第10話 覚悟
「どう言うことだ?シャル。」
俺は親父が時間を稼いでいたこととシャルが言ったことが気になった。俺だけが知らなかったことに疎外感があるが、この際関係ない。
「申し訳ございません。アリシアは本当のことを言えなかったみたいですね。」
「アリシア?」
シャルがアリシアの方を見て、微笑んでいる。俺はアリシアに呼びかける。
「ごめんなさい…。ごめんなさい…。」
アリシアが泣きながら謝っている。本当にどうしたのだろうか?いや俺は本当にわかっているはずだ。2人が消えてしまうことを…。俺は泣いているアリシアを抱きしめて背中を撫ぜる。大丈夫だと伝える為に。
「流石にレン様にはわかってしまうのですね。私たちのことが…。」
「ああ。家族だからな。」
「出来たらで良いので向こうの私をお願いします。自分でも分かるくらいに危険ですので。」
「わかった。シャルとアリシアに会う為に頑張るよ。」
俺は心配を掛けない為に無理矢理わらう。それでも2人には気付かれているのだろう。
「アリシアもありがとう。今までお父さん大丈夫だから、お前に会う為に頑張るから。だから最後に笑顔を見せてくれ。」
「うん!」
「レン様。最後にこちらを渡しておきます。万が一の時にお使いください。」
「カード?」
シャルに渡されたのは赤と白の2枚のカードだ。裏にも何も書かれていない。
「説明は出来ませんが、必ずレン様を守るものです。」
「ありがとう。必ず持っているよ。」
そう返事をした瞬間、シャルとアリシアの姿が次第に薄れていく。
「なっ!」
「時間みたいです。レン様、ありがとうございます。貴方に会えて本当に良かったです。愛しています。」
「お父様、最後に会えて嬉しかったです。私たち家族はいなくても何時も一緒だよ。」
そう言って2人は消えていった。残ったのは俺とイシス様だけだった。俺の頬には一筋の涙の跡があったが、心の中には暖かさが残っていた。2人の言葉を聞いたからだろうか。これから頑張っていけそうだ。
「レン様。勇者としての役目、ありがとうございます。」
急に真面目にイシス様が話しかけてくる。
「母さん。急に真面目でどうしましたか?」
「なんか酷いです〜。我慢していたのに〜!」
「今さらです。親父とのやりとり見ていたら良いかなと思って。それより早くしてください。もう帰りたいです。」
「扱いが酷くなっている…。わかりました、わかりましたよ。蓮に残ってもらったのは、封印とシャルたちのことと別で先にアースティアに行ってもらう為です。」
「え?冗談?」
「こんなことに冗談言わないですよ〜。」
「このことは親父も知っているのか?」
「もちろんです!念話で伝えましたし。」
笑顔で伝えてくる。そのことに少しイラとした。
「もういいや。いつからですか?」
「今からです!」
笑顔で残酷に告げてきた。
「このダメ夫婦が!」
そう叫ぶと目の前が真っ白になった。