だから?(素直じゃない!)
思うんだけど、意思の疎通のできた会話ってどれだけ存在するのかな。会話って、そもそもなんなの。実際のところさあ、会話には話し手と聞き手が存在するだけでさあ、意思の疎通ができた会話ってあまりないんじゃないかな。一人の人間が、話しをしたところでさあ、それで聞き手が合いの手を入れたり、同調したりするだけでさあ、実際のところ、両者の考えや思いをわかり合えたわけじゃないんだよね。ただ話しを——聞いただけなんだよ。それって意思の疎通ってことにはならないと思うんだよな「
暁あかるは呟くように言った。それを聞いた、一咲二葉は話しを遮らない程度に合いの手を入れたあと、ぼそりとこう言った。
」ま、わかったふりをするわからない人ってのはいると思うよ「」
「」うん「」
「」だけれど、暁くんの意見には全面的に反対だ。暁くんが考えた意見というだけで、大反対だ。この気持ちはもしかして、嫌いとかいう感情なのかも「」
「」おいおいおいおい。それ、酷くない?「」
「」酷いというか、嫌いなんだけどね「」
「」感情論ですか? 後先考えない感情はよろしくないよ?「」
「」後先考えた感情論だよ。そんな感情論があったっていいだろ。私は暁あかるのことが、嫌いで嫌いで仕方がないので、意見に反対する「」
「」議論になってねぇ「」
「」議論にはなってるでしょう。こうして、意見交換をしているわけなんだから。私は暁あかるのことが嫌いだ! 大っ嫌いっ!「」
「」そこまで言わなくても「」
「」大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌い。大っ嫌いだー!!「」……「
会話にはなっていた。そして、意思の疎通もできていた。それ以外にできていないことといったら。
——思いやり——
なのかもしれなかった。そんな概念のものが、この世界に存在すればの話しだが。思いやりがなければ、相手の気持ちを思いやることはできない。しかし、その行いが真実や事実として』思いやれたかどうか『はわからない。
事実が神のような存在にしかわからないように、真実であってもそれを証明する手立てはない。百パーセントはありえない。それらしさ、しか存在しない。
結局、そういう物語なのかもしれなかった。
彼らの物語が意味不明で無価値だとしても。
それでも物語は続く。思いやりがなくとも続く。
」