竜駆るエルフ、ケレス達と出会う
竜の首の後ろから肩へと移動する人影が見えた。
ケレスとリーシュは武器を下げ、望遠機能で見てみる。
剣のようにとがった耳、その顔は優しげ且つ美しく黄色い肌である。
外見はケレスより年下に見える、エルフの少年がそこに居た。
「僕は『メナルー』! 喧嘩なんて痛くておなかがすくだけだ!
しかもJOBを持ち出してまで、何考えているの!?」
「いや、違うんだ。少し確かめたいことがあってね」
「なにそれ?」
ケレスとメナルーが話し始めたところに、リーシュが割り込む。
「私はリーシュ。この男はケレスという。
彼は先月目覚めたギフトがあるんだ。
理解を深めるためにそれを使っていたわけだ。
私はあなたと同じく戦闘があると思ってここに来た」
「ふーん」
ボルティーダをにらんだ後、見回すメナルー。
(なんなんだこの嫌な魔力の流れ・・・・・・
ものすごく不快だ。あれの繰者から出ているな)
そう思ったメナルーであるが、JOB同士の戦闘にしては、双方傷が少なすぎるし足跡も多くは無いので、戦闘は無かったと確信した。
「下手こいて被害が出るのは防ぎたいからさ、
少なくともどれだけできるかは知っておかないと」
「確かにJOBの足跡が少ないね。解った、信じるよ」
大事ではないことが解ってもらえたことに安堵するケレス。
「助かる。そうだ、近くに町か村はないか?私も彼も当てのない旅をしている。
そろそろお互いの物資を補給したいんだ」
「なんか変な言い方だね?」
リーシュの言葉をメナルーが怪しむ。
「そのうち別々になるかもしれないからな」
そういえば“今は”世話になるって言っていたな、と思い出すケレス。
一人になって味方ができるのだろうか? とここまでの村人達の様子から不安になった。
「無理はしない方が良いよ。ミュータントも大きな奴が増えてきているみたいだ。
僕みたいにドラゴンと友達になっていたりしないと、
一人旅は自殺と同じだよ?」
何か知らないが不機嫌そうにメナルーが言う。
「だからこそ、彼がボ・・・・・・
嫌、JOBになれるまで一緒に居た方が良いと思ってな。
私は・・・・・・まぁ大丈夫だろう。逃げるくらいはできるだろうさ」
「ずいぶんと自信があるんだね。
でも味方してくれる人は多い方が良いとだけいっておくね」
言葉はきつめであるが、メナルーは心配してくれているのがリーシュには解った。
一方気を遣われているのを知り落ち込むケレス。
同時にその必要が無いほど強くなってやるという意地も湧いた。
「ここから西へまっすぐ行った後旗が立てられた岩から北へ行くと、
『荒野の入り口』といわれている街があるよ。
用がある人はそこで旅支度をするから、結構発展しているんだ。
そこだけだけど通貨制度が復活しているから、
何か売れる物が残っているならそれで貰えば良いよ」
ありがとうと行って去ろうとしたが、メナルーは話し続ける。
「荒野を行くつもりなら果物は必ず買うこと。
野菜や果物もなしに行くと、突然血を吐いて死んじゃうからね。
『三鈷サボテン』の実を買うなら中心部が良いよ。
荒野側出口で売っている人の中には、
スカスカの実を売りつけようとする人も多くいるからね。
乾燥しているから昼夜の気温差にも気をつけてね。
それと赤砂岩亭って酒場のミニ『シェルワーム』ステーキは絶品だよ。
火加減が絶妙で殻の色合いも良いし、お肉もプリッとしているんだ。
脚も太い奴を使っているし、腑もちゃんと取ってくれているのに値段も安いし、
出て行く前に一度食べてみてよ。後、木材や金具なら東の雑貨屋が良いね。
顔が広いから安く仕入れられるんだ。それと・・・・・・」
「情報ありがとう! ずいぶんと詳しいんだね!?」
「僕達はよくそこに寄るんだ。これから行くところだし、一緒に行こう?」
「別に良いが・・・・・・ずいぶんと私たちに優しくしてくれるな?」
「よく笑われるんだけどさ、僕は『勇者』って奴を目指している。
だからできる限り人の助けになりたいし、印象が悪いからって区別しない。
勇者なら事実と真実で物事を考えるべきだと思うしね。」
胸を張ってそう言った。
今現在納得できる所はここまでです。良いお年を。