ひねくれサイコパラドックス「
人生なんて思い通りにしかならないんだよ「
白戯異信自は言う。教室はとうに下校時刻を過ぎていて、三年二組のこの教室だけが明るかった。二人だけが残った教室。その窓から見える景色は真っ黒に染まっていた。
」そんなのどうでもいいやん。もう「
赤西西志郎は椅子に座りながら頭を抱えている。
」望んだ通りになっただろ?「
彼は首を横に振った。
」違う。こんなはずじゃない。本当ならもっとうまくやれたんだ。こんなのを俺は望んじゃいない。こんなはずじゃないんだ。聞いてくれよ? 聞いてくれるか?「
こちらの彼は首を縦に振った。
」まあ、聞くぐらいなら「」
「」聞いてくれよ。聞いてくれよ。さっきから俺はなにかがオカシいんだ。いくら自分の頭をぶん殴ってもおさまらねえ。ほんとどうしたんだよこのポンコツが。いくら殴っても、いくら殴っても、おさまらねえ。こめかみの部分がたまに痛えしどうしちまったんだ。笑えねえ。笑えねえよ。俺の手、血まみれだぜ? なんでだよ。なんでこうなってんだ。俺は悪くない。俺は何もしていない「」
「」なにもしていないなんて戯言をはく気か? それが本音か? それが本音ならこの学校のありさまを見てみろよ。この悲惨なありようを「
教室の扉は血ぬられた赤い文字で『』赤西西志郎は絶対に許さない『』と書かれている。
」お前がやったんだろ「」
「」違う、俺がじゃばう「」
「」え「」
「」間違えた。違う、俺じゃない「
困惑気味な様子で下を見る。下には床がある。床の木目をたどって遊んでいるのかもしれない。もしかしたらたどった先に何かあるのかもしれない。もしかしたらなにもないのかもしれない。
」論より証拠ではないの? あ、その前に君はなにをやったのかわかる?「」
「」なんかやったんだろ。手が血まみれだし「」
「」よくわかったな。そう。君はなにかをやったんだよ。では、なにをやったか知ってるかい?「
考える仕草をしたが、頭の中ではおっぱいのことばかり想像していた。
」うーん。考えてみたけど、俺、馬鹿だからわかね「
赤西西志郎は自分のことを馬鹿だと思っていた。その通り。彼の思いは正しかった。彼は考えていないから馬鹿なのだった。
」そっか。でも君は馬鹿じゃないぞ。ちゃんと自分で考えてるじゃないか。考える人が馬鹿なわけがないじゃないか「
彼は考えていないから馬鹿だった。残念ながら白戯異信自は間違えてしまった。なんということだ。こういうことだ。
」