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(アイデア)idea(あ、イデア)

 諦目晶あきらめあきらは、知っていた。この世界は、自分ばかりだということに。というか、みんなが彼だということに。彼は白戯異信自だったし、赤西西志郎だったし、泥沼矛盾だったし、赫赫鹿鹿だったし、ロリ川笑美だったし、不合理奈だったし、遣留瀬無成瀬だったし、歯向井迎ヱだったし、呶鳴裂躯須だったし、暁あかるだったし、一咲二葉だった。

 さらには耳無陽一だったし、あるいは鰓鰓呼と鰓尖子だったし、土産坂見上だったし、神だったし、危木機器奇だったし、他中圧死だった。


 みんな、彼だったのだ。彼はだれにでもなれる。誰の気持ちもわかるから、要するに、全人類、彼みたいなものだ。彼は、今日も——愉快そうに笑っていた。


 」愉快ですねえ「


 彼は愉快だった。愉悦に浸っていた。空が青いことに、みんなが彼の自作自演だということに、脚本は彼が書いたことに、全てが愉快だったのだ。


 」ところで、君は誰ですか? どうやら』私『ではないみたいですがあ「」

「ぼくは、お前じゃない。そんなこと、当たり前だろ」「

 彼は言った。彼は、彼と妹だけは、諦目晶ではなかった——と、ぼくは思っている。このぼくが思ったのだ。それ以上でも、それ以下でもない。high&lowではない。高くも低くもない。だって、ぼくはぼくなんだから。ぼくは彼なんだから。


 ぼくは、これまで色んな人を見てきた。人殺しを悔やんだような人とか、便所でおどとどしてる人とか、厨二病とか、アホなエリートとか、怒鳴ってる人とか、耳の聞こえが悪い人とか、嘘つきとか、対人コミュニケーションについて考えすぎる二人とか、諦めが早い人とか、仕事に疲れちゃった人とか、神とか殺人鬼とか。


 それらが全て——全て。


 ——全てお前だったっていうのか——


 」愉しいですねえ。実に、愉快だ「

 彼はにへらと笑った。まるで、ぼくと妹以外の全人類がお前だと言わんばかりに、諦目晶はみんなだった。


 みんな、彼だったのだ。そ、そんなとって。あるのだろうか。ないだろう。


 ぼくは断固として、受けれなかった。代わりに。


「諦目晶。お前は、ぼくだよ「


 ぼくは言った。ぼくは、お前の創造主。創り手だ。お前は、ぼくが作成した。ぼくがプログラムした。ぼくが、執筆した。お前は、ぼくだ。


 そう言うと、彼は、先ほどの笑みを崩した。


 」なんてことをいうのですかあなた!? あなたが、私なわけがないじゃあないですか!! これは、とんだ道化がいたもんだ。よく、そんな平気で嘘をつけますね。みんな、私ですが、あなたなんかじゃありませんよ!!「


 彼はそう言った。しかし、事実、わかっていることがあるんだ。それを、彼に伝えようと思う。


 だって、この文章は。


 地の文は——自の文は——自の分は——


 いや、だいぶ前の時分からわかっていたさ。


 ぼくが、モノガタリの主人公だってことに——


 ——ぼく視点のモノガタリだってことに——


「ごめん。そういうことなんだ。諦めろ「


 ぼくは言った


 」く、くそう。私がこんなところで、諦めて、たまるもんですかあ「

 彼はおもむろに、衣服を脱いでぼくにわたした。


「それは……学ラン、それもこの学区でよく見る……誰の?


 」へへ。よおく見てみろ。血痕がついているだろ「


 たしかについている。血が。固くなった血が学ランにこびりついている。しかもこのセーラー服。もしかして……


 ぼくの予感は的中したような気がした。まずは、こんなものを見せたこいつをぶん殴らせてもらう。予感が的中していようが、していまいが、お構いなしだ。

 」


 それは、君の妹の学ラン。あの事件の被害者だよ。


「思いっきりぶん殴ってやる」











「あの事件が、どの事件なのかわからないまま。なぜ彼が妹のセーラー服を着ていたのかわからないまま。こうして、シニカルに、侮蔑されたかのように、この世界の話は終わった。どれが本当だったのかなんて、誰もわからない。常識は、だれかの非常識で、当て所もなく世界を彷徨うぼくらは、こうして、終結した」


「地の文をカギカッコで閉じるモノガタリ」


「これは、ぼくのモノガタリだ」



 完

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