ズタボロ、飛来する援軍
バラトゥースが変化した。
その色はスミレ色に変わり、装甲には曲がった枝別れをした縁が付いている。
ロッドはワンドへと変化し赤黒い結晶が先端に付いた。
縁の付いたローブか帽子か・・・・・・そのように変化した鉢金に埋め込まれた石は円の下に1本棒が足された物が渦に取り込まれたような意匠だ。
「『クラスメイジ』。これがアセンションさ!」
アセンションとはJOBの不可逆的強化のことだ。
経験や高濃度の魔力の付加、そしてマジックアイテムの吸収・・・・・・
様々な要因で今のクラスから強化されることだとケレスは聞いていた。
(勝てるのか? いや勝つんだ!
とにかく今は、考える時間を稼ぐ!)
浮かんだ不安を吹き飛ばすケレス。
対物ライフルの連射を再開し、同時にガトリングを生成して放つ。
「殻流!」
バラトゥースのライブラリから呪文を選び詠唱するコンフィ。
周囲のマナが吸収され球状の結界に包まれ、クラスレスの猛攻から守った。
「奇襲縛!」
突如クラスレスの足下から大量の鎖が飛び出し絡め取る。
「嘘だろ!?」
「ははは! バラトゥース! これはおまえの十八番だろう!?
囲襲雷獄!」
クラスレスの真上のみ暗雲が発生し、尋常ではない勢いとペースで・・・・・・もはや雷の檻が降り注ぐ。
雷の檻はクラスレスの周りを駆けながら、どんどんと狭まり一気に襲いかかる。
「ヴウゥゥーーっ!!」
JOBが守ってもなお衝撃を受け、感電するケレス。
クラスレスの装甲に大きな焦げ目が付いた。
「爆炎巨鳥!」
ワンドからJOBと変わらない大きさの火の鳥が放たれ、解放され還元し、削岩機を使うために距離を詰めようとするクラスレスを襲う。
回避行動にすぐさま移ったが、火の鳥はどこまでも追跡しクラスレスに追いつき炎の渦へと変化した。
「歪陸波撃!」
炎に足を止められたクラスレスを波打つ大地が襲い、上空へ大きく吹き飛ばされる。
「加重球弾!」
ワンドから黒い光球が放たれる。
1発2発3発と回避できないクラスレスに命中し、高速で大地にたたきつける。
「天光縄突!」
無数の細い光線が放たれ、弧を描きつつ上空から襲う。
装甲を融解されながらクラスレスが穿たれていく。
「氷瀑狭顎!」
未だ地面へと縛られているクラスレスを、霧と共に現れた氷壁の顎門が喰らいつく。
「激流刺柱!」
火の鳥で焼かれうねる大地に吹き飛ばされ重力にたたきつけられ、熱線の雨を受けたところを氷壁に噛みつかれ、そこを巨大な水流の杭が襲いかかった。
「ウグアァーー!!」
次々と繰り出される魔法により、クラスレスはもはや強制格納寸前の状態にまで持ち込まれていた。
「さぁ、もう一発だ! エレケ・・・・・・」
そのとき空から水の繭が激しく渦巻きながら落ちてきた。
繭は着地次第、流れを弱めていく。
同時に水そのものも消えていき、完全に消失したとき、そこには一体のJOBが佇んでいた。
その姿は波を思わせる鎧で覆われ、その右手には激流モチーフの剣を、左手には波紋が刻まれた盾を装備していた。
すぐさまバラトゥースに向かう謎のJOB。
足下からの水流が高速移動と可能としている。
グラバレットで迎撃しようとするが、謎のJOBの前方に様々な形の水流が現れ、それに乗って躱わされていく。
エレケージを放つ前に、シールドバッシュでバラトゥースはよろめき、魔法の要であるワンドが切り飛ばされた。
「大丈夫だったか?」
ケレスの耳に聞き覚えがある声が聞こえた。