犠牲=犠牲
「
空からぽんぽこぽーんとミサイルが落ちてきた。しかし、それはよく見るとロケットだった。彼らは、目標高度にロケットを飛ばすことができたので歓喜した。因みに、その中の歓喜したふりは八割ぐらいだった。大勢の人間が手を挙げて万歳と嬉しそうだ。でも八割は心の中で歓喜してなかった。それでも、彼らは嬉しそうだ。万歳。万歳。万歳。嬉しそうだ。
彼ら以外のみんなは、迷惑をしていた。因みに迷惑をしていたのは、全体の一割くらいだった。でもすごく迷惑をしていた。なので、ミサイルを飛ばした彼らを糾弾した。いますぐに止めろと命令した。しかし、彼らはなにを言っているんだと言いたげな仕草をした。まあ、そんな仕草をしたのは五人だけだったが。しばらくして五人のうちの一人が、
」なにを言っている。これはミサイルではない。宇宙開発のためのロケット実験だ「
と言って、ミサイルみたいなロケットは発射され続けた。たまに漁船にぶつかって、一人くらい殺したりした。そのときはごめんと謝ったのに、みんなは許してくれなかった。みんな誠意を示せと非難轟々だった。まあ、全体の二割くらいが非難轟々だった。お金を払え、と非難轟々だった。お金を払わなくて、謝罪しただけではダメらしかった。支持率が落ちるから、という理由で謝罪しない人もいた。そんな中、悠々と学生生活をエンジョイしていた学生がいた。名前を歯向井迎ヱと言う。だれもフルネームで呼ばないが。そう、言うことができる。もちろん、書くこともできる。いや、指がない人は書けないかもしれないが。だが、全体の九割の人間は書くことができる。まだ、書いたわけではないが。だが。
」わたしの名前は歯向井迎ヱです、と「
本人はテスト用紙に音読しながら書いた。ここまで書ければ彼女はもう百点をとったようなものだった。
だって彼女は——名前を間違えなかったこと以外で百点以外を取ったことがない神童的エリートだったからだ。一番難しいのが名前だ。たまに、歯向井のところの』歯『を書き忘れて』向井『にしてしまうことがある。そのせいで、同じクラスの向井くんが百点を取ったことになってしまったことがある。向井くんすげーってなっていた。それを悔しそうにマイハンカチを噛みながら思いっきり引っ張って——イギぃぃぃ!! とかやっていた。ちょっとおかしな人間だった。頭はいいのに、おかしな人間だった。
あと、この教室に呶鳴裂躯須というハーレム男がいるのだが、上空からミサイルが落ちてきてみんな死んだので彼を紹介するまでもなかった。だって、その日が彼にとってもみんなにとっても世界の終わりなのだから。終わり良ければ全て良しなのだとしたら、終わり悪ければ全て悪いのか。それすらもわからない、なにもかも曖昧なままの世界の終わり。均衡状態が完全に忘れさられた。やられる前にやる世界はこうして終結した。
」




