第16話 迷いの森⑥
あれから1時間が経過した。俺たちは今後の予定を話し合っていた。
・アイリス王女をどうするか。迷いの森での用事が終わったのなら、王都までの護衛が必要だ。
・魔王や魔族の情報収集。
・今の戦力では心許ないので、メンバーの確保。
・勇者召喚される者たちへの対応
今挙げたもの以外にもいくつかの相談をした。そんな中で何か忘れているような気がした。
「レン様、そろそろ説明してほしいです。」
アイリス王女が放置されていたのが嫌だったのか、頬を膨らませて言ってくる。騎士たちは治療が終わって疲労も溜まっていたみたいで眠っている。
(王女の護衛せず寝るなよ…。ここにいれば安全だけど…。)
「妃殿下、先程のティアの話は聞いていましたね?」
「ええ。本当に勇者様なのですか?」
アイリス王女が確かめてくる。俺が勇者ならば王国は勇者召喚しなくてもいいからな。ただ貴族たちがどうするかはわからないが…。
「俺は確かに勇者ですよ。この世界では【異界の勇者】の称号ですね。王国で行われる勇者召喚とは別です。」
「どうしてそれを知っているのですか!」
さらっと国の機密を話してしまったけど、アイリス王女には知っている方が問題だったみたいだ。
「女神イシスから聞いたからですよ。」
俺は面倒だったので、母親のせいにした。これまで迷惑かけられていたから、別段問題ないだろう。これ以上質問されたら面倒だ、話を変えよう。
「それより妃殿下はどうしてここに?先程は聞くことが出来ませんでしたけど…。」
「あー!忘れていました!ティターニア様、こちら陛下からの親書です。お確かめ下さい。」
アイリス王女はいきなり大声を出して、急いでティアに封筒を渡した。
「珍しいですね。陛下が親書を出してくるのは。外で何かあったのでしょうか。」
ティアはそう言いながら、親書の中を確認する。しばらくして読み終えると小さくため息をして、アイリス王女に尋ねていた。
「アイリス王女殿下、これは妖精族 族長への要請ですか?それともギルド【星天の剣】への要請ですか?」
どういうことだろうか?王国で何かあったのか?それとも勇者召喚が早まった関係か?どちらにしても内容が分からなければ動けない。
「【星天の剣】への要請です。このままでは王都の民が大勢亡くなります。どうか私たちに力を貸して下さい。」
アイリス王女はそう言って頭を下げる。騎士たちも目が覚めたのか、後ろの方で頭を下げている。
「レン様、こちらを。」
そう言ってティアが親書を渡してくる。親書の中にはこう書かれていた。