第201話 タクマとシイナのお茶濁しRADIO/4
――宙色市内『異階』スタジオ。
シイナ:タクマさんって、
タクマ:……何だよ。
シイナ:結構、食べ物の好き嫌い多いですよね。
タクマ:…………。
シイナ:ほら~、思いっきり渋い顔してる~。
タクマ:く、食わなくても生きていけるモンばっかりだし。
シイナ:いや~、実はにんじんが嫌いなのはダメだと思いますよ?
タクマ:にんじんはさぁ~、甘くなければ食えるんだけどさ~。
シイナ:甘いにんじん、美味しいじゃないですか~。
タクマ:…………。
シイナ:うわぁ、シンラ兄様がピーマンを前にしたときの顔してる……。
タクマ:あそこまで嫌いとは言わねぇけどさぁ~。
シイナ:そのシンラ兄様ですが、
タクマ:お、シンラ兄がどうした?
シイナ:今のマイブームが何か聞きました?
タクマ:え、知らねぇ。何々、何だよ? 何かあったのか?
シイナ:『ピーマンの肉詰め』、ですって。
タクマ:…………え、何が?
シイナ:その反応、私と一緒ですよ、タクマさん。
タクマ:いやいやいやいや、だって、なぁ? さすがに嘘、だろ?
シイナ:本当です。シンラ兄様、最近、ピーマンの肉詰めが好きらしいです。
タクマ:何……、だと……?
シイナ:ショックが一周回って物静かなリアクションになっちゃってる……。
タクマ:だってシンラ兄だぜ? ピーマンを食べないために皇帝になった男だぜ?
シイナ:それ、帝国だと都市伝説扱いになってましたよね……。
タクマ:実はただの事実なんだよな~。
シイナ:そうですねぇ。国民はピーマンを食べないでいい法律を制定しましたし。
タクマ:それがどうして、マイブームなんかに……?
シイナ:美沙子さんが作ったピーマンの肉詰めが美味しかったんですって。
タクマ:ああ、父ちゃんのお袋さんの。……料理上手とは聞いてたけど。
シイナ:母様が『人類の至宝』と呼んでたレベルですから、相当なんでしょうね。
タクマ:うわ、そこまでなん? ちょっと食ってみてぇ~。
シイナ:むぅ~。(頬ぷく~)
タクマ:ンなむくれんなって~。どんな美味くても世界で二番目だっての。
シイナ:じゃあ、一番はぁ~?
タクマ:何だよ、言わなきゃダメかぁ~?
シイナ:く、この野郎、ニヤニヤしやがってぇ~~~~!
タクマ:おまえの料理が一番好きだよ、シイナ。いつも、ありがとな。
シイナ:あ~も~、うるさいですよ! 『お茶濁しRADIO』第4回ですよ~!
タクマ:顔赤くしちゃって、可愛いよな~。
シイナ:うるさいって言ってるでしょ~~~~!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
シイナ:次で終わりです。
タクマ:いきなり、何だよ……?
シイナ:ですからこのラジオ、今回と次回で終わりです。ひとまず。
タクマ:何だよ、ようやく次のネタが固まったのか、作者サン。
シイナ:うん、まぁ、ぼちぼち、らしいですけど……。
タクマ:どっちなんだよ……。
シイナ:見切り発車できる程度には固まったんじゃないですか?
タクマ:まぁ、いいけどよ。いつまでも時間稼ぎもしてらんねぇし。
シイナ:ちなみにこのあとは幕間→中編→長編、っていう流れを想定中ですって。
タクマ:中編っていうと、七章とか九章みたいな長さのやつか。
シイナ:ですね~。九章ではスダレ姉様が頑張ってましたよね~。
タクマ:さすがはバーンズ家のジョーカーの一角、つか、あの異能態は何だよ。
シイナ:は、何がですか?
タクマ:え、何でいきなり声が氷点下になってんの?
シイナ:どうせ私の異能態はアンテナですよ~~~~だ!
タクマ:おまえは何を言って……、あ~、そういうことかぁ。
シイナ:何ですか! まだ何か!?
タクマ:いや、別に。ただ、そうだよな~、あの異能態、綺麗だったモンな~。
いや、綺麗なだけじゃなくて、スゲェ似合ってたモンな~。
シイナ:ぅ…………、
タクマ:全く惚れ惚れしちゃうよな~。俺は好きだぜぇ~、あの異能態。
シイナ:…………(俯く)。
タクマ:何てか、本当に『らしい』異能態だよな~。あれしかないっつーかさ!
シイナ:…………。…………(ますます俯く)。
タクマ:俺は好きだぜ――、『流々梵天』。
シイナ:――――へ?(キョトンとなって顔上げる)
タクマ:ん? どうした?
シイナ:え、あの、タ、タクマさんは何のお話を……?
タクマ:え、おまえの異能態の話だけど? いいじゃん、最高に似合ってて。
シイナ:…………(ポカ~ン)。
タクマ:あれ、どうした? あ、もしかしてスダレ姉の異能態の話と思った?
シイナ:え、ぁ、え……、あの?
タクマ:俺、一言でもそんなこと言ったっけ? なぁ、言ったっけか?
シイナ:うううぅ~! 『あの異能態』って言ってたじゃないですかぁ!
タクマ:言ったけど、どの異能態かは別に明言してないよな~?
シイナ:それはズルいですよ! あの話の流れなら姉様って思うでしょ~!
タクマ:俺が言ったのはおまえの異能態の話だけどな~。
シイナ:ぐぬぬぬぬ……!
タクマ:スダレ姉の異能態はな~、見た目派手だけどカラーリングがなー。
シイナ:真っ赤なの、カッコよくないですか?
タクマ:カッコいいたぁ思うが、エロいとまでは思わねぇよ。あと、
シイナ:あと?
タクマ:能力が鬼すぎて、下手なこと言えねぇっていうか……。
シイナ:あ~、半全知全能。
タクマ:何なんだよ、アレは。母ちゃんの異能態よりヤベェっしょ。
シイナ:実は案外そうでもなかったり、なんですよね~。
タクマ:え、そうなん?
シイナ:はい、実は。
っていうのも、母様の異能態は『0を1にできる力』なんです。
一方でスダレ姉様の異能態は『0をAに置き換える力』なんですよ。
タクマ:……よくわからん。
シイナ:そうですね~、わかりやすく例えるとですね~(しばし考えこみ)。
すごくのどが渇いて、水が欲しいときにですね――、
タクマ:おう。
シイナ:母様の異能態は何もないところから、水を出せるんです。
でも姉様の異能態は、別の何かを水に変換する必要があるんです。
タクマ:へぇ、そういう差があるのか。確かに、そりゃあ大きな差だなぁ。
シイナ:そんな感じで、同じタイプに見えて、明確な違いがあるんですよねー。
タクマ:ちなみに、今まで幾つか異能態出てきてるけど、最強とかってあるん?
シイナ:ないです。
タクマ:ないのか!?
シイナ:異能態は基本的に『出した者勝ち』です。能力的には大体同等です。
例外が二つだけありますけど。
タクマ:例外って?
シイナ:父様と私ですね……。
ええと、まず私は『どれにも勝てない絶対最弱の異能態』です。
タクマ:やっべ、それうっける~! あ~、でもシイナって感じするわ~!
シイナ:ひぃん、聞きましたか読者サン! 彼氏がいじめてきます、DVです!
タクマ:やめろやめろ! その辺は結構デリケートなんだからやめろぉ!
シイナ:ふんっだ、私をいじめるからこうなるんです!
タクマ:はいはい、ごめんて。――で、父ちゃんは何で例外なんだよ?
シイナ:父様と、他に誰か一人でも異能態を出したら『異階』が即崩壊します。
タクマ:…………あー、そういう。
シイナ:『異階』を短時間で崩壊させるのは父様だけではありますが、
他の人の異能態だって『異階』に負荷をかけているのは本当なんですよ。
タクマ:何で父ちゃんの異能態だけ『異階』があんなことになるんだ?
シイナ:それはもう『破壊に特化しすぎてるから』以外に理由がないですね。
タクマ:タマキ姉よりもかよ……。
シイナ:いや、それがですね、タマキ姉様、異能態は別に攻撃力高くないんです。
タクマ:あれ? おかしくね? タマキ姉の異能態が攻撃力最強なんじゃ?
能力名だって『絶対突破』で、攻撃に特化してるんじゃないっけか?
シイナ:あれは『そう見えてるだけ』です。実は本質は『攻撃』じゃないんです。
タマキ姉様の異能態の本質は『浄化』なんです。洗い流してるんです。
タクマ:うっそぉ……。
シイナ:マジマジの大マジです。導き出される結果が『突破』なだけです。
でも中身は『浄化』なんですよねー。あの姉、本質が乙女なんですよ。
タクマ:じゃあ、本当の意味で攻撃に特化してるのは――、
シイナ:はい、父様の異能態の方ですね。
壊す方向に尖りすぎた結果が発動即『異階』崩壊です。笑いますよねー。
タクマ:父ちゃんらしいっちゃ、父ちゃんらしいけどな~。
シイナ:と、話が結論を見たところで、お便り代わりのヤツいきましょ~。
タクマ:はいよ~、色々来ちゃいるんだな~。
シイナ:それでは今回はこちらで~す。
『個人的な疑問ですが、異世界でタクマがマヤと結婚して、
シイナが落ち込んでるところにお見合いが来たのか、
シイナがお見合い結婚してタクマが落ち込んでるところに、
マヤに言いくるめられたのか気になります』
タクマ:あ~、これかぁ~……。
シイナ:これは後者ですね~。私のお見合い→タクマさんの結婚、の順番です。
タクマ:シイナってさぁ、お見合いの時点で俺のことわかってたの?
シイナ:え? タクマさんが『普通の仮面』を被ってたことに、ですか?
タクマ:そうそう。
シイナ:いや~、さすがにそこまではわかってませんでしたよ。あの当時は。
タクマ:でもお見合いしちゃったんだよな~。
シイナ:私も『普通』に囚われてましたからねぇ、そのときは。
タクマさんとは結ばれないのが『普通』なんだって思ってましたし。
タクマ:結果的にはそれで正解だった、ってのも何かモヤモヤするけどなぁ。
シイナ:いいじゃないですか。こうしてこっちで一緒になれたんですから。
タクマ:結果良ければ、ではあるけどな。
シイナ:ところでタクマさんですよ。マヤさんと結婚したのは何でですか?
タクマ:そうするのが『普通』だったから。
シイナ:はいはい、出た出た。もうそこから『普通の仮面』を被って、この人は!
タクマ:おまえにだけは言われたくねぇよ! ユウヤなんかと結婚しやがって!
シイナ:一応は大切にしてくれたんですよ、一応は。占いさせられましたけど。
タクマ:そういえばよ~、八章じゃ出てなかった情報が一つあるよなー。
シイナ:何です?
タクマ:異世界でのおまえとユウヤってさ~。
シイナ:はい。
タクマ:子供はいなかったのか?
シイナ:あ~……、確かにその辺りは、全然触れられてませんでしたね~。
タクマ:一回夫婦として添い遂げたなら、いても全然おかしくねぇだろ。
シイナ:う~ん、その辺は、作者サン的にあえてぼかしてる部分はありますねー。
タクマ:何で?
シイナ:孫世代まで出てくるといよいよ収拾がつかなくなるでしょ?
タクマ:そりゃそうかもだけど、シンラ兄の長男は出てきたっしょ。話だけ。
シイナ:晩年のキリオ君がやらかしちゃったやつですね~。
あれは、今後のお話の主題として取り上げられるから出てきたんですよ。
タクマ:あ、やっぱそうなんか。そりゃまぁ、そんときはキリオ、がんばれよ~。
シイナ:他にも、マリク兄様とヒメノ姉様の掘り下げもまだ控えてますし~。
これからも『出戻り転生傭兵』は続いていくでしょうねー。
タクマ:父ちゃんと母ちゃんが異能態に至ったエピソードもあるし、
シンラ兄と美沙子さんの件もまだ決着してねぇしな。
シイナ:まだまだ語れるお話はいっぱいありますねー。
と、いったところで第4階はそろそろ終了です。お疲れ様でしたー!
タクマ:このラジオも次回でひとまず終わりだけど、お便りは随時募集中だぜー。
シイナ:それでは皆さん、また次回~!