第232話 タクマとシイナの隙あらば設定語りROOM/5
――宙色市内『異階』の一室。
シイナ:お昼ですよ~!
タクマ:やったぁ~、腹減ったぜぇ~!
シイナ:今日のお昼ご飯は、なななななな、何とォ~~~~!
タクマ:何とォ~~~~!?
シイナ:昨日の餃子の余りです。あと適当にサクッと副菜を二つほど。
タクマ:余り物かよぉ!?
シイナ:昨日調子に乗って餃子作りすぎた子は誰ですかァ!
タクマ:…………。(途端に大人しくなる)
シイナ:私、先に言っておきましたよね。作りすぎると明日のお昼になる、って。
タクマ:言ってたけどさぁ、言ってたけどさぁ~。
シイナ:覚えてるなら素直に召し上がりなさいまし! 私だって同じおかずです!
タクマ:へぇい……。
シイナ:素直でよろしい。
タクマ:ところで、あ~ん、する?
シイナ:昨日、いっぱいやったでしょぉ~~~~!?
タクマ:昨日OKだったなら今日もOKってことだよな!
シイナ:どうして大人しく食べられないんですかぁ~、もぉ~!
タクマ:いや、ダメなら諦めるって。
シイナ:誰もダメとは言ってないでしょぉ~~~~!
タクマ:何で逆ギレされた、俺?
シイナ:元々、そのために餃子一個一個も小さく作ってありますし……。
タクマ:あ、そういえば結構小さい! 今、気づいた!?
シイナ:フフン、私はそういうところは気を利かせる子なのです。
タクマ:おまえもあ~んしたかったんじゃねぇか……。
シイナ:ギクゥ!?
タクマ:いやぁ~、通じ合ってるって感じるわ~。愛してるぜ、シイナ!
シイナ:う、うるさいんですよ! ほらほら、冷めないうちに食べましょう!
タクマ:へいへい。じゃあ、いただきますっと!
シイナ:いただきま~す。
ふたり:はい、あ~ん。(お互いに箸で掴んだ餃子を差し出す)
ふたり:…………。(お互いに真顔になる)
タクマ:シイナ、その餃子を下ろすんだ。まずはおまえがあ~んされるんだ。
シイナ:タクマさんこそ餃子を下ろしてください。まずはあ~んされてください。
タクマ:何で俺が下ろさなきゃいけねぇんだよ!
シイナ:それは私だって同じです! 何で私が下ろさなくちゃいけないんですか!
ふたり:最初にあ~んさせたいに決まってるから
タクマ:だよ!
シイナ:ですよ!
ふたり:…………。(真顔で睨み合う)
タクマ:よし、わかった。平和的に解決しよう。冷める。
シイナ:そうですね。ここは建設的に行きましょう。冷めてしまいます。
ふたり:じゃんけん、ぽん! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!
タクマ:やるじゃねぇか、シイナ。俺にここまでついてくるとはな!
シイナ:ナメてもらっては困りますよ、タクマさん。私、じゃんけん強いんです!
ふたり:あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!
タクマ:くっ、シイナ、いい加減、観念しろ! 餃子が冷めるって!
シイナ:それはタクマさんこそでしょう! 餃子が冷めちゃいますよ!
ふたり:あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!
タクマ:(まずい。このままでは本気で餃子が冷める。こうなったら――)
シイナ:(いけません。このままでは本当に冷めてしまいます。こうなれば――)
ふたり:(じゃんけんの最中に無理矢理あ~んさせる作戦しかない!)
ふたり:あいこでしょ! あいこでしょ! あいこで――、はい、あ~ん!
タクマ:あ~ん(反射的に口を開いてしまった)
シイナ:あ~ん(反射的に以下同文)
ふたり:パクッ(お互いに差し出された餃子を食べる)
ふたり:モグモグモグモグ。
ふたり:…………はぁ~(満足げなため息)
タクマ:俺達は一体、何を争っていたんだろうなぁ……。
シイナ:ですねぇ。やっぱり争いは何も生みだしませんね~……。
タクマ:昼飯、食うか。
シイナ:そうしましょう。
ふたり:はい、あ~ん。(お互いに箸で掴んだ餃子を差し出す)
ふたり:…………。(お互いに真顔になる)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
シイナ:人間は愚か……。どうも、シイナです。
タクマ:愚かなのは俺らだけな件。どうも、タクマだぜ~。
シイナ:この、食事のたびのあ~ん戦争が最近のウチの社会問題ですね。
タクマ:社会規模にまで拡大されるんか、あ~ん戦争……。
シイナ:いやいや、タクマさん。これは非常に由々しき事態ですよ。大問題です。
タクマ:ああ、そうだな。この問題は早く解決しないといけないな。何故なら、
ふたり:ご飯が、冷める……ッ!(顔色を悪くして真顔な二人)
シイナ:さすがにこれはいけません。せっかくのご飯が美味しくなくなります。
タクマ:やはり協議が必要だな。今後の我が家のあ~んに関する協議が。
シイナ:くっ、断腸の思い出はありますが、致し方ありませんね。
タクマ:で、今回はシンラ兄だっけ?
シイナ:急に話を本筋に戻しましたね……。はい、そうですね。シンラ兄様です。
タクマ:つい最近の第十章でメイン張ってたよなー。
シイナ:風見慎良がしぶとかったヤツですね~。
タクマ:そうそう。それでちょっと思ったんだけどよ~。
シイナ:はい、何です?
タクマ:シンラ兄の異能態って、アレ強いんか? 命を吹き込むってヤツ。
シイナ:あ~、アレですか。アレはですね~。
タクマ:おう。
シイナ:作者サン曰く『全異能態中、ぶっちぎりで使いにくい能力』だそうです。
タクマ:強いでも弱いでもなく、使いにくい……。
シイナ:戦う用の能力じゃないですからねぇ、アレ。戦闘じゃ出番はないですね。
タクマ:まぁ、そうか……。そうだなぁ……。
シイナ:しかも、無機物に命と心を与えて独立させるってことはですね――、
タクマ:おう。
シイナ:生み出した命に対して責任が生じるってことなんですよね~。
タクマ:お、重い……!
シイナ:はい。なので、みだりに使えない能力というか、使いにくいワケです。
タクマ:壊すんじゃなくて生み出す能力は、嫌いじゃないけどな、俺は。
シイナ:私も嫌いじゃないですけど、やっぱり命を扱うって重大な話なので……。
タクマ:だよなぁ……。で、そんなシンラ兄の異面体だが――、
シイナ:名前は『閻鬼堵』。スペックは以下の通りです。
攻撃力:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
防御力:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
速度 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
技巧 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
射程 :★★★★★★★★★★(10)
能力 :★★★★★★★★★★(10)
タクマ:この、タマキ姉にも通じる極端さ……ッ!
シイナ:バーンズ家の能力面最強ですからね、兄さまのエンキドウは。
タクマ:『影獄奈落』だっけ、能力。
シイナ:そうですね。対象を『罪の泥』の沼に沈めて永久に溺れさせる能力です。
タクマ:自動発動・絶対必中って、これもこれでチートだよなー。
シイナ:エンキドウが発現した段階で、自領域の『裁きの庭』が展開しますから。
タクマ:その時点で、マガツラ以外は『罪の泥』に呑まれて負け確だよな~。
シイナ:だから、戦闘能力皆無でも関係ないんですよね。
タクマ:でも、無敵ってワケじゃないのか?
シイナ:エンキドウ発現後、『裁きの庭』が展開するまで一瞬ラグがあります。
タクマ:それを突けと……。
シイナ:タマキ姉様やケントさんみたいな超高速ならイケるんじゃないですかね?
タクマ:それ以外だと?
シイナ:キリオ君の『無敵化』なら『罪の泥』も通じないかもしれませんね。
タクマ:それかぁ。まぁ、通じたら『無敵化』じゃないじゃん、ってなるしな。
シイナ:でも、対抗手段はそう多くはないですね。やっぱり。
タクマ:伊達に『最強』ではないってことだよなぁ。
シイナ:兄様本人からすると『脆弱ですいません』らしいですけど。
タクマ:シンラ兄の異面体でそれなら俺らどうなるんだよって話ではある。
シイナ:お手伝い妖精さんとちょっと未来見るだけですからね、私達……。
タクマ:異能態ならよー! 俺だってよー! ……あ、ごめんな。シイナ。
シイナ:何で今謝りました? ねぇ、何でです!?
タクマ:だっておまえ、異能態になっても面白くなるだけだし……。
シイナ:悪かったですねぇ! どうせ私の異能態はアンテナみょんみょんですよ!
タクマ:俺は好きだけどなー。でも、面白いよなー。
シイナ:面白い面白いと連呼しないでくださいよ、バカァ!
タクマ:ところでさ……、
シイナ:何ですか、あとでお菓子買ってもらいますからね!
タクマ:それでいいのか。安いな、おまえ……。じゃなくて、シンラ兄さ。
シイナ:はい?
タクマ:そう遠くないうちに父ちゃんの義理の父親になるだろ。あれ。
シイナ:あ~、美沙子さんとばっちりくっついちゃいましたからねぇ……。
タクマ:義理の息子が父親で、義理の父親が息子か……。
シイナ:ついでに言うと、父様から見ると義理の妹のヒナタちゃんが実の娘です。
タクマ:か、家庭事情が複雑すぎる……ッ!
シイナ:外から見るとそうですけど、本人達はそれも了承済みでしょう。
タクマ:そうだろうけどな。シンラ兄にとったら、父ちゃんは父ちゃんだろうし。
シイナ:当事者同士で納得してるなら、外野の意見なんて野暮なだけですよね。
タクマ:だなぁ。
シイナ:あ~、両親といえばですよ、タクマさ~ん。
タクマ:何だよ、急に重苦しい声出して……。
シイナ:あの、私達のこと、タクマさんの御両親にご報告――、
タクマ:パスでッ!(とても大声)
シイナ:あ、はい……。パスなんですね……。
タクマ:ウチはこっちの両親、パチンカスでサイマーのクソだからよー。
シイナ:うわぁ……。
タクマ:シイナなんか連れてったら金づるにしか思われねぇわ。
シイナ:あ~……、なるほど。
タクマ:つか、そっちはど~なんよ。山本家。
シイナ:う~~~~ん、まぁ、パスで。
タクマ:あれ、そっちもかよ。そりゃまた、何で?
シイナ:ウチは本当に普通の家族だったんですけど――、
タクマ:ああ。
シイナ:私が『出戻り』するきっかけになった病気のときに、ちょっと……。
タクマ:何があったんよ?
シイナ:かなり珍しい病気で、治療費がかなりお高くかかっちゃったんですよね。
タクマ:でも、命に係わる病気なら仕方がねぇんじゃねぇのか……?
シイナ:それが、その件で快癒後に家族から色々と文句を言われてしまいまして。
タクマ:オイオイオイオイ……。さすがに病気は不可抗力だろ。
シイナ:それで『あ、もう家族じゃなくていいや』と、冷めちゃいました。
タクマ:あ~、もしかして、比べちゃったか?
シイナ:はい。そのときには父様と母様のこと、思い出してましたから。
タクマ:まぁ、そうだよなー。比べちゃうよなぁ~。
シイナ:本当に私達って、あっちの世界では幸運だったんですね。そう感じます。
タクマ:そうだな。だから、結婚の報告をするなら、あっちの両親だろ。なぁ?
シイナ:そうですねー。……ところで、結婚資金はいつ頃貯まりそうです?
タクマ:この調子でいけば来年の今頃には目途ついてるんじゃねぇかな~。
シイナ:あと一年ですか、じゃあ一緒に頑張っていきましょ~!
ふたり:えいえいお~!
シイナ:あ、終わりです~! 多分またやりますので、そのときに~!
タクマ:じゃあな~!