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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
第十六章 バビロニャの名は祝福と共に

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第415話 バビロニャ・ストーキング!/起

 バビロニャ追撃部隊、集ゥゥゥゥゥ合ォォォォォ!


「追撃部隊各員、番号ォ!」


 俺の号令によって、アパート前に集まった隊員五名が点呼を開始する!


「1ッ!」

「2ッ!」

「3」

「フヘヘヘヘヘ、俺ちゃんが4ってかい?」

「ククッ、ここで5というのは簡単だ。だがその簡単さに叛逆だ! Cinco!」


 1、俺。

 2、ミフユ。

 3がタイジュで4がオッサン。5がヤジロなのだが――、


「オイ、ヤジロ。何だよ、しんこって?」

「おっと、ダディ。しんこじゃねぇぜ、Cinco、発音はスィンコ、だ!」


 随分とイイ発音をするヤジロは、本日は和服ではなく洋服を着ている。

 というか、何か全体的にウェスタンな雰囲気のカウガール姿。

 この冬空の下、遠慮なしにへそと太ももを出してる辺り、季節感が大壊滅。


 頭にはいつものカウボーイハットをかぶって、腰にはわざわざ革製のホルスター。

 非常にホンモノっぽいモデルガンのリボルバーを腰の両側に差している。


 ちなみに今日はトモエはいない。

 謎の獅子舞男として雑誌のインタビューを受けに行ってる。何してんの、笑うわ。


「はいはい、しんこしんこ。で、しんこっては何なの?」

「Cinco! スペイン語で、5ッッ!」

「そこは別に日本語でいいだろうがよォ~!?」


 ビシッとポーズをキメるヤジロに、めんどくさくなった俺が叫ぶ。

 すると、それを見てたオッサンがケラケラ笑ってペットボトルをラッパ飲みする。


「やっぱバーンズ家は面白ェなぁ~、タイジュよぉ~」

「一応、俺もその中の一員ではあるんですけどね」


 無表情のタイジュに言ってまた笑うのは、何と、タイジュの伯父である。

 見た目アラフィフくらいの白髪混じりのやせたオッサンで、ヘラヘラしている。


「うるせぇんだよ、クラマ! 何でおまえがタイジュのおじさんやってんだよ!」

「って言われましても、俺ちゃんもわかんねぇ~っすわ~。エヘヘヘ」


 スダレとは別の意味で軟体生物っぽいこいつは、佐藤鞍間(さとう くらま)

 異世界での名をクラマ・アヴォルト。

 俺の傭兵団に所属していた傭兵の一人で、こんなんでも異世界では聖職者だった。


 異世界じゃ、ガルさんと共にマリクの師匠格でもあった男だ。

 わかりやすく言うと、ディ・ティが宿るランタンの先代の持ち主である。


「合縁奇縁とはよく言ったモンですよねぇ~、ダンチョ」


 どう見ても酔っぱらいだが、手にしてるペットボトルの中身は紅茶だ。

 こいつ、この見た目と口調で一滴も酒飲めねぇのは詐欺だよなぁ。


「俺ちゃんのコトはいいんですよぉ~、それより、オカミちゃんのことでしょ~?」

「そうよ、クラマの言う通りよ!」


 バビロニャ追撃部隊の隊長であるミフユが、クラマに促されて拳を握り締める。


「本日午後からママと夢莉叔母様が駅前で待ち合わせて会う予定になっているわ!」

「何でそれを知ってるんだよ……?」

「そんなの、スダレに頼んだに決まってるでしょ!」


 ミフユに手段を選ぶ気がないのはよくわかった。だが、その上で確認が必要だ。


「あのさ、ミフユさ」

「何よ、もうすぐ出なくちゃいけないのよ! 手短にお願いするわ!」


 だいぶ焦ってますねぇ、こりゃあ。前のめりなのが呼吸の激しさからも伝わる。

 だが俺は、あえて落ち着いた様子でミフユに問いかける。


「これからバビロニャ追撃部隊の行動開始なワケじゃん?」

「そうよ、夢莉叔母様をバビロニャ・チェックしてやるのよ!」


「具体的には?」

「え?」


 固まるミフユ。


「だから、バビロニャ・チェックなるものは、具体的にはどんなチェックで?」

「え、だからそれは、バビロニャのバビロニャによるバビロニャのためのバビロニャ・チェックよ! どう、これ以上ないほど具体的でしょ!」


「クックック、これ以上ないほど『具体的』という言葉に対する叛逆だぜ、マミィ」

「な、そ、そんなバカな……!?」


 ヤジロに『叛逆』認定されたということはこれ以上なく抽象的ってことだなぁ。


「やっぱり焦りが先行して具体的な考えなしに動いてたか……」

「何よぉ! いいでしょ! とにかくリリスママを追うのよ、追いかけるのよ~!」


 ミフユさん、両腕ブンブン振ってワガママ全開モード。

 それを見ているタイジュの頬を、一筋の汗が伝っていくの、ホント笑うわ。


「こんな女将さん、初めて見ましたよ……」

「リリス義母さんが関わると大体いつもこんな感じだぞ、ミフユは」

「まぁ~ったく、仕方がないんだから、オカミちゃんはぁ~」


 紅茶を煽り飲みしながら、クラマがヒョコヒョコとミフユに寄っていく。


「ほらほら、オカミちゃんよ、落ち着きなさいってぇ~」

「むぅ~!」


「いいかいオカミちゃん、まずはどうして自分がそんなに焦ってるのか、自分を省みて考えてみようかぁ? 何でかなぁ~、どうしてかなぁ~?」

「それは……」

「それはぁ~?」


 クラマに問い返されると、ミフユは身を縮こまらせて、深く俯く。


「……ママを、とられるかもしれない、から」


 ひどい小声での一言。

 だが、それこそまごうことなき、ミフユの本心であった。


「OKOK、それがわかったなら次は何だろうね~? ――そうだね、オカミちゃんがどうしたいかだねぇ~。どうしたいのかなぁ~? どうするのがいいかなぁ~?」

「…………ママをとられたくない。イヤ」


「そうだねぇ~、イヤだねぇ~。でも、力づくでそれを阻むとぉ~?」

「ママに、嫌われるかもしれない。それもイヤ……」

「だよねぇ~? じゃあ、どうすればいいのかな~?」


 言葉巧みというワケではないものの、クラマはミフユをどんどん導いていく。


「ママに、わたしの気持ちをちゃんと伝える。イヤなことはイヤって」

「そうだねぇ、それが一番いい方法だねぇ~」


「でも、それはそれとして二人のことは気になるから追いかけるわッ!」

「それも面白そうだから、是非ともやろうねぇ~」


 エヘヘと笑うクラマにミフユもうなずき「追いかけるわ!」と、改めて決意表明。

 さっきと違い、焦りがほぐれて目的が明確になっている。


「悪いな、クラマ。手間かけた」

「なぁ~に、この程度はお安い御用よ、ダンチョ」


 異世界でも、クラマはこんな感じに相談役みたいなポジションにいた。

 こんなナリと物言いだが、それで頼りになるのがクラマという男なのであった。


「エンジュのことも、伯父さんはあんな感じでほぐしてくれましたよ」


 タイジュが、俺にそんなことを言ってくる。


「こういうところじゃ頼れるよな、あいつ」

「はい、そうなんですよね、親父さん」


「ところで、そのエンジュとラララは……?」

「福袋を買いに行くとかで、天月の方に行ってますよ」


 ああ、ショッピングね。それじゃあタイジュの出る幕はないわな。

 あの二人だったら、荷物持ちとかいらないだろうしな。


「それにしても――」


 タイジュが見るのは、茶色い髪のカウガール。


「おまえは随分見た目が変わったな、ヤジロ」

「そう見えるかい、ブラザー・タイジュ。だがガワがどうなろうと俺は俺さ。それだけはこの世界がどうなろうと揺らぐことのない、この世界の真実と書いて、真実!」


 そりゃ、真実と書けば真実だよ。まんま日本語なんだから。


「……これは、ヤジロですね」

「だよなー。まごうことなきヤジロだよな」


 なまじっか『出戻り』前の那岐和十萌を知ってるから、まだ少し違和感あるけど。


「だがこの世界に戻って、俺もとんだカルチャーショックを受けたぜ、ダディ」

「ほぉ? と、言うと?」


 こいつがカルチャーショックとは、一体何があったんだ?


「……異形頭、実に叛逆的な文化だぜ」

「おまえが今後積極的にかぶり物していく未来だけは確信したわ」


 何がカルチャーショックだ! カミさんに影響受けただけじゃねーかッ!


「ちょっと、そろそろ行くわよ~!」


 と、話していたところにミフユが大声で言ってくる。

 とりあえず追撃部隊は結成後即解散にはならなさそうだ。じゃあ、行動開始――、


「待ってください」


 だが、動き出そうとする俺達を、タイジュが止める。


「……どうしたのよ、タイジュ」

「…………」


 ミフユに尋ねられても、タイジュは無反応。

 身を低くして視線を巡らせるその様子から伝わるのは、ちょっとした緊迫感。


「そこだ」


 タイジュが、拾い上げた小石を近くの誰もいない場所に投げつける。

 すると、その小石を受け止める大きな手が――、あらま。


「…………」


 誰もいないと思われたそこに、いた。寡黙な巨漢、高市堅悟であった。

 そうか、タイジュの『超嗅覚』が気配を消してたケンゴに気づいたのか。


「あんた、ケンゴ・ガイアルド!?」

「…………」


 驚くミフユにケンゴが返すのはやっぱり無言。タイジュ以上に無表情だ、こいつ。

 しかし、どうしてこのタイミングでこいつがここに?


「ケンゴ・ガイアルド、何であんたが? もしかして、わたし達の邪魔をしに――」

「ミフユ・バビロニャ……」


 ケンゴが、そのゴツイ顔をミフユに向けて告げてくる。


「俺も、共に行かせてもらう」

「「…………え?」」


 俺とミフユは、同時に声を漏らしてしまった。

 バビロニャ追撃部隊No.6、ケンゴ・ガイアルド。……え、ホントに?

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