第230話 タクマとシイナの隙あらば設定語りROOM/3
――宙色市内『異階』の一室。
シイナ:フッ、フッ、フッ、フッ、フッ……!
タクマ:そうだ! 膝を曲げるときは直角に、腰を落とすようにだ!
シイナ:ふんぬぅ~~~~!
タクマ:そうッ、しっかり両肘と爪先で体を支えて、腰は曲げない! あと十秒!
シイナ:ふにゅうううううう~~~~!
タクマ:はい、そう! 足を床スレスレで止めて、そこからしっかり上げる!
シイナ:んにににににィ~~……ッ!
タクマ:ああ、いいぞ、いい調子だ。上げるときはあごじゃなくて背中全体だ!
シイナ:も、もぉ、ダメェ~~~~!(ヘニョンと床に倒れ込む)
タクマ:OK! それじゃあいったんここまでだ! いい汗かいたな!
シイナ:ひぇ~ん、着てるシャツが汗で張り付いて気持ち悪いですよぉ~!
タクマ:それがいいんじゃないか! ほら、スポドリ飲んでおけ。
シイナ:ありがとうございますぅ~。……うわ、おいしい!?
タクマ:だろう? 汗をかいたあとは体が水分を求めるようになるからな!
シイナ:っていうかタクマさん……。
タクマ:どうしたぁ、シイナ?
シイナ:何かキャラ変わってません? 妙に明るいというか、爽やかというか。
タクマ:ハッ!
シイナ:ああッ、タクマさんがいきなりプッシュアップを!?
タクマ:フンッ!
シイナ:あああッ、タクマさんがそこからさらにプランクを!?
タクマ:フッ、ハッ、フッ、ハァッ!
シイナ:ああああッ、タクマさんがさらにさらにスクワットを、あんな高速で!?
タクマ:――はッ!
シイナ:そして力こぶを作って、爽やかに濃い笑みをッ!?
タクマ:…………。
シイナ:…………。
タクマ:…………。
シイナ:……タクマさん、またアニメ一気視聴しましたね?
タクマ:これからは筋肉の時代だぜ、シイナ!
シイナ:わかった! 先週教えた『バーベル何キロ上げれる?』を見たんですね!
タクマ:筋肉って、いいよな!
シイナ:またそうやって変な影響受けて! キャンプはどうしたんですかッ!
タクマ:あれはもはや過去だぜ、シイナ!
シイナ:まだ、一か月経ってないですよ~~!?
タクマ:フフン、人は常に自分をアップデートし続けるモンなんだぜ!
シイナ:熱しやすく冷めやすいだけでしょ……。タクマさんって、昔ッからそう。
タクマ:いいじゃん、いいじゃん。多趣味ってことでさ。
シイナ:はいはい。でも程々にしてくださいね。……あの、ところで、
タクマ:お、どうした? プランクもうワンセットいっとくか?
シイナ:いきませんよ、死んじゃうじゃないですか!
タクマ:死にはしねぇだろ……。
シイナ:死にます。絶対に死ぬんです。って、そうじゃなくてですね……。
タクマ:お、おう。何だよ、スゲェ真顔で……。
シイナ:さすがにアセデベチョベチョなので、一回シャワー浴びたいです。
タクマ:なら、一緒に浴びるか?
シイナ:…………バカ。いいですけど。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
シイナ:ぁ~~~~、さっぱりしました。シイナでぇ~~~~す。
タクマ:シャワー気持ちよすぎてトロけてるんじゃんか……。タクマだぜ~。
シイナ:はい、それでじゃ第三回の『設定語りルーム』ですねぇ~。にゃ~……。
タクマ:シイナ~、戻ってこ~~~~い。
シイナ:体動かしたあとのシャワーは最高ですよね~。にゃ~……。
タクマ:戻ってこないとシャワーでのやり取りを克明にここで再現するぞ。
シイナ:わたしは しょうきに もどった!
タクマ:効果てきめんすぎる……。
シイナ:タクマさんがデリカシーないこと言うからでしょ~!
タクマ:いや、でも、シイナがすげぇ可愛かっ
シイナ:ハイッ! それでは今回もバーンズ家の『異面体』紹介でぇ~~~~す!
タクマ:たよ?
シイナ:何で人が遮ってんのにド根性で言い切るんですかァ――――ッ!?
タクマ:俺は、負けないッ!
シイナ:タクマさんはそういうキャラじゃないでしょ~!?
タクマ:よし、今回も張り切って異面体紹介やってこーぜー!
シイナ:邪魔したのはタクマさんの方なのに……。(ブツブツ)
タクマ:むくれんなって。で、今回はタマキ姉か?
シイナ:ですね~。バーンズ家の長女であり長子、タマキ・バーンズ姉様です。
タクマ:『鉄人にして超人』であり『バカ力にしてバカ』……。
シイナ:本編でも『喧嘩屋ガルシア』としてバカっぷり発揮してますからね……。
タクマ:異世界ではことあるごとに騙されてウチに突撃してきてたよな。
シイナ:そのたびにラララちゃんとキリオ君ともう一人で対抗してました。
タクマ:最後の最後に父ちゃんが出てきて、ゲンコツで大泣きまでがデフォ。
シイナ:そして翌日には全て忘れる……。
タクマ:あの強靭な物忘れの激しさは何なんだろうなぁ、マジで。
シイナ:バカなんでしょう、きっと。
タクマ:それ以外に適切な結論が見つからねぇのもすごいな、タマキ姉。
シイナ:そして、そんなタマキ姉様の異面体が『神威雷童』です。
タクマ:仮面ラ●ダーエターナ……、
シイナ:ストーップ! そこまでです、そこまでー! タクマさぁんッ!
タクマ:だって純白の変身ヒーローでライダーっていったらソレじゃんか!
シイナ:そうですけど! 確かにモデルはそこですけどッ!
タクマ:で、そんなタマキ姉のカムイライドウのスペックは?
シイナ:自己装着型異面体カムイライドウのステータスはこんな感じ。ドドン!
攻撃力:★★★★★★★★★★(10)
防御力:★★★★★★★★★★(10)
速度 :★★★★★★★★★★(10)
技巧 :★★★★★★★★★★(10)
射程 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
能力 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
タクマ:…………うっわぁ。(ドンビキ)
シイナ:いやぁ~、ひっどいステータスですよねぇ。
タクマ:近接パワー型とかそういう話ですらない。
シイナ:自己装着型ですから、当然、射程はゼロです。そして能力もないです。
タクマ:これは、あれか、パワーアップ全振りってことか?
シイナ:自己強化オンリーですね。一応、それが能力といえば能力ですけど。
タクマ:戦う自己装着型異面体のデフォ能力だろ、自己強化なんて。
シイナ:実はそうですね。キリオ君もラララちゃんも、身体能力は強化されます。
タクマ:でも、タマキ姉のそれはぶっちぎり、と。
シイナ:そして姉様本人の素の身体能力も界隈が違うレベルなので。
タクマ:できあがるのはバーンズ家最強の変身ヒーロー、ってことか。
シイナ:そうですねー。単純な破壊力と防御力は最強じゃないんですけどね。
タクマ:破壊力なら荷電粒子砲台末っ子がいるし、防御力もキリオがいるしな。
シイナ:でも姉様は、ヒナタちゃんのビームも避けちゃいますから。
タクマ:おかしいだろ……。(戦慄)
シイナ:伊達にバーンズ家の戦闘最強を張ってるワケじゃないってことですよ。
タクマ:でも、バカなんだよな。
シイナ:バカです。そして搦め手にはてんで弱かったりします。
タクマ:八章で出てきたドラゥルのコピー異面体とか、タマキ姉の天敵だよな。
シイナ:いやぁ~、あれはそもそも異面体自体も相当な強さでしたよ?
タクマ:でも、父ちゃんとかシンラ兄なら簡単に対処できただろ。
シイナ:父様は能力が反則ですし、シンラ兄様はバーンズ家の能力最強ですから。
タクマ:そう考えッと、やっぱこの手のモンは相性重要だよなぁ。
シイナ:ですねぇ……。最強のタマキ姉様といっても、対策は打てるワケですし。
タクマ:対策しないと絶対勝てないけどな、あんな人の形した熊。
シイナ:……否定したいけど言い得て妙と思っちゃう自分がいますね。
タクマ:でもさぁ……。
シイナ:はい?
タクマ:そんなバーンズ家最強の生物のタマキ姉だけど、中身、乙女なんだろ?
シイナ:すッッッッッッッッごい乙女ですよ。
タクマ:おまえはそこまで力入れるほどか……。
シイナ:だって考えてみてくださいよ。叶わぬ初恋に殉じて生涯未婚ですよ?
タクマ:愛がすごい……。
シイナ:そりゃあ、あの人の『真念』は『愛情』ですからねぇ。
タクマ:あのタマキ姉の『真念』がねぇ……。
シイナ:姉様が武闘家を選んだのも、ケントさんの影響が大きいんですよ。
タクマ:そう考えッと、ホントにあの人はケントさんに心を捧げてたんだなー。
シイナ:初志貫徹ですよね。素敵ですけど、ある種残酷な話ではあります。
タクマ:こっちで報われたから、今後は幸せになって欲しいよな。
シイナ:そうなんですよ! そこなんですよ!(前のめり)
タクマ:お、おう、何がだ……?
シイナ:考えてみてください、タマキ姉様はやっとケントさんと結ばれました。
タクマ:ま、そうだな。
シイナ:異世界では、ずっとずっと孤高の武闘家を貫いてきた人です。
タクマ:それも、そうだな。
シイナ:今現在も、その頃のクセが抜けてなくて、一人称も「オレ」です。
タクマ:ああ、うん。そうだな。
シイナ:もったいなくないですか?(タクマ視点、どアップ)
タクマ:…………可愛い。キスしたい。
シイナ:タマキ姉様に!?
タクマ:いや、おまえに。顔近いから。
シイナ:あばばばばばばばばばばばばばば!?(我に返って顔赤くする)
タクマ:で、タマキ姉の何がもったいないって?
シイナ:ですから、あの人、素材は最高なのに全然オシャレしないんですよ!
タクマ:そりゃ『喧嘩屋ガルシア』なんてやってるくらいだからなぁ……。
シイナ:それがもったいないんですよぉ~~~~!
タクマ:そ、そうなん?
シイナ:もったいないです! ケントさんに殉じる必要もなくなったんですから!
タクマ:まぁ、そうかも……?
シイナ:だから、ちょっと母様とかと共謀して、とある計画を進めています。
タクマ:計画て……。
シイナ:母様と~、ヒメノ姉様と~、美沙子さんと~。
タクマ:スダレ姉は?
シイナ:あの人は『オシャレ何それ系人種』なので放置です。
タクマ:ハブんなよ。かわいそうだろ……。
シイナ:旦那さん帰ってきてラブラブだからいいんですよ。
あ~、あとはラララちゃんにも加わって欲しいなぁ~、無理かなぁ~。
タクマ:何でそこでラララ? あいつも『オシャレ何それ系人種』だろ。
シイナ:まさか。ラララちゃんって、すごく身だしなみに気を遣ってますよ!
タクマ:え、マジで!? 切った張ったの修羅道の住人じゃないの!
シイナ:バトルマニアではありますが、だからこそ気を遣ってるんですよ。
タクマ:マ、マジか。知らんかった……。
シイナ:ま、そのオシャレも幼馴染のタイジュ君のためなんでしょうけどね。
タクマ:異世界でもいつでも斬り合ってたモンなぁ、あいつら。
シイナ:結婚するまでは、ですけどねー。
タクマ:そっか。結婚してからはラララが剣を振らなくなったモンな。
シイナ:それが何でかまでは知りませんけど。何があったのやら。
タクマ:人の事情は人の事情、ってね。話を戻して、タマキ姉への計画って?
シイナ:それはまた、幕間にでもやるかと思います。それでは、今回はこの辺で。
タクマ:何だよぉ~、そこまで言ったなら教えろよ~!
シイナ:それでは次回はケントさんの異面体でぇ~す、お楽しみに~!
タクマ:生殺しはやめろよぉ~~~~!