会話にしかならない(わかり合うことしかできない)
お前は馬鹿か「」
「」いや馬鹿だとは思わない。なぜなら、馬鹿にも色々あるからだ「」
「」お前は阿呆か「」
「」いや阿呆だとは思わない。なぜなら、阿呆にも色々あるからだ「」
「」お前は賢いな「」
「」そうだね「
他意はなく、他愛もない。自愛ばかりな彼女。言葉の意味を、歪曲することなく、ありのままで受け取る才能の持ち主、鰓鰓呼と鰓尖子は、二人でなんとなしに、ここににいた。
」それにしても、今日は空が高いな「」
「」そうか?「」
「」そうだよ。空に奥行きがある「」
「」ふうん「」
「」でも、どうだろう。そんなこと、だれも気に留めないだろう。だれも、空がどうなっているかなんて、どうでもよくて、各々の生活で精一杯なんだ「」
「」だれも精一杯かどうかは、知らないけどさ。で?「」
「」それでな、結論だけを言わせてもらうとな、みんな、矛盾してるんだよ「」
「」どこが? どう矛盾してるの?「」
「」最近思うのはだな。余裕があるほうがいいのはわかってるくせに、忙しいほうがいいと思ってる、とかかな。忙しくないことは、悪いことだと思い込んでるんだよ。なのに余裕も欲しいと思ってる「」
「」それは、どうだろう。忙しいほうがいいなんて、思う人なんて、それほどいるかなあ「」
「」お前って、正直に語るよな「」
「」ま、褒め言葉として受け取っておくよ。で?「」
「」で、だ。聞いたことないか? 』お忙しいところ、申しわけありません『みたいな台詞。これは、挨拶みたいに、気軽に慣用句として使われる言葉なんだが、実際、適切に使われることは滅多にない。まるで、みんなが忙しいかのように、よく使われる言葉だから勘違いしやすいんだが、別に』忙しいことはいいことではない『んだよ。むしろ、悪い状態だ「」
「」で、なにが言いたいんだよ。言ってみろよ。さっきから、それが言いたくて言いたくてしょうがないのはわかってるからさあ「」
「」へへん。でだな。つまりだな。この』私『が言いたくて言いたくて、しょうがなくて、正論を振りかざしてあらゆる下々の陰口を一刀両断論破するような、まるで正義気取りなことを言わせてもらうとだな、矛盾してると批判したくなるそれを、矛盾していないと反論する人間も、広い世界のどこかに必ずいるってことなんだよ「」
「」それはだれのことを言っているのだろう「」
「」お前のことだったりしてな「」
「」うー。バレた。全然矛盾してないって思ってたのバレたー「」
「」矛盾してるようで、矛盾していない「」
「」……わかり合えているようで、わかり合えていない「」
「」こうして、話し』合って『いるのにこんなにも違くって遠いんだよな「」
「」奥行きがあるんだよ。人間的な深みがあるんだ。みんな違って、みんないい「」
「」いいや。みんな違ってみんな悪いんだよ「」
「」それを言っちゃおしまいだろう?「
へへん、と笑ってその場はお開きにした。
」




