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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
第十三章・後日談 愉快! 痛快! 仕返し会!

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第346話 くたばれ、サイディ・ブラウン!:前

 いつもの部屋に入ると、大歓迎されました。


「お、団長に女将さんじゃないっすか~!」

「わぁ、おとしゃん、おかしゃん~!」


 ケントにタマキに――、


「父上、母上、お待ちしておりました」

「お父さんとお母さん、おそ~い」


 シンラにヒナタに――、


「あ、き、来たよ、ヒメノ……」

「はい、やっとそろいましたね。お兄ちゃん」


 マリクにヒメノに――、


「おパパとおママだ~、大遅刻~」

「遅刻っていうのかな……?」


 スダレにジュンに――、


「父ちゃんと母ちゃんで、これでようやく全員そろったな」

「ですね~。何か二日ぶりとは思えません」


 タクマにシイナに――、


「やぁやぁ、ママちゃんにパパちゃん! おかえりー!」

「お疲れ様です」

「わ、おじいちゃんにおばあちゃんなの? あれが? 可愛ぃ~!」


 ラララにタイジュ――、

 そしてエンジュ――、


「やっと帰ってきたのかい。遅かったねぇ」

「ミフユちゃん、待っていましたよ」


 そしてお袋とリリス義母さんと――、


「お二人をお連れしたであります!」

「これで、全員そろいましたな」


 キリオとマリエと――、


「全員いると何かすごいねぇ! 笑うわ!」

「ちょっとした大会議よね~、笑えないわねぇ」


 俺とミフユで、全員集合でございます。バーンズ家! いや~、壮観だね!


「で、アンタは一体、今の今までどこに行ってたんだい?」

「ミフユちゃんも、本当に心配したんですよ?」


 はい、いきなり来ました、お袋とリリス義母さんからの確認です。

 しかし慌てることはないぜ。すでにキリオとの間で口裏合わせは済んでいる!


「実はですね、美沙子殿、父上殿は――」


 ここで、まずはキリオが説明をしてくれようとする。

 うむ、俺もミフユも二人にいらん心配をかけるつもりはない。まずは――、


「ああ、いいさね別に、キリオ君」

「へ?」


 おや?


「カディルグナ様のとこで二人して何か罰でも受けてたんだろ? わかってるさ」

「ミフユちゃんもアキラさんも、そういうところは責任感強いですからね」


 あっれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!?


「ちょっと? ちょっと、キリオさん?」

「ちょ、違ッ、それがし知らんであります! 何も言ってねーであります!」


 俺が驚いてキリオを見るが、こいつは俺と同じような表情でかぶりを振る。

 え、キリオじゃない? と、すると……?


「マリエさん、じゃないわねぇ……。じゃあ、一体誰が?」


 ミフユもわかっていないようで、腕を組んでうんうん唸っているが、


「……親父か」


 何となくだが、俺はわかってしまった。


「え、お義父様?」

「多分、お袋に電話で連絡したんじゃねぇか? 自分とこに俺とミフユが来たこと」

「ま、そういうことさね。集さんから連絡があって、すぐわかったよ」


「親父から連絡があって、帰ってこない俺達。その時点で気づいたな、お袋」

「リリスママも?」


 お袋もリリス義母さんも互いにニッコリ笑うだけだったが、答えとしては十分だ。


「アンタ達のことさ、自分で自分にケジメをつけないワケがないってわかってたよ。何をしてたかは知らないけどね、下手に気ィ遣うモンじゃないよ、アキラ」

「へいへい。おそれいりました」


「ミフユちゃんもですよ。心配はしていましたけど、私はミフユちゃんのことを信じてもいます。あなたの判断であるなら、私は異論は挟みませんからね」

「う、はい、リリスママ。隠そうとしてごめんなさい」

「よろしい」


 着流し姿の好青年なリリス義母さんが、ミフユの頭を撫でている。

 それを見ている俺に、お袋がニヤリと笑って言う。


「……撫でるかい?」

「あ、あとででいいです」


 ここで「いらんわ!」と突っぱねるには、あと二、三年は必要だろうか……。


「今は先にやることあるだろ」

「そうだねぇ」

「まずは、サイディからやろっか!」


 俺がその名を出すと、ラララとタイジュがエンジュを見る。


「今はエンジュが保管してんだっけ、死体」

「うん、そうだよ、おじいちゃん」


 高校生っぽい女子におじいちゃん呼ばわりされる小学二年生がいるらしい。

 まぁ、いいか。今さらすぎる話ではあるか。


 エンジュが収納空間から取り出したサイディの肢体は、ボロボロだった。

 よほど念入りに苦しませて殺したのだろう。

 肉も骨も筋もズタズタな状態で、陸に打ち上げられたイカみたいになっとる。


「さて、こいつに恨みがあるのは――」


 手を挙げるラララ、タイジュ、エンジュ。


「だよね~」

「ま、当然の話よね……」


 うなずく俺に、ミフユも同調する。

 よりによってラララの立場を乗っ取るとか、虎の尾を踏む行為だよ、それは。


「でも――」


 と、そこでエンジュが何かを言い出す。


「お母さんと私は、このブスのことはもう殺したけど、お父さんがまだだわ」


 言いつつ、サイディの死体を踏みつけてグリグリグリグリ。

 まさに恨み骨髄。しかし、そこでタイジュに譲ろうというのは親想いである。


「やるか、タイジュ?」

「もちろんです。それと親父さん、ガルさんをお借りしていいですか?」

「ん? ガルさんをか?」


 ガルさんはすでにキリオから返してもらっている。貸すことは可能だが……。


「ちょっと、試したいことがありまして」

「ふ~ん? ガルさん?」

『フン、俺様は構わんぞ! タイジュに使われるのも悪くはない!』


 取り出したガルさんの同意も得られたので、俺はタイジュに放り渡す。

 それを見届けて、エンジュがサイディを蘇生させた。


「ぃよぉ~、サイディ。ちょっとぶりだなぁ~?」

「グ、ア、アキラ……!?」


 目覚めたサイディは俺を見て、それから周りを見る。

 そこに揃っているバーンズ家の面々を見て、その顔は一気に色を失った。


「そう、これからおまえへの仕返しが決行される」

「マ、待ってクレ、ワタシハ――」

「言い訳をしたけりゃ、そいつにすればいいんじゃねぇか?」


 俺がその場をどくを、代わるようにしてタイジュがサイディの前に出る。


「タ、タイジュ……」

「決着つけましょうか、サイディさん」


「ァ、ア……?」

「抜けって言ってるんですよ。俺とやりたいんでしょ、あんた。付き合ってやりますけどできますか? ラララに負けて骨を抜かれましたか? じゃあ、ザコですね」

「グッ、テメェ……!」


 無表情のタイジュに言いたい放題言われて、さすがにサイディも気色ばむ。

 その手に異面体『牙煉屠(ガレント)』を展開し、勢いよく立ち上がった。


「やってやろうジャネェカ、タイジュウゥ!」

「聞こえてますよ、やかましい」


 二人のやり取りを耳にしながら、俺はスダレに目配せをする。


「はいはぁ~い、毎度ご利用ありがとうございまぁ~すぅ」


 そして世界は、全てが真っ白な『スダレの御部屋』に切り替わった。


「ヒヒ、ヒヒヒ……! タイジュ、やっとテメェとヤれるナァ、タイジュヨォ……」


 ガレントを両手で強く握りしめて、サイディが卑しく笑っている。

 灰色狼を思わせる獰猛さは、その笑いにはまるで見て取れない。

 ちょっと見ない間に、何つ~変わりようだ、こりゃ。


「ラララとエンジュにだいぶやられたみたいですね、サイディさん」

「うるセェ! あいつらは敵じゃねェンダ! テメェに勝ちさえスリャア……!」

「なるほど」


 タイジュは言うと、右手に『羽々斬(ハバキリ)』を出現させる。

 それを見て、何故かビクッと震えるサイディ。


「何だァ?」

「ラララに負けたのがよっぽど堪えているようでありますな」


 いぶかしむ俺の隣で、キリオがそんなことを言う。

 ふむ? そういえばサイディはラララにどんな感じに負けたんだ?


「ワ、ワタシはテメェの師匠で親代わりダゾ! そのワタシニ、テメェみてぇな半端な野郎が勝てると思ってンノカ、タイジュ! 夢見すぎてんじゃねェゾ!」

「言う割に、さっきからビクビクしっぱなしじゃないですか、サイディさん。心もプライドも折れてるんじゃないですか? 今は、それを取り戻すのに必死と?」

「うるセェェェェェェェェェェェェェェェェ――――ッ!」


 タイジュの軽い挑発に、サイディはあっさりと乗ってしまう。

 あらら、本気で余裕がないな。こりゃ、よっぽどな負け方したんだな、あいつ。

 だがタイジュは、そこで左手にガルさんを握る。


「ガルさん、俺のイメージ、伝わりますか?」

『ほぉ、なるほどな。そういうことか! いいだろう、従ってやろう!』


 ガルさんの形状が、剣鉈から一振りの黒い長剣に変わる。

 それを見て、突っ込んだはずのサイディがいきなり足を止めた。


「ソ、ソノ剣、ハ……!?」

「そうです、これはラララの『士烙草(シラクサ)』です。もう、わかりますよね?」


 タイジュが、右手に己のハバキリを握り、左手にラララのシラクサを握る。

 その構えは随分と堂に入って見える。長年、二刀流で戦ってきたかのような……。


「テメェ、テ、テメェ……ッ」


 サイディが強張った声で叫ぶ。何故か、全身がわなないている。あのサイディが?


「なるほど、なるほど」


 目の前で震えるサイディを無視して、タイジュは何度もうなずいた。


「やっぱりラララはすごいな。こんなこと、俺には思いつけないよ」


 言口元にほのかな笑みを浮かべ、タイジュは二刀を構えたまま、サイディを睨む。


「テメェ、タイジュ……、テメェも使えるノカ、ソレヲ!」

「ラララにできて俺にできない道理はありませんよ。俺とあいつは『連理の剣聖』。ああ、違いましたね。こうして構える今の《《俺達》》は――、『比翼剣聖(クラウ・ソラス)』だ」


 くらう・そらす?

 何か聞き慣れない単語が出てきたけど、一つわかることがある。

 どうやらその単語は、サイディにとって死刑宣告に等しいものであるようだった。


「ゥア、ァァァア、アァ、アアアアアアアアア……ッ!」


 突撃するどころか、激しい恐怖に怯え、サイディは悲鳴をあげて後ずさる。


「サイディ・ブラウン――」


 二刀を構えたままの状態で、タイジュが瞳を見開いた。


「俺の家族に手を出した対価として、あんたの『剣士生命』を含めた人生の全てをここで支払ってもらう。レフィードの家名は今のあんたには無用の長物だよ」


 静かながらも深き怒りを滾らせて、タイジュがサイディに終わりの訪れを告げた。

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