ~? ま、いっか~!」

「ごめんな来魅ちゃん、ウチの酔っぱらいが……。改めて、タクマ・バーンズな。父ちゃんの母ちゃんだったのは驚いたけど、今日からよろしく頼むっしょ」


 と、シイナとタクマ。

 総勢8名、ソファに座るライミを囲んで興味深げにキャッキャしている。


「あ、ぁ、あ、あ~。えっと、あの~、え~っとね~! あ~~~~!?」


 ライミはこんな感じ。

 逃げ場がなくてタジタジになっておりますことよ。ちなみに隣にはサラがいる。


「随分と人気者ね、来魅。よかったじゃない」

「自分のトコに被害が来てないからって、ひどくない!? 幼馴染なら助けてよ!」


「ん~、金額次第かな~?」

「守銭奴! 銭ゲバ! お金持ち! コガネムシ! マネーマネーマネー!」

「最後の辺り、文句にもなってないわよ」


 あの二人、幼稚園と小学校が一緒だったとのこと。


「で、おまえはサラ・マリオンのことは知ってたの?」


 囲まれるライミを外から眺めつつ、俺はすぐ近くに座っているエンジュに尋ねる。


「え? ううん、知らなかった」


 エンジュは首を横に振った。


「私は来魅とは中学からの付き合いだから」

「幼稚園と小学校がサラと一緒で、中学・高校がエンジュと一緒か」


 何とも綺麗に分かれたモンですな。そりゃ。


「圧が、圧が強いよォ~~~~! 助けてよ、紗良ァ~~~~!」

「幾ら払う? 一人につき1000円のところを幼馴染割引で1100円からね」

「それは幼馴染割増だよォ~!?」


 と、ライミとサラが輪の中心で騒いでおられる。


「…………」


 それを外から眺めているエンジュは、頬杖を突いてムス~ッとしている。


「どうしたの、エンジュ。随分ご機嫌ナナメじゃない?」

「……別に」


 ミフユに突っつかれてそう答えはするが、声はつっけんどんだし、顔も変わらず。

 俺とミフユは、孫娘が見せるこの反応にニマニマしてしまう。


「「『親友は自分の方なのになぁ~。何か、面白くない』」」

「…………ッ!」


 俺達が声を揃えると、エンジュはキッとこっちを睨んで椅子から立ち上がった。


「もぉ、おじいちゃん、おばあちゃん!」

「見え見えなのよ、エンジュ~!」

「アキラとミフユは戦域より離脱しまぁ~す!」


 俺とミフユは、ケラケラ笑ってエンジュから逃げ出した。

 うんうん、わかるわかる。

 自分の親友が他の女とイチャイチャしてたら、そりゃ面白くないよね! 笑うわ!


「ぁ、ぁ、あの……、ライミさん、困ってるから、そろそろ……」


 一方、ライミの方。

 囲いの外に立つマリクが皆を諫めようとする。


「なーなーなーなー! ライミってどこのがっこーなんだ? 教えてくれよ~~!」

「ライミ君はパパちゃんのどういうところが可愛いと思うかな? 聞きたいね!」


 しかし、マリクの声が小声すぎて、全然届いちゃいねぇ!


「ね、ねぇ、みんな? そ、その、ちょっと騒ぎすぎ……」


 だがめげずに、マリクは再度、タマキ達を止めようと試みる。


「ライミ殿はパレカは嗜むかえ? 是非とも聞きたいところじゃのう! いかに?」

「ライミさ~ん、ライミさ~ん! お酒おいちぃ! ライミさ~ん! エヘヘヘ!」


 やはり誰一人として止まろうとしない。つか、そもそもマリクに気づいてない。


「だから、その、あの、そろそろ一旦落ち着いて……」


 マリクは折れなかった。

 みたび、ライミを助けるべき、囲いを作る八人の方に必死に声をかけ続ける。


「いやぁ~、団長のお母さんってのは知りませんでしたよ。本当に驚きましたわ!」

「すいません、中学の頃のエンジュの話を聞きたいんですが、構いませんかね?」


 いつもはストッパー役のケントとタイジュまで一緒になって騒いでいる。

 これはいけません。

 本当に誰一人として、外側のマリクに気づいてない。


「…………」


 そしてマリク、無言と化す!

 さぁ、空気の温度が徐々に上がり始めたぞ!


「あらあらあらあら……」


 マリクの隣に立つヒメノが、穏やかに微笑みながら口に手を当てる。


「ここも間もなくブチギレに焼き尽くされる。離れよう、ミフユ」

「そうね。エンジュも来なさい」

「お父さん、お母さん、死なないでね……」


 ラララとタイジュを案じつつ、助けようとしないエンジュがさすがである。

 そして――、


「てめェら! いい加減にしやがれェェェェェェェェェェェェェェ――――ッッ!」

「「「わひゃああああああああああああああああああああああッ!?」」」


 ブチギレマリクが、炸裂した。



  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 輪を作ってたヤツ、ヒメノさんの前で全員正座。


「お気持ちはわかりますよ。お父様の実母となれば興味も出てくるというものですわ。それは当然ですわ。けれどライミおばあ様は今日が初めてなのですよ? 寄ってたかって話しかけては、ライミおばあ様が疲れてしまいますよ? わかりますか?」

「「「はい……」」」


 八人が整列して正座して叱られている姿は、なかなかに見ごたえがある。


「あの、ヒ、ヒメノちゃんだっけ? そ、そのくらいでいいよぉ~、もぉ~……」


 ライミが汗ダラダラでヒメノを止めようとする。

 しかし、ウチの次女は柔らかく微笑んで、だがきっぱりとかぶりを振った。


「いけません、おばあ様。言葉は揮発するものです。お説教は、その身に刻まねば効果を持ち得ません。ですから皆様には、1時間ほどこのまま正座していただきます」

「ひぇ……ッ」


 優しげに言うヒメノの容赦のないお仕置きに、ライミが軽く顔を青くする。


「ちなみに回復魔法の使用はなしだよ? 使ってもぼくがわかるからね? もしも誰か一人でも使ったら、連帯責任で全員に『これ』だからね? いいね?」


 言って、マリクが収納空間から取り出したのは紙コップ。あ、あれはもしや……!


「……『飲む全快全癒』」


 酔いで赤くなっていたシイナの顔色が、一瞬で真っ白になった。


「そうだよ、シイナ。もちろん、君に試してもらった改良版だよ?」

「……すいませんすいません。ごめんなさいごめんなさい。もうしませんから許してください。お願いしますお願いします。ごめんなさい、本当にすいません」


 シ、シイナの顔色が白から茶色になったり黄土色になったりしてる!

 一体『試してもらった』とは何だ? 俺の知らない何かがあったというのか……?


「おやおや、こりゃ一体何事だい?」

「むぅ、何やらただならぬ空気が漂っておりますな……」


 そこへ、お袋とシンラが買い物袋を引っ提げて登場した。

 まだ来てなかったのか、この二人。そういえば、ここまで見てなかったな。


「あ、み~~~~た~~~~ん!」

「みーたんはやめとくれよ、ライミったら……」


 お袋を見るなり、ライミはドンビキしてたのも忘れて駆け寄っていく。

 それを、俺のすぐ隣にいるエンジュはジッと凝視している。


「美沙子さんって――」


 そして、エンジュの方から俺に話しかけてきた。


「異世界での、来魅の幼馴染で親友、なんだっけ……?」

「同じ孤児院出身だって話だから、幼馴染どころか姉妹同然なんじゃねーかな」

「姉妹……」


 エンジュが天井を仰ぎ見る。


「異世界ってことは、戦友でもあって、同じおじいちゃんのお母さんで、かぁ……」

「何だよ、どうした」

「ん~、さすがに、美沙子さんにはちょっと勝てる気がしないな、って……」


 顔を戻して、エンジュは少し寂しそうに笑う。

 その背中をミフユがおもむろに叩いた。


「なぁ~に言ってんのよ、あんたは! 勝ち負けの問題じゃないでしょ~!」

「痛ッ、おばあちゃん……! そ、そうだけど……」


「ライミとお義母様、ライミとサラ、ライミとあんた。みんなそれぞれ特別な関係なのよ。そこに優劣つけてどーすんの。自分から『負けてます』って認める気?」

「そんなこと……!」


「じゃあ、いいじゃない。あんたは美宙井来魅の親友の桜井縁珠。そうでしょ?」

「……うん。そうだね」


 やや曇りかけていたエンジュの顔に、明るいものが戻る。

 そこで、俺も言ってやった。


「あと、ライミ・バーンズのひ孫のエンジュ・レフィードな」

「それは考えないようにしてたのに!?」


 エンジュが叫ぶが、そうだと思ったから言ったに決まってるだろォ~~~~!


「ちなみにな、エンジュ」

「何よ……!」


「お袋とライミが仲良くしてるところを見ると、俺も殺意湧く」

「え……」


 努めて明るい声で言ったが、ダメだぁ~、慣れねぇ~、腹の底がムカムカするぅ~! オイオイ、金鐘崎君よォ、頼むぜ。ガキの癇癪はやめときなってぇ~!


「ま、こいつもわたしも、所詮は七歳児ってことよ」

「ああ、なるほど。この『匂い』はそういうことかぁ……」


 エンジュが『超嗅覚』で俺の内心にある『僕』の気持ちを嗅ぎ取ったらしい。

 しかし、俺の中の『僕』が持つ反発が結構根深い。

 まだまだ自制は利く範囲だが、これを改めるのは時間かかりそうだわ。


「あなたが、ライミ・バーンズ殿であらせられますか。余はシンラ・バーンズと申します。あなたが一子にして敬愛する父、アキラ・バーンズが長男にして、現在、こちらの美沙子さんと交際をさせていただいております者にて、どうかお見知りおきを」

「は、はい……」


 さて、ライミとシンラのファーストコンタクトだが、ライミがたじろいでいる。

 令和の時代に『余』とか言っちゃうようなヤツだから仕方がない。


「あ、あの、みーたん? そのね、決して疑うわけじゃないよ? みーたんの趣味を決して疑ってるワケじゃないんだけどね? あのね、そのね、この人、大丈夫?」


 遠回しに見えて率直! ものすごく単刀直入! 槍で心臓を突くが如し!


「何だい、シンラさんに何か問題あるのかい?」

「みーたん。父親の育ての母と婚約する男の人は世間じゃまとも扱いされないよ?」


 そして繰り出される、ライミの圧倒的正論ッッ!

 さぁ、どう答える。お袋よ、シンラよ、これにどう答えるのだね、君達は!


「だろうねぇ」

「然様でありましょうな」

「あ、素直に認めちゃうんだ……」


 そう、この二人はそれを認める。反論も反発もせず、普通に認めちゃうんだなー。


「されどライミ殿、こういったものは『惚れたが最後』ではありませぬか」

「そうだねぇ、アタシもシンラさんも、お互い同意の上でこういう関係になったからね。それについて常識がどうだとか言われてもね。知らないよ、で終わりさ」

「むぅ……」


 二人に言われながらも、ライミはまだ納得しかねる様子でシンラを見上げる。


「アキラちゃんの息子だから、あたしも大丈夫だと思いたいけど、もしもみーたん泣かせたら許さないからね? 絶対絶対、許さないかんね!」

「肝に銘じましょうぞ」


 シンラが深くうなずく。

 ひとまず、認められたってことでよさそうかね、ありゃ。


「これで全員揃ったかしら?」


 ミフユが部屋の中を見回して、その場にいる全員を確認しようとする。


「いや、かぶり物系のバカ×2が見当たらな――」


 言いかけた俺の裾を、後ろから誰からクイクイ引っ張ってくる。


「あん?」

「お父さん、あれ、あれ」


 ヒナタだった。

 何やら壁の方を指さしているが、何だというのか。指の先を見てみる。


「…………うっわ」


 思わず、声が出た。

 そこには壁があった。豪華な壁紙が張られた壁があり、フロアライトがある。


 一見、俺にはそう映った。

 そう映ったのだが、よくよく見るとそこにバカ×2が立っていた。


 被り物はしていない。

 そして、服も着ていない。二人そろって。二人そろって!

 ボディペイントで背景にまぎれてやがったァァァァァァァァァ――――ッッ!?


『……何、してんの?』


 おそるおそる、俺は魔力念話で壁になってる六男に話しかけた。


『おっと、見つかっちまったか。クックックック、さすがだな、ダディ! 壁として生まれ、壁として死ぬさだめを負った壁となった俺を見抜くなんてな!』


 ヤジロは、見た目微動だにせず、だが念話ではいつものノリで喋りやがる。


『何してんのってきいてんだが?』

『無論、叛逆よ! 大宴会に参加するという常識に対する叛逆。そして何より、背景と化した客=モブという常識に対する、この孤高のアウトローたる俺からのアンサー! モブはモブ、背景じゃねぇ。背景とは、つまり、背景ゆえに背景なのさ!』

『お、おう……』


 当たり前のことをあまりに特別みたいに力説するから、ちょっと気圧されたわ。

 ちなみに軽くヒナタの方を見ると、ゆっくり首を横に振る。


 あ、これアレだ。

 この場のほとんどの面子が気づいてるけど、あえて目に入れてないヤツ。


『とりあえず服は着ろ?』

『安心しな、ダディ。孤高のアウトローたる俺に抜かりはねぇさ。全身タイツは装着済みだぜ? 俺はアウトローでありながら紳士だからな。TPOは弁えてるさ』

『TPOって言葉ほどおまえと縁遠いものはねぇよ!』


 かくして参加者全員が場に集まりましたとさ。

 これから乾杯して、いよいよ開幕なワケだけど、大丈夫かなぁ、これ……。


 ――不安しかなかった。

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