表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

ひねくれサイコパラドックス「

 人生なんて思い通りにしかならないんだよ「

 白戯異信自(しらぎいしんじ)は言う。教室はとうに下校時刻を過ぎていて、三年二組のこの教室だけが明るかった。二人だけが残った教室。その窓から見える景色は真っ黒に染まっていた。

 」そんなのどうでもいいやん。もう「

 赤西西志郎(あかにしせいしろう)は椅子に座りながら頭を抱えている。

 」望んだ通りになっただろ?「

 彼は首を横に振った。

 」違う。こんなはずじゃない。本当ならもっとうまくやれたんだ。こんなのを俺は望んじゃいない。こんなはずじゃないんだ。聞いてくれよ? 聞いてくれるか?「

 こちらの彼は首を縦に振った。

 」まあ、聞くぐらいなら「」

「」聞いてくれよ。聞いてくれよ。さっきから俺はなにかがオカシいんだ。いくら自分の頭をぶん殴ってもおさまらねえ。ほんとどうしたんだよこのポンコツが。いくら殴っても、いくら殴っても、おさまらねえ。こめかみの部分がたまに(いて)えしどうしちまったんだ。笑えねえ。笑えねえよ。俺の手、血まみれだぜ? なんでだよ。なんでこうなってんだ。俺は悪くない。俺は何もしていない「」

「」なにもしていないなんて戯言(ざれごと)をはく気か? それが本音か? それが本音ならこの学校のありさまを見てみろよ。この悲惨なありようを「

 教室の扉は血ぬられた赤い文字で『』赤西西志郎は絶対に許さない『』と書かれている。

 」お前がやったんだろ「」

「」違う、俺がじゃばう「」

「」え「」

「」間違えた。違う、俺じゃない「

 困惑気味な様子で下を見る。下には床がある。床の木目をたどって遊んでいるのかもしれない。もしかしたらたどった先に何かあるのかもしれない。もしかしたらなにもないのかもしれない。

 」論より証拠ではないの? あ、その前に君はなにをやったのかわかる?「」

「」なんかやったんだろ。手が血まみれだし「」

「」よくわかったな。そう。君はなにかをやったんだよ。では、なにをやったか知ってるかい?「

 考える仕草をしたが、頭の中ではおっぱいのことばかり想像していた。

 」うーん。考えてみたけど、俺、馬鹿だからわかね「

 赤西西志郎は自分のことを馬鹿だと思っていた。その通り。彼の思いは正しかった。彼は考えていないから馬鹿なのだった。

 」そっか。でも君は馬鹿じゃないぞ。ちゃんと自分で考えてるじゃないか。考える人が馬鹿なわけがないじゃないか「

 彼は考えていないから馬鹿だった。残念ながら白戯異信自は間違えてしまった。なんということだ。こういうことだ。

 」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ