4話「気まずい空気」
「あの・・・えと、遠い所からようこそおいで下さいました。マイルス王」
アングリーナ王は緊張気味だ。
俺は彼女の緊張をほぐすようグリアン男爵の部下の小人を1人適当に選び、紅茶を持ってくるよう頼んだ。
「えぇ。遠いところからわざわざこんな田舎臭いところに来て1時間以上待たされたのはちょっと苛立ちましたが、今日は楽しい会にしましょ?アングリーナ王」
うぅ・・・と言わんばかりに口を噛み締めるアングリーナ王。少々イラついているのだろう。
「あ〜・・・アングリーナ王。紅茶はいかがですか?」
俺が彼女を落ち着かせるように頼んだ紅茶が到着した。落ち着きの効果があるカモミールティーだ。
「あ、ありがと」
リンゴのようなほのかな香りと味。
少々癖の強い紅茶だが、彼女はこれが気に入っている。もちろん俺の情報だ。
紅茶を一口、口に馴染ませたあとカップを皿に置き深呼吸をした。
どうやら落ち着いたようだ。
マイルス王のカップが空になっているのをグリアン男爵が気づき
「マイルス王殿、貴方様もカモミールティーいかがですか?」
「え?あぁ、よしとくわ。カモミールの匂いはどうも苦手なの」
「左様でございますか」
ほぉ、初耳だ。
「それじゃあ話し合いをしましょうか」
落ち着いたアングリーナ王が話を始めようとする。どうやら紅茶の効果は抜群のようだな。さすが俺。
「えぇそうね。用件が一つだけございます」
一つだけのためにここに来たのか。そんなに会ってまで話したいことなのか。
「はい、なんでしょう?」
真面目な顔でマイルス王を見つめるアングリーナ王。
3秒ぐらい沈黙が続き、その3秒間がとても静かだった。この広い部屋だと風の音も聞こえてこないので緊張感が増す。
「怒りの王を辞任、そして怒りの感情を無くし我が国の一員となってもらえないでしょうか?」
・・・は?とんでもない事を言い出したぞこの人。
「え?」
我が主も急な狂った発言に驚きを隠せない様子だ。
こんなおかしいことを言われたら誰だって驚くはずだ。
「あの、それってこの国を渡せと・・・そういう解釈でよろしいのですか?」
「いえ、それもそうですが言いましたよ。怒りの感情を無くし我が国の一員になれと。」
「いや・・・いきなり言われても・・・。そうしたら人間にも悪影響を及ぼしますし・・・。」
そう。
怒りの感情がなくなるということは人間も
「怒る」ことや「苛立ち」がなくなるということ。
3つの感情のみで生きるということだ。
「ましてやそんな容易に行えることではありません。そんな狂った発言、認めるわけにはいきません。」
「「狂った発言」・・・。そうおっしゃいましたか?今。」
なんだ・・・。様子がおかしい。これは色々とめんどくさいこと言われるぞ。
「では聞きますが、「怒りの感情」は本当に人間に必要だと思うのですか?」
「・・・え?」
アングリーナ王が戸惑う。少し様子見だな。