(おはよ〜)お、早う(待ってよ〜)
はあ「
ロリ川 笑美は、ため息をついていた。肺にいっぱい溜め込んで、一気に吐き出した。
」はあ「
もう一度、吐き出す。それもそのはずだ。彼女は、絶望していたのだ。もしくは、希望していた。いったいなににかというと、それは、わからなかった。
本人にも、わからない。この屋上で、ただ、ため息をついていた。そうすることで、自己憐憫に浸って、気持ちよくなっているのかもしれない。
ロリ川は空を見上げた。真っ黒だった。しかし、ロリ川は厨二病をこじらせていたため、空をこう形容しながらため息をついた。
」漆黒か。こんな空も、悪くない「」
「」そうだれも悪くないの! ロリ川さんは生きていいんだよ!「
だれかの声が聞こえた。それは、下の階のベランダからだった。どうやら、ロリ川がまた飛び降り自殺を図ったようだと判断し、一致団結野次馬のように現れた者たちのようだ。実際、彼女は何度もここで、未遂をしている。だから、そう勘違いされてしまったのだろう。
」こっちみんな。地球の敵め。そんな興味深そうに見つめるな。うちはただ、夜風に当たっていただけだっつーの「」
「」なんだ。それなら、良かった「」
「」良かっただって?「
野次馬は、下校するための準備を始めた。なので、ロリ川笑美の言葉は、もう届かない。
」じゃあ、死ねってのか。死ねば、お前らは注目してくれんだろーな?「
その声は、もう、届かなかった。野次馬たちはコロニーちゃんをつくって、鞄を持って、お家に帰っていた。その一人が死ねば良いのにねって言った。そして、他のだれかが、同調した。だねー。
」く「」
「」くそが「
ロリ川は恨みを込めて吐き捨てた。空を見た。そこには、紅く光る丸い月が上がっていた。それは屋上に立つロリ川の影ををつくった。細く長い影だ。
」もしここで死ぬくらいなら、いっそ、うちのことを狼にでもしえくんねーかな——なあ」「」
「」なあ、月よ「
ロリ川は願った。目を閉じて手を組んだ。そして我を忘れるぐらい、夢中になって。祈った。——どうか。
——どうか、狼にしてください。全てを、喰らい尽くして、なにもかもを、台無しにしてください。
——意味なんて、意味もなく。
——真実なんて、事実じゃない。
——絶望あるところに、希望あり。
そんな、巫山戯た世界を、
——どうにでもして、ください——
ロリ川笑美は願った。願って、しまった。もしくは、願って良かった。この願いがいずれ、この世界の未来を、否、ちゃっちな箱庭のような学舎の未来を——どうにかしちゃったりする、かもしれなかった。
この日、彼女は狼に、なった。もしくは狐になったのだ。もしくは、鼠に、なった。嘘。実は人間のままだった。と思わせおいてからのどんでん返し。果たして、ロリ川笑美の世界は、救われるだろうか。
」