センテン須(句点センス)
「
呶鳴裂躯須。彼が、ハーレム男で、なおかつドルヲタだということは周知の事実だ。まず、明らかにしないといけないのは、そのアイドル——土産坂見上のことだ。
かの国民的アイドルは、ある事に悩んでいた。それは、芸能界という人気商売であれば、あることないことパパラッチに噂として世間に拡散させる情報についてである。その情報に、ネットで個人的感情を発露する人達がいた。ある男が擁護するコメントを残しても、それだって有名税だ、と他の誰かが書き込む。
ブサイクだとか、キモいとか。ぶりっ子だとか。どこがいいのかわからないとか。死ねとか。そういう、言葉だったり、それっぽい婉曲な言い回しのコメントを残したり。そんな悲惨なネットの書き込みが続いていた。そんなある日。
——土産坂見上は倒れた。
過呼吸になって、ライブのステージ上で、倒れたのだ。その観客にはサイリウムを回してオタ芸を披露していた呶鳴裂躯須がいた。すぐに異変に気づき、舞台に上がろうとする。
」みゃんみゃん!?「
すぐに、警備員に抑えこめられてしまう。背後で、観客の一人が、」マジでウケる「とか嘲笑っていたのを聞いて、彼は」はあ!?「と頭に血が上った。
」ふ、ふざけて笑うんじゃねえ!! お前に、彼女のなにがわかるって言うんだよ!!「
彼は激怒していた。
——呶鳴裂躯須は激怒していたのだ。
」は? なにこいつ。イタくね「
さらには、彼まで嘲笑われた。警備員が」ほら落ち着いて落ち着いて「と彼をなだめる。
土産坂見上はなんとか、産まれたての子鹿のように不器用に立ち上がる。足は、震えていた。呶鳴裂躯須は気づいていたのだ。彼女が、人気アイドルとしての重圧、冷ややかな世間の目、キャラ作りの嘘。それらが、華奢な肩に乗って、ボロボロになっているのを。
」てへ、ドジっちゃった。許してみゃん♡「
」はあ?「とぶりっ子アピールに観客からのブーイングの嵐。さっきの人も、ゲラゲラ笑っていた。
それでも彼は何度も言う。下界から、舞台上へ。
」みゃんみゃん大丈夫かー? おれはみゃんみゃんが大好きだー!! ずっと、応援してる!! 頑張れーー!! 頑張れーーー!!「
その声を、いつまでも、いつまでも続ける。アイドルの彼女に届くまで、ずっと。
だって彼にとって彼女は偶像。生きる光なのだから。周りから冷ややかな目で見られても、ずっと。
ずっと続けるのだ。
」




