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【連載版】出戻り転生傭兵の俺のモットーは『やられたらやり返しすぎる』です  作者: 楽市
第六章 愛と勇気のデッドリーサマーキャンプ
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第127話 最終日/バスの中/こうして事実は知れ渡った

 キャンプ、終わっちゃったー!


「こうしてみると、あっという間だったわね~……」


 タクマが運転するバスの中で、席に座ったミフユがそんなことを言う。

 うん、そうだね。それはいいんだけど、


「またおまえが窓側? ……俺も窓から外眺めたいんですけど」

「アキラ、わたしに席を譲ってくれてありがとう」


 あれ、おかしいな。別に譲った覚えないんですけど。

 そのイベント、いつ発生した?


「あっという間だったけど、でも、色々あったわよね……」

「そう、だな」


 何事もなかったかのように話を進めるミフユに、俺は早々にあきらめてうなずく。

 おのれミフユ、この借りはいずれ必ず返してやるからな。

 で、それはそれとして、だ――、


「色々あったけど、主役は俺達じゃなかったよなー」

「そーねー」


 と、俺とミフユは一緒に一つ後ろの座席を覗き込む。


「……何だよ」

「……何すか」


 そこには、我が愛娘タマキと、その隣に座る我が親友ケントがいた。

 覗き込む俺達を、二人は一緒に見返している。あれ~、何かな、その反応~?


「いやぁ~? 別に~? ね~、ミフユさん」

「そうそう、別に何でもないわよ~? 仲がよさそうでいいな~って、ね~?」

「ね~?」


 俺とミフユは、互いに顔を見合わせて、ニヤニヤしつつ首を傾ける。

 すると、ケントが言ってきた。


「率直に申し上げますが、ブチ殺しますよ」

「ホントに率直!?」


 まさか、ケントが俺達に向かってそんな一直線に牙を剥いてくるなんて!


「ヤバイ、ちょっとドキドキした。何か男の友情って感じが……」

「それはただの病気だよ、団長」


 うわぁ、一層冷たい声で言われてしまった! 笑うわ!


「っていうか~、何だよ、おとしゃんもおかしゃんも、何の用だよ~!」

「あらあら、ちょっとダベろうってだけなのに、そんなに煙たがらないで欲しいわ」

「け、煙たがってなんかいねーし!」


 と、ミフユに対して唇を尖らせるタマキだが、じゃあ、その余裕のなさは何事さ。

 明らかに、俺とミフユへの態度がいつもと違ってますよねぇ?


「もうこうなったら直できくけどさ、ケントさ」

「はいはい、何ですか。めんどくせぇな」


「おまえら付き合うの?」

「ぶっは!?」


 おお、ケントが噴いたぞ! タマキが背中をさすっているぞ!

 何これ、甲斐甲斐しいタマキとか、ちょっと新鮮でしてよ。ねぇ、ミフユさん!


「な、何でそうなるんすか! あんた、何を根拠に……!?」

「何を根拠にって、なぁ?」

「……そうねぇ」


 俺が同意を求めると、ミフユもこっちを見てうなずく。

 すると、俺達のリアクションが不満だったのか、ケントがさらに噛みついてくる。


「さっきから何なんすか、マジで。ヒマつぶしに俺らを使わんでくださいよ!」

「そーだそーだ! オレ達はおとしゃん達のおもちゃじゃねーんだぞー!」


 二人して俺達に遺憾の意を表明してくるが、あれ、もしかして気づいてないのか。

 俺はミフユに目で問うが、首を傾げられてしまった。教えた方がいいんかな。


「あの~、どうかしたんですか?」


 と、そこに新たな登場人物。

 菅谷真理恵だった。


「あ、真理恵さん」

「やっほ~、菅谷真理恵~!」


 ケントも、そしてタマキも、特に気負いは見せずに菅谷に挨拶をする。

 キャンプ開始前は、タマキなんぞ彼女を見るなり全身総毛立たせてたってのにな。


「別に何でもないですよ。ただ、そこのガキンチョ二人が、俺とお嬢をからかってくるだけで。あ~、ウゼ~、俺ら別に何でもないのに、チョ~ウゼ~。ってだけです」

「そーだそーだ! チョ~ウゼ~、なんだぜ~!」


 あ、コレ本格的に気づいてないわ。どうしよう、クソ面白い。

 そう思っていると、困ったように眉を下げた菅谷が、優しく諭すように告げる。


「あのね、ケントさん、タマキさん」

「何でしょうか、真理恵さん」

「あなた達、ずっと手を繋いだままよ……?」


 言われたケントとタマキが、一瞬動きを止める。

 そしてそのまま両者共に、自分達が座る席の真ん中部分に目線を落とす。

 タマキの左手と、ケントの右手が、しっかり繋がれていた。


「…………」

「…………」

「「~~~~~~~~ッ!」」


 一瞬の間ののちに、二人の顔が同時に真っ赤に染まった。

 やっぱり気づいてなかった! そしてリアクションが初々しィィィィィィッ!


「あッ、あの! これはその、えーと、アレです! その、アレですって!」

「もぉ~、何なんだよ、もぉ~! 何だよー、別にいいだろ、もぉ~~~~ッ!」


 ケントがテンパり、タマキが逆ギレする。

 だがその間も、二人の手、繋ぎっぱなしでしてよ! うおー! うおー!


「え、何々、なぁにぃ~? どしたの~? カップル成立なのぉ~?」


 そこにやってくるスダレ。


「えッ、カップル成立!? 何ですかその忌々しい言霊は! 悪霊退散ですよ!」


 そこにやってくるシイナ。


「何と、ケント殿と姉上が!? これは実にめでたき仕儀! 心より祝福を!」

「ハハンッ、いいねぇ、お似合いじゃないかい! 青春だねぇ、こりゃあ!」

「せいしゅんなの~?」


 そこにやってくるシンラとお袋とひなた。

 あっという間に、ケント達の席の周りに俺達が大集合!


「クッソ、俺ッちもそッち行ッきてぇ~~~~!」


 運転してるタクマだけは、こっちに来ることができない。

 すまんなタクマ、だが安心してくれ。おまえの分まできっちり弄り倒してやる!


「ちょっと、何ですかあんたら! 俺達の周りに輪を作らんでくださいよ!?」

「さっきまでならそれも聞いてやった。しかし、今は状況が変わったよ、ケント君」

「あんた、その口調は何キャラだよ!?」


 あ~、打てば響くこのツッコミ。本当のケントが帰ってきたんじゃ~。


「で、ケント君よぉ、告白はどっちからなんだ~い?」

「あんた、父親のクセに躊躇なく核心を抉ってくるのは確実に最低だからな!」


「昨日、バーベキューのときに二人していなくなったよね、途中で?」

「ぐぅッ……!」


 必死に抗おうとするケントだが、俺がそれを指摘すると途端に言葉を詰まらせる。

 やだ、その反応だけで、こっちは顔がニヤケちゃう。


「べ、別に……、俺とお嬢で、散歩に行っただけですけど~」


 ケントは、自分を注目する皆から目を逸らし、唇を尖らせてそう述べる。

 だが、顔は赤いままだし、手も繋いだままだし、これは説得力皆無。そして絶無!


「あの、アキラさん? あんまりケントさん達をからかうのは……」


 と、ここで菅谷がケント達に助け船を出そうとしてくる。

 菅谷が俺を『さん』付けしているのは『出戻り』に関する話をしたからだ。


 ケントとタマキが、自分を救おうとしてくれる菅谷にパッと表情を輝かせる。

 さすがは『正義の人』菅谷真理恵。しかし、しかしだ……!


「菅谷さん、あんた、この二人のコイバナ、気にならないのか?」

「それは気になります」

「そんな、真理恵さァァァァァァ――――んッ!?」


 残念だったなぁ、ケント!

 菅谷真理恵だって、刑事とはいえ二十代前半女子なんだよォ!


「菅谷さん!」

「はッ、はい!?」


 ここで、何故かシイナが菅谷を呼んで、ジッと凝視する。


「つかぬことをお尋ねしますが!」

「あ、はい、何でしょう……」


 強烈に迫ってくるシイナに、菅谷は気圧されつつ質問を待つ。

 すると、シイナは前置きもなしに彼女に問いかけた。


「……彼氏いたこと、ありますか?」


 おまえ、なんつーことをきいて……。


「いえ、その、お恥ずかしながら、ないです……」


 そして菅谷真理恵。おまえも何で素直に答えちゃうかな……。


「我、今ここに、生涯の友を得たりィ~~!」

「うひゃあぁッ!?」


 勢いのまま、歓喜の声と共にシイナが菅谷真理恵を抱きしめる。

 いやいや、おまえと一緒にすんな、シイナ。それは菅谷に失礼だと、俺は思うよ。


「ところでケント殿、姉上と想いを通じさせられたコツなどはございましょうや。余としましては、是非とも今後の参考にさせていただきたく――」

「ンな真面目に言われたって知らねーっすよ! もう休ませてくださいよぉ!」


 何かケントが、必死になってるシンラに食い下がられてる。

 シンラも、このキャンプ中に何かあったんかねー。お袋もニヤニヤしてるし。


「ね、タマキ?」

「何だよ、おかしゃん! オレ、怒ってるからな!」


 そして、俺の隣ではミフユがまたタマキに何かを話しかけている。


「そんなツンケンしないの。もう、からかったりしないわ。ただ、教えてほしいの」

「何をだよ!」


 まだプリプリしているタマキへ投げる、ミフユの問い。それは、


「キャンプ、楽しかった?」


 母親として、娘にそれを確かめるものだった。

 そして、問われた娘は表情を一転、楽しげなものに変えてうなずいた。


「うん、最高に楽しかったぜ!」


 それなら、よかったよ。

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