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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
第十一章 覚悟を捧ぐエンドレスラストバトル
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第245.5話 二本目/四日前/タマキ女子化計画、始動!

 はいどうも、何か久々に一般人占い師のシイナです。

 ここ最近は日夜、タクマさんと二馬力で貯蓄に励んでおります。いや~、充実!

 しかし一方で、


「もぉ、本当何なのよ、あいつゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~ッ!」


 お馴染みバーンズ家大宴会場と化しているホテルの部屋で、一人怒りをぶちまける子がいます。ついさっきまで『最終決闘』に臨んでいたラララちゃんです。


 いやぁ~、すごい戦いでしたね。すごいとしか言えません。

 はい、私は戦う人じゃないのでほとんどわからなくて、何が何やらでした。


 こう、剣を持った二人がビュンビュン動いてキンキンやってましたね。

 本当に、すごかった! 我ながら語彙力ッ、て思いますけど、すごかったですね!


 そして、勝ったのはラララちゃんでした。

 さすがはバーンズ家のバトルマニア五女ですね、見事な勝利でした。

 何がどうなって勝ったのかよくわかりませんでしたけど。


「もぉ、タイジュのバカ、タイジュのバァ~~~~カ、バカバカバカ、バカッ!」


 そう、勝ったのはラララちゃんなのに、何故かやさぐれています。

 タイジュ君とのやり取りは、何か、若かりし日の二人のやり取りって感じでした。


 しかし、ラララちゃんはそれが気に食わないご様子です。

 聞けばラララちゃんとタイジュさんはお隣さん同士で、しかも幼馴染とのこと。


 なななな、何ですか、その甘酸っぱいシチュエーションは!?

 しかも、二人ともケントさんと同学年とのこと。わ~、アオハル真っ盛りだぁ~!


 いいなぁ、いいなぁ、これからどんどん二人で思い出を重ねていくのでしょう。

 しかも中学生というところがポイントが高い。百点満点中九十点は固いです。


 何故ならこれから先に大イベント『受験』が待ち構えているからです。

 日本の中学生たるもの、ほぼ必ずブチ当たる壁。それが『受験』!


 同じ高校に進むのか、それとも違う高校に進むのか。

 ああ、もうその時点で究極の選択。遥かなるアオハルイベントですよ!


 そして『受験』が終われば今度は高校編開始ですよ!

 それまではまだかろうじて『友人』だった二人の関係性が、高校生になることで身も心もだんだん成熟し、いよいよただの『友人』ではいられなくなっていく。


 そこから発生する二人の関係性の変化! そして約束された濃密なるドラマ!

 い、一体、これから二人はどうなってしまうんです?

 もう、ドキドキが止まりません。期待と不安に満ちた二人の関係の結末は――!?


「…………フ」


 私としたことが、ちょっとした妄想で心が満たされてしまいました。

 これもラララちゃんとタイジュさんのおかげですね。

 しかし、幼馴染かぁ~、いいなぁ~。中学生かぁ~、いいなぁ~。


 私の中学の頃なんて……。頃なんて……。

 うっ! 胸に痛みが走ります! ず、頭痛もしてきます! 吐き気も!?


 いけません、私としたことが、自ら過去の傷を抉ってしまいました。

 これは薬が必要です。忌々しき過去を忘れるお薬。そう、おビール様ですッ!


「あ、シイナ。今日おまえ、アルコール禁止な」

「え、タクマさん?」


 嘘でしょ。嘘でしょ、タクマさん!?


「ここ最近、おまえちょっと晩酌で飲みすぎ」

「いや、でも、え、宴会……」

「だからだろうがよ。今日とか絶対ハメ外すだろ、おまえ。だから今日は禁止」


 そ、そんなァァァァァァァァァァァァァァァァ――――ッ!?


「いいじゃないですか、ヒメノ姉様いるんですから、ちょっとくらい!」

「ダメダメ、ダメだって。ヒメノ姉いるからってガバ飲みクセつけられたら困る」


 うわぁぁぁぁぁぁぁ、的確に見抜かれてるぅぅぅぅぅぅぅ――――ッ!


「むむむ……」

「むむむじゃねーわ」


 くふぅ……、何ということでしょう、まさかの禁酒法発布です。

 た、確かに最近ちょっと、お酒の量は増えていました。


 理由は簡単で、ソシャゲへの課金をやめたからです。

 貯蓄のためにしたことですが、それによるストレスも生じてしまったのです。


 だから少しだけ、ほんのちょっとだけ、お酒の量が増えました。

 それでも、これまでの毎月の課金額に比べれば、大した金額ではありません。

 ただ、お酒の量が増えたのは確かなので……。


「く、こうなったら飲んだくれますよ。烏龍茶片手に飲んだくれますからね、私!」

「平和だな。是非それで頼むわ」

「彼女が『飲んだくれる』って言ってるのに、どうして『頼むわ』なんですか!」


 と、私がそこでタクマさんに全力で抗議したときでした。


「……シイナの(アネ)ちゃん」


 すっかりやさぐれていたラララちゃんが、何故か私を呼んできます。

 振り返ると、おや、何やら瞳が輝いているような?


「何? 何かな? 今、タクマの兄クンに『彼女』って言った? 『彼女』って!」

「わわわわ! あわわわわわわッ!?」


 膝歩きなのに音もなく残像作りながらで私のところまで来ましたよ、この子!?

 迫りくるラララちゃんの迫力に負けて、私は素直に白状します。


「え~と、あれ、聞いてませんか? 私、今、タクマさんとお付き合いしてます」

「えェ~~~~! ウソォ~~~~!?」


 ラララちゃん、両手を口に当てて、ものすごく高い声で驚きました。

 そっかぁ、私達のこと、まだ聞いてなかったんですねー。


「え、何で? 何でそうなっちゃったのぉ? え、教えて、教えて! 知りたい!」

「ラララちゃんも何だかんだいいつつ女の子ですよね~……」


 さっきまでビュンビュンキンキンしてた子とは思えません。


「え~、その、実はですね……」


 期待のまなざしをブッ刺してくるラララちゃんに、私はいきさつを話します。

 異世界でのタクマさんとのこと。そしてこっちであったことも、大まかに。


「わぁ~、わぁぁ~~! すごぉ~~い! シイナお姉ちゃん、よかったねぇ~!」


 そしてこの反応ですよ、ラララちゃん……。

 ここでこう言えるこの子は、やっぱり『いい子』なんですよねー。

 普段は高笑い響かせて、剣振り回して殺伐街道まっしぐらなキャラしてるのに。


「え、でも本当に覚えてないの? その、異能態のこと。二人とも?」

「そこに触れちゃいますかぁ~……」


 まぁ、皆さんもそこを気にしてたし、仕方がない話ではあるんですけど……。


「タクマさんの異能態はカッコよかった。……気がします」

「シイナお姉ちゃんは?」


 そのラララちゃんの問いに、私は言葉を返さず、ただ、微笑みを浮かべました。

 オリエントな仏像にも匹敵する、アルカイックスマイルです。


「……そ、そっかぁ」


 ラララちゃんは、それ以上は何も聞いてきませんでした。

 ウフフ、本当に何なんでしょうね。

 この、自分の異能態の話になると感じる『忌々しさ』、一体何なんでしょうね!


「ちょっと、あんた達」


 ちょうど話題の区切りに入ったところで、母様が私達のところに来ました。


「はい、何ですか、母様」

「ちょっとこっち来て」


 何でしょうか。私とラララちゃんは互いに顔を見合わせて首をかしげます。

 しかし、母様はそれ以上は何も言うことなく、どこかに歩いていきます。


 見てみると、その先にいるのは、美沙子さんとヒメノ姉様です。

 そこに、母様とラララちゃん。……あ。わかりました。


「ラララちゃん、ちょっと行きましょう」

「あ、う、うん……」


 私は少し不安げなラララちゃんの手を握り、母様のところに向かいます。

 そして、到着するなり、開口一番に母様から、


「このミッションの達成の可否は、ラララにかかってるわ」

「え、何事ッ!?」


 これには、ラララちゃんもびっくりです。

 だけど、そうなんです。母様の言っていることは本当なんです。ええ。


 見てください、ここに集まったメンバーの顔を。

 美沙子さんもヒメノ姉様も、みんな、すごく真剣な顔をしています。

 その真剣な顔で、どこか望みを託すように、ラララちゃんを見ています。


「ラララ、あんた――」


 母様が、ラララちゃんに尋ねます。


「お化粧、ちゃんとしてる?」

「……は?」


 いきなりすぎて意味がわからなかったようで、ラララちゃん、ポカンです。


「だからお化粧――」

「し、してるけど、え、何々? いきなり何?」


 二度目の質問にラララちゃんはまだ理解が及ばず、ポカンのままです。

 しかし、母様はそれには返さず、視線を美沙子さんの方へ。


「聞きましたか、お義母様、してるそうです。ヒメノ、してるって!」

「ああ、これで一歩前進だねぇ、よかったよ」

「よかったです。さすがはラララちゃんですね~!」


 満足そうに言う美沙子さんと、ヒメノ姉様もほっと胸を撫で下ろしています。

 変わらずポカンなラララちゃんに、私が説明をしてあげました。


「実はですね、私達一同、今現在、とある極秘ミッションを進めているんです」

「ご、極秘ミッション……!?」


 極秘という響きに惹かれたのか、ラララちゃんの顔つきが引き締まります。


「それは一体、どんなミッションなの?」

「はい、それはですね――」


 ここで私は、ラララちゃんにミッション名を告げました。


「――ミッション名『タマキ姉様女子化計画』です」

「……タマキの姉ちゃん、女子化計画ッ!?」


 ラララちゃんは目を見開き、そして、タマキ姉様の方へと視線をやりました。

 私もそれに続いて、姉様の方へと目をやります。


「見てください、ラララちゃん。あの、ケントさんの隣でまるで男子の如くラフな座り方をしているタマキ姉様を。あの人、いっつもパーカーにスカートか、パーカーにジャージのズボンですよ。今日はズボンの方ですけど。そして毎度すっぴんです」

「うわぁ、う、うわぁ……」


 ラララちゃんの顔が一気に青ざめました。現状を理解してくれたようです。


「ケントさんがその辺りを気にしてないのは、きっと彼の好みがボーイッシュな感じの子だからだと推測されます。が、そうはいっても、今の姉様は、ないです」

「うん、そうだね。さすがに、あの野暮ったさはないね……」


 かぶりを振る私に、ラララちゃんはうなずいて同調してくれます。


「あの人、今、高校一年らしいですから、もっと色気づいてなくちゃいけないと思うんですよ。でも、その分のリソースも全部バトルに持ってかれてるんですよ……」

「う、う~~~~ん……」


 バトルについてはラララちゃんも似た感じですが、この子はオシャレさんなので。


「タマキがあんな脳筋になっちゃったのって、異世界で生涯未婚だった影響が強いと思うのよね~。でもほら、今はケントがいるじゃない? だったらそろそろ、ねぇ……?」


 母様もそう言います。それには私も同感です。

 せっかくケントさんとくっついたんです。姉様はもっと女子になるべきです!


「あのさ……」


 と、ここでラララちゃんが何かを言ってきます。


「言いたいことはわかったよ。タマキの姉ちゃんにオシャレとかを覚えさせて女子にするっていう計画だね。それは了解した。このラララもぜひ協力させてもらいたい」

「わぁ、やりましたよ、母様!」

「そうね、ラララが加わってくれれば、百人力だわ!」


 私と母様が互いの手をポンとタッチします。

 このミッションにおけるキーパーソンの一人が、ラララちゃんです。


 何故なら、先にも記しましたが、彼女はオシャレさんだからです。

 コスメとかも絶対いいモノを知っていますし、流行についても敏感なはずです。


 一方で、母様は7歳なのでまだそういう次元ではありません。

 美沙子さんは最近やっとその辺を気にし出したところで、知識が足りていません。


 ヒメノ姉様は中一で、お化粧はしたことはないそうです。く、若者め。

 そして私は、貯蓄優先でコスメはお値段を第一に考えて選んでいるので……。


「でもね、その上で、このラララは確認しておきたいんだけど……」


 と、ラララちゃんが一つ、問いかけてきました。


「ケントクンを抜きにして、単にママちゃん達が『オシャレしたタマキの姉ちゃん』を見てみたい割合は、どれくらいあるのかな? 念のため知っておきたいな」

「そうね――」


 母様がそこで軽く考えて、直後に、


「半分くらい+半分の半分くらい+半分の半分の半分くらい%、ってところね」

「それは87.5%っていうんだよ、ママちゃん……」


 つまり『見たいだけ』が約9割ってことですね! はい、私もです!


「ママちゃん、シイナの姉ちゃん……」

「あら、呆れ顔になってるけど、ラララ。あんたは見たくないの?」

「見たい!」


 気持ちいいくらいの即答でした。

 でもやっぱり、見たいですよねー。可愛いお洋服着てオシャレした、タマキ姉様。

 絶対、可愛くなると思うんですよねー、私も。


「うん、確かにそれは見てみたい。だからこのラララも是非とも協力させていただくよ、タマキの姉ちゃん女子化計画。――すごく、楽しみになってきたね!」


 かくして、ここにミッションは始動したのでした。

 フッフッフ、待っていてください、タマキ姉様。

 必ずや姉様のことを『ぐうの音も出ないレベルの女子』にしてやりますよ。


 フ~ッフッフッフッフッフ~~~~! ……ああ、お酒飲みたい。

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