第14話 迷いの森④
「懐かしい呼び方ですね。私と会ったことがある人でしょうか…。」
俺が呟いたことでティアがきた。彼女は俺と話そうとするが俺は彼女と目を合わせることが出来ない。それだけのことをしてしまったのだから。
「う〜ん。たぶん私が知っている人だと思うだけど、仮面を外してもらっても良いですか?」
「申し訳ない。顔に酷い火傷の痕があるから、外すことが出来ない。」
俺は仮面を外せないそれらしい理由を言って、その場を離れた。未来であったことに今の彼女には関係ないが、それでも俺は、今更彼女たちとやり直すことが出来ないだろう。
(いや待て、何か違和感がある。そうだ。アイリスが俺の名前を聞いて覚えていないのに、【星天の剣】のことを知っている?ギルドを作ったのは魔王討伐の後だ。どういうことだ?)
「困惑されているみたいですね。レン様。」
「えっ…。」
俺は後ろから追ってきたティアの言葉に驚かされた。
(なんで名前を…。名前はアイリスに聞いたとしても何故親しげに話してくる?この時代のティアとは会ったばかりなのに…。)
「考えていることを当てましょうか。初対面なのに何故親しげに話してくるのか…。この時代に【星天の剣】がある理由とかでしょうか?」
「なっ!」
俺は考えていたことをそのまま当てられ驚いた。
「そんなに驚くことでしょうか?長い時間一緒に過ごしていたから考えていることが当たって当然です。」
俺はこの言葉にも驚くことになる。ティアには未来であったことを覚えているみたいだ。本来ならあり得ないことだ。俺は戸惑いながらも気になっていたことを一つだけ聞いた。
「1つだけ聞きたい。何故、この時代に【星天の剣】を作った?」
俺の質問を聞き、ティアは悲しげな微笑みを浮かべて答えた。
「こことは別の世界に勇者と呼ばれた者がいました。彼はたくさんの人々を助けて守りました。そして魔王を倒した勇者は世界で最も強い者となりました。平和になった世界には勇者が必要無くなりました。そのことを思った貴族たちは、嘘の情報を流して彼を王都に呼び出し彼の不在の領地に攻め込みました。その時に彼の妻は死に、娘は行方不明になりました。それから数年後、彼に娘の所在を伝えようにも会えなくなり、他人に憎しみを持ったまま私たちに敵対しました。そして勇者は暴走し【星天の剣】のメンバーは過去の世界に精神だけ送られて、この時代の自分たちと融合しました。」
俺はここまでの話を聞いて、彼女たちに謝っても許してもらえないと思った。これは俺が背負わないといけない罪だ。