ケレス達とメナルー、街の門にて
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
荒野の入り口、オテグイエルクの門前は審査待ちの人々で賑わっていた。
「何か武器は持ってるかい?」
「俺はシェムジェムを持っています。そちらで預かっていただけますか?」
「いいぞ。お嬢さんは?」
「私もシェムジェムを持っている」
門番がリーシュをにらんだ。
「シェムジェムゥ? お嬢さん、あんたなんか怪しいなぁ」
いい加減にしてくれ、自分だってシェムジェムを持っているのになんでリーシュは疑うのかとケレスは思った。
この1ヶ月、リーシュに悪印象を抱く門番ばかりだ。
そしてあるはずもない証拠が見つからなかったのなら、いちゃもんに変わるのだ。
彼女の股を探ろうとしたときは思わず殴ってしまい、そのせいで三日間野宿する羽目になったこともある。
今回もそうなのかと思った。
「こら! 証拠もないのに怪しんじゃダメだって言っただろ?」
「メナルー!? 何でこんな奴らと一緒に・・・・・・」
「行く当ての無い旅らしいからね。ここを紹介したんだよ。
それより! 仕事病なのかもしれないけど、初対面への第一声じゃ無いだろ?
必ず調べるんだから、そこで怪しい物が見つかってから怪しむ物だよ。
ほら、君たちもちゃんと協力して!」
いさめるメナルーに押され、門番達に触られる。
大きな町らしく女性は女性で、間仕切りの向こうで行われた。
「どうだった?」
「怪しい物はありませんね。
シェムジェムはこちらで預からせていただいています」
「ほらね。やらかすつもりなら預けようとするかい?」
笑顔を浮かべたダークエルフの女性門番から報告を聞き、メナルーは男の門番にどや顔で言い放つ。
「むむむ・・・・・・そっちの坊主もシェムジェムを。それと馬もここで預かる」
「ええどうぞ。良い子にしてるんだぞ、アンダルス」
未だ怪しむ男性に対し、ケレスはいらつきながらシェムジェムを渡す。
女性門番がアンダルスを厩に連れて行くのを見ていた3人にカラフルなスタンプが押された木の板が渡される。
「これが入街証明だ、無くすんじゃ無いぞ。
あと色の組み合わせと数字で何時誰に誰が押したかが解るからな。
街から出るときも押すからな。また入るときはちゃんとここを通るんだぞ」
「わかりましたよ」
「ほら、これが買い取った分の貨幣だ。
赤い岩が1ガベル、黄色いが5ガベル、白い岩が100ガベル、
黒い岩が1000ガベルっていうんだ」
この町の貨幣を受け取り、街へと入るケレス達。
結局あの男性はリーシュを怪しみ続けていた。
「リーシュ、あの女の人に何かされなかった?」
女性門番に何かひどいことをされていないか心配になったので、ケレスは聞いた。
「心配してくれてありがとう。ただ検査を受けただけだ」
あっさりと言い放つ。
「すまないね。ここ人が多いから。
少しでも目立つと怪しく思っちゃうんだと思う」
メナルーが謝る。
「俺はあの門番の責任だと思うよ、この件に関しては」
「いや、ここによるたびに顔を合わせているんだ、彼が小さい頃からね。
監督不行届って奴さ」
「そんな物かな? 俺としては話し合いに持ち込んでくれただけで、
しっかり監督できていると思うんだけど」
「じゃあそういうことで。
同じような事が起きたら、僕は顔が利くから頼ってくれ」
「ああ、ありがたい。私は嫌われる雰囲気をまとっているようだからな」
彼らは話しながら、物資を補給していった。