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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
幕間 天高く馬肥ゆる『出戻り』の秋

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第187話 前話以上に長文部分は以下同文な女子会

 男共がサウナで気持ちよく惚気ている頃、女性陣も別の場所で盛り上がっていた。


「えーッ、お義母様、泣いちゃったんですかぁ~!?」

「ちょっと、ミフユちゃん、大げさに驚き過ぎだよ。ったく……」


 美沙子の話を聞いて、ミフユが席から立ち上がるほどの勢いで驚いた。

 その頬には、拭い忘れた白いクリーム。


 そして右手にスプーン。すぐ前にはスペシャルサイズの苺パフェ。

 バーンズ家女性陣、現在、健康ランド内の大型カフェにて女子会中であった。


「ふへぇ~、おパパのおママ、泣いちゃったんだぁ~? 何で何でぇ~?」

「うわぁ、そこでそれを聞いちゃうスダレ姉様、エグい……」


 遠慮なしに美沙子に切り込んでいくスダレに、隣に座るシイナが軽くおののく。

 だが、尋ねられた美沙子は、それにキチンと答えた。


「そうだねぇ、やっぱりアキラが恋しかったんだよ。何せ、前の『あたし』も含めて、あの子と二日以上離れたことがなかったからねぇ。三日も経つと、アタシの方が参っちまったのさ。全く、情けないもんさね。『竜にして獅子』ともあろうものが」

「え~? 全然情けなくないよぉ~。ウチもジュン君に会えなくて寂しいもん~」


 口にくわえたスプーンをピコピコさせて、スダレが美沙子にそう返す。


「ウチだって最初は本当に寂しかったよぉ~。ジュン君がぁ~、東京に行っちゃったのってぇ~、結婚して一か月経たないうちなんだもぉ~ん。毎日泣いたよぉ~」

「ああああああああああ、それは辛い……」


 そう続けるスダレに、シイナが同調を示す。

 すると、周りの女性達は、タマキまで含めて一斉に彼女へと視線を注ぐ。


「な、何ですか……?」


 さすがにいきなり注目されて、ビクッとなるシイナ。

 それに対し、言ったのはタマキだった。


「シーちゃんが、キレない、だと……!?」

「何ですか、それェ! 何でここで私がキレなきゃいけないんですかぁ!?」


 気色ばむシイナではあるが、ミフユが軽く手を振って、


「いやいや、シイナ。今までのあんたなら確実にここで逆切れしてたわよ。こう『何ですか、スダレ姉様。遠回しな既婚者アピールですか。遠距離だろうが何だろうが既婚は既婚でしょ! これはあれですね。離れてて悲しい=でも心は通じ合ってるの。ってことですね! 殺意! 今、確実に私の中に芽生えた感情、これが殺意なのですね!』とか、無駄に一人で盛り上がって面白いことになってたわよ」

「そんな、母様。まるで実際に見てきたみたいに克明な……」


 ショックを受けるシイナだが、ヒメノとひなた以外の全員がうなずいている。

 それがまた、シイナの顔を青ざめさせる。


「え、あれ、ほ、本当に……?」

「むしろ、自覚がない方が驚きなんだけど……」

「あはは……」


 固まるシイナにミフユが眉間にしわを寄せ、もう一人が軽く笑う。

 そこに、ヒメノが同じく困ったような笑いを浮かべて、


「シイナちゃん、そんな感じだったんですわねぇ……」

「待ってください、ヒメノ姉様。これは陰謀です。そして冤罪です。皆さんが私のハッピーに嫉妬して、陥れようとしているだけです。惑わされてはなりません!」


 シイナはあくまで身の潔白を主張する。

 だが、タマキがそこに容赦なくトドメを刺した。


「ンなことするかよー! シーちゃんじゃねぇんだからさー!」

「うわー! タマキ姉様ひっど! それはひどいですよー! 今のは心が傷つきました! 賠償として姉様のショートケーキの苺を要求します!」

「何でだよ、絶対あげねぇよ!?」


 ギャンギャンし始めるタマキとシイナだが、そこに加わったのは何と、ひなた。


「しいなおねえちゃん、ひなたのいちごあげる~」

「えッ!?」


 固まるシイナの前に置かれた皿に、ひなたがフォークに刺した苺を置こうとする。

 それを見て、ミフユが目を細めて面白がる。


「あらら~、いいのかしら~、シイナおねえちゃ~ん? この中で二番目に年上のおねえちゃんが、一番小さい子から苺もらっちゃって、いいのかしら~?」

「そ、そこで歳のことを持ち出すのは反則でしょぉぉぉぉおぉ~~~~……」


 血の涙でも流しそうなかすれた声を出して、シイナはひなたにもらった苺と、自分のベイクドチーズケーキの三割ほどをフォークで切って、別の皿に乗せる。


「フフン、でも私は大人なのでここでちゃんと大人の対応をできますよ。はい、ひなたちゃん、いい子だったひなたちゃんには私からこれをあげま~す!」


 シイナが笑ってその皿をひなたの前に置くと、


「いいの~!」


 と、ひなたは瞳を輝かせてシイナを見た。もちろん、彼女はそれにうなずく。


「いいんですよ~、どうぞどうぞ~」

「わ~い!」


 朗らかに笑って苺にフォークを刺すひなたを見て、他の七人もほっこりする。

 そしてミフユが、同じく笑っているシイナに称賛を贈る。


「さすがね、シイナ。大人の対応だわ」

「当たり前ですよ、母様。私、実際に大人ですので。余裕が違いますね」


「そう。じゃあ、余裕のある大人のシイナに、タクマのこと聞いちゃおうかな」

「……はい?」


 笑顔のまま、シイナが固まった。


「ここ女子会の会場なのよ、シイナ。そして女子会といえばコイバナ、今の私達の間でのコイバナのトレンドといえば、やっぱりあんたよね~。シイナおねえちゃん?」

「は、はかりましたね、母様!?」


 と、シイナが反論したところであとの祭り。

 苺とチーズケーキに夢中になっているひなた以外の全員の視線が彼女に注がれる。


「くぅ、またみんなして私を見てくる……!」

「ごめんなさいね、シイナちゃん。でも、やっぱり気にはなってしまって……」

「ヒメノ姉様にまで言われたら断れないじゃないですかぁ~!」


 何だかんだ言いつつ、シイナ・バーンズが家族からの押しに弱かった。

 ちょうど運ばれてきたアイスココアを一口飲んで、シイナはふぅと息をついた。


「タクマさん、ですかぁ……」


 一言、そう前置きしてから。


「そうですねぇ、皆さんにも話しましたけど、あの人とは前世、つまり異世界で姉弟だった頃からの仲です。あっちでは実際に血の繋がりがあって、それが理由で結ばれることはありませんでしたね。結果的にはそれでよかったと思ってます。あっちで結ばれていても、きっと今よりも望まれない形になっていたはずですから……」


 そこで、彼女はココアをもう一口。――そして、ここからだった。


「元々、私があの人を好きになったのって、家族の中で私と同じで現実にまで影響を与えられる異面体を持っていたから。それがきっかけでした。やっぱり共通点って大事ですね。そこから始まるものもあるんですから。でも、本当にきっかけでしかありませんでした。あの人は優しくて、頼りになって、それであんなに大きな体をしてるくせに根っこの部分は少し気弱で、そういうところがまた可愛いんですよね。それと、やっぱりコミュ力が高いというか、気遣いができる人です。デートのときでも、私は彼と一緒のときには不快な思いをしたことがありません。さりげなくて細やかな気遣いに、いつも助けられてます。それが申し訳なくもありますけど、あの人、言うんです。私だからだよ、って。それが嬉しくて、ついつい、彼の配慮に乗ってしまうというか……。ズルい女ですよねー、私」


 そして、またココアを一口。当然、まだ終わらない。


「あとはですねー、実は強引な部分もあるんですよ、タクマさん。同棲の話にしたって、言い出したのはあの人で、私はまだちょっと早いんじゃないかと思ってたんですけど、タクマさんったら、私と同棲を始めることのメリットをすごく力強く演説し始めて、そんなことされたら、こっちだってその気になっちゃうじゃないですか。まぁ、あの教会でもそんな感じで、ものすごく強引に私を納得させてきましたから、実は押しが強いんですよね。私は逆に押しには弱いから、彼からお願いされたら断り切れないんだろうなって思ってたんですけど、そこもちゃんと考えてくれてて、そこまで強くお願いしてくることはめったにないんです。本当に、あの野郎はしっかり私のことも見てくれてて、ちょっと憎らしいっていうか……。ああ、でも最近わかったんですけど、タクマさん、よく私の頭を撫でてくれるんですけど、そのとき、実はタクマさんの方が嬉しそうなんですよね。自分が撫でる側なのに、撫でられてるみたいな顔になって、そこがすごく可愛いなぁ、って――」


 そこで息をつき、シイナは微笑む。

 ミフユ辺りは、何かあればすぐにいじろうとしていた。実は身構えていた。


 だが、シイナが浮かべる笑みの柔らかさと優しさについ見惚れて、言葉が出ない。

 そしてしばしの間をおいて、スダレが言ったのがこれである。


「え、本当におシイちゃん?」

「何ですか、それはァァァァァァァァ――――ッ!?」


「わぁ~、おシイちゃんだぁ~、安心したぁ~」

「何、安心って何です!? 私は何に見られてたんですか、今!」


 驚きにシイナが目を丸くする。そこに、


「ケ、ケンきゅんだってすごいんだからなァ~~~~!」


 何故か対抗心を燃やすタマキ。やってることもタイミングも、彼氏と全く一緒だ。


「ケンきゅんはなぁ、強ェんだぞぉ! スゲェ強ェんだ! オレが『神威雷童(カムイライドウ)』で全力で攻撃しても、全然余裕でそれを捌いてくるし、攻撃しようにも隙が見つからなくて、スッゲェ攻めあぐねるんだぞ! 本人はギリギリだっていうけど、そんなことなくて、絶対まだまだ余裕あるんだ、ケンきゅんは! な、スゲェだろぉ!」


 と、椅子に座りながらその豊かな胸を堂々と張るタマキ。

 実にタマキな彼氏自慢であるが、あれ、これって惚気って呼んでいいのかな。

 全員が判断つきかねて、シイナなどは愛想笑いを浮かべるのが精一杯だ。


「しかも強いだけじゃないんだぜ、動きの速さは異面体の力もあって特に機敏でさー、オレがスゲェなって思うのは、動きの精密性なんだよな! 人の動きってさ、速くなればなるほど制御するのが大変なのに、ケンきゅんは全くブレがないんだぜ! オレでもまだちょっとブレが残っちゃうのに、それがないんだよ。これって、ケンきゅんだからこそなんだよなー、憧れるぜー! やっぱケンきゅんはオレが思ってた通りの人だったぜ!」


 視点が完全にバトル漫画のそれである。

 女子会には恐ろしく似つかわしくないが、語るタマキの顔は完全に乙女だ。

 そして、ここから――、


「そう、ケンきゅんはオレが思ってた通りの人だった。強くて、そして大きいんだ。あの人の手を握ると伝わってくるんだぜ。今は俺より年下で、まだ体だって成長しきってないのに、オレよりも全然大きな、男の人の手の感触が。手を繋ぐだけで、オレ、安心しちゃうんだ。自分は、この人に守られてる。この人なら、オレを絶対に守ってくれる、って。そう思えるからオレは、ケンきゅんと手を繋ぐのが好きだ。大好きだよ」


 急に本格的な惚気が始まるぅ――――ッ!

 アイスソーダを飲みかけていたミフユが、いきなりの糖度上昇に噴き出しかけた。


「オレさ、最近、おかしゃんに料理習い始めてるんだ。ケンきゅんに食べてほしいなって思って。でも、料理って難しかったんだなー。異世界じゃ、焼いて食うばっかりだったから簡単かと思ったら全然そんなことなくて、毎回真っ黒に焦がしちゃうんだ。でも、ケンきゅんはそれをちゃんと食べてくれて、しかも感想も言ってくれるんだ。これまで一回も『美味しい』って言ってもらえたことないけど、でも代わりに『前よりよくなってる』って、ちゃんと教えてくれる。それがスゲェ嬉しい。だからオレ、頑張れるんだ……」


 糖度が、糖度がどんどんと増していく……!

 スダレもヒメノも、美沙子ですら、今の照れ顔のタマキにニッコニコだ。


「オレ、可愛いお嫁さんになりたいな。……なれるかな?」

「なれますよォ~~~~! 姉様なら絶対、絶対、なれますよォ~~~~!」

「わ、ビックリしたッ!?」


 感極まって声を張り上げてしまったシイナに、タマキがビクッと身を震わせた。

 だが、シイナは止まらずにそこにいる全員を見渡し、


「ね、皆さんもそう思いますよね! 姉様なら、なれますよね! 絶対!」

「なれると思うよぉ~、だってぇ~、もうすっごい可愛いもん、おタマ姉ったら~」


 スダレに言われ、


「えええええええ、そんなことねぇよぉ!?」

「いいえ、とても可愛らしいですわよ、タマキ姉様。頭なでなでしちゃいたいです」


 ヒメノにも言われて、


「ヒメノまで~!」


 タマキの顔は、もう耳まで真っ赤だ。これ以上は、火が出かねない。


「案外、女の子らしくしたら化けるかもしれないねぇ、タマキちゃんは」

「あ、お義母様もそう思います? わたしも常々そう思ってるんですよね~」

「やだよぉ! オレはお嫁さんのとき以外はカッコいいのがいいんだってばぁ~!」


 美沙子とミフユの会話に、タマキはイヤイヤとかぶりを振る。

 しかし、シイナもスダレも知っていた。自分の姉の、潜在的な女子力の高さを。


 何故なら二人とも、異能態発動時のタマキをしっかりその目で見ているからだ。

 あれこそはタマキの本質。愛情と母性に満ちた、実に女性らしい姿だった。

 なお、そんな姿でも攻撃力は全異能態中最強の模様。


「今度、お洋服を一緒に見に行きませんか、タマキお姉様」

「あ~、いいですね~、ナイス提案です、ヒメノ姉様! 私も行きますよー!」

「ウチも~」


 ヒメノの提案に、シイナとスダレが次々に乗っていく。

 タマキは顔を赤くしたまま「えぇ~」と逡巡してるが、ミフユが腕組みをして、


「あんたがイメチェンしたら、ケントのやつ、絶対驚くし、ドキドキするわよ~。今ですら相当なんだから。もう褒める言葉しか出てこなくなるでしょうね」

「そ、そうかな……」


 また、タマキが顔を赤くして下を向く。

 この反応は、かなりの好感触だ。これはいける。姉妹達は確信する。


 そして、タマキの惚気による盛り上がりもあって、場の空気は自然と『次』を求める感じになっていった。次は誰の相手自慢が聞けるのかと、期待感が盛り上がる。


「マリクお兄ちゃんは――」


 切り出したのは、ヒメノだった。そして語るのは、マリクのことだった。


「本当に、いい『お兄ちゃん』ですわ。大好きです」

「「「知ってた」」」


 タマキ、スダレ、シイナの声が完全に揃った。

 当然ながらミフユだって知っていた。

 この場でそれを知らないのは美沙子とひなたとあと一人くらいなものだ。


「マリクはね~、本当にヒメノを大事に思ってるからね~。でも、過保護ではあるけど、過干渉じゃないのが絶妙よね~。距離の取り方も考えてるっていうか」

「お兄ちゃんはいつでも私のことを考えてくれているのが、すごく嬉しいです」


 本当に嬉しそうに語るヒメノを見て、美沙子が「へぇ」と相槌を打つ。


「そりゃあ本当に、いい『お兄ちゃん』なんだねぇ」

「――はい!」


 ヒメノも、弾けるような笑顔でうなずいた。


「ちょっと~、スダレ~、あんたはどうなのよ。ジュンさんの惚気とかないの~?」

「え、ウチ~? このあと、ジュン君に会いたくなったから東京行く~」

「あ、惚気どころじゃないってことね。もう心に火がついちゃってるワケね……」


 アポなしの妻の突撃に、果たしてジュンは何を思うのか。

 嬉しいに決まってるか、と、以前のジュンの様子を振り返り、ミフユは理解する。


「さて、それじゃあ最後にわたしが本物の惚気ってモノを――」

「やめて」

「いいです」

「別にいい~」

「またの機会ということで!」


 ミフユ、ノリノリで語ろうとし始めるも、娘四人全員から拒まれてしまう。


「何でよ! わたしにも語らせなさいよ!?」

「おかしゃんがそれやり始めたら止まらなくなるだろー! 聞いてらんねーよー!」


 と、長女タマキ。


「お母様は、こういう機会でなくてもいつもお父様のことをお話していますし……」


 と、次女ヒメノ。


「おママのおパパ語りは~、耳タコ~、耳タコ~。イカはどこ~? 耳タコ~」


 と、三女スダレ。


「いや~、ちょっと今日は耳と脳みその都合がつかなくて。次の機会にしますね!」


 と、四女シイナ。


「うえぇ~~ん、お義母様ぁ~! 娘達がひどいんですよ~!」


 ミフユは、速攻で隣に座っている美沙子に抱きついた。

 そんな息子の嫁を、美沙子は優しくその頭を撫でてやりながら、


「はいはい、帰ったらアタシが聞いてやるさね。元気をお出し、ミフユちゃん」

「やっぱお義母様なのよね~! って、お義母様はないんですか、その、惚気とか」


 そこに気づいて、抱きしめたままの状態でミフユが美沙子を見上げる。


「アタシかい? ハハンッ、あるわけないだろ。アタシはまだ、胸を張って語れるほどあの人のことを知っちゃいないさ。――ま、だから、楽しみなんだけどね。まだアタシが知らないシンラさんの顔を、これから一つずつ知っていくのがさ」

「うおおおお、おとしゃんのおかしゃん、カッケェェェェェ――――ッ!」


 ニヒルに笑う美沙子に、タマキが拳を握って身を震わした。


「ええ、大人の女性、という感じがして素敵ですわ。美沙子様」

「いいよねぇ~、おパパのおママ~、ウチもちょっと憧れちゃうな~って~」

「これで家事万能で料理もプロ顔負けとか、パーフェクトすぎますよ美沙子さん!」


 ミフユの娘達が、口々に美沙子を褒め讃える。本人は「やめとくれよ」と照れる。


「ちょっと、あんた達! わたしもそんな感じに褒めなさいよ! 何なのよ!?」

「あ、あの~……」


 と、ここでキレるミフユに向かって恐る恐る手を挙げる者がいた。

 娘達ではない。そして、美沙子でもない。


「あら、どうかした、《《真理恵さん》》」


 手を挙げたのは、女刑事の菅谷真理恵であった。

 実は最初からずっと、彼女はこの女子会に参加していた。発言は控えめだったが。


 たまたま休日で、一人でここに来ていたところでミフユ達と遭遇したのだ。

 そして、気遣いか、それとも本音なのか、真理恵はとんでもないことを言い出す。


「私は聞きたいですよ。ミフユちゃんの、彼氏自慢」


 その言葉に、娘達全員のがピシッと凍りついた。


「す、菅谷真理恵ェェェェェェェェェ! おまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「別にいいじゃない、タマキさん。素敵なことだと思うわ」

「真理恵さん……!」


 ミフユは身を乗り出して、真理恵の手を掴んで瞳をウルウルさせる。

 そして、娘達が一様に顔を青ざめさせる中、ミフユの顔に満面の笑みが浮かぶ。


「あのですね、アキラはですね――」


 そして始まるミフユの惚気だが、文字数に換算するととてつもないことになるので、非常に残念ながらここでは割愛させていただくことにする。

 ミフユの惚気により娘達は力尽き、ひなたもおねんねしたことだけ記載しておく。


 なお、真理恵はそのあとすぐに帰宅したため、男性陣とは遭遇しなかった。

 とんだニアミスであった。

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