熊の体ってそれはそれで大変なんだ
ちょっとプロローグ的なモノが数話続きそうです。
一は、パニック状態で我を忘れて山の中を4足で走っていた
人が作ったであろう道ではない場所を走りながらも
その体には傷一つ付ける事はなく
小さい木であれば薙ぎ倒しながら何処に向かうわけでもなく
ただひたすらに、その場所から逃げ出していた。
気持ち悪い、まだ吐きそうだ
何が起きてるんだ、さっきのは何だったんだ
幻覚か、または夢なのか・・・
山道に出たところで
一は走るのをやめた。
全力で山の中を走ったはずなのに、それほど疲れてはいない
少し落ち着きを取り戻したところで、座り込んで
もう一度自分の体を確認した
毛で覆われた腕と足、鋭い爪、柔らかそうな肉球・・・
うん、熊だ、毛は茶色いからヒグマかなぁ~
って、ますます現状が理解できない
確かに、自分の限界を超えたいとは思った
けど、人間をやめたいわけじゃなかったんだけどなぁ
まぁ・・これは現実では無いんだろうなぁ
きっと俺は今、熊にやられてその場で意識不明でいるか
誰かに発見されて病院て夢でも見てるのだろう
そんな風に一は、考えてはいるが
口の中の血の味は現実だと訴えかけている
だめだ、気持ち悪い
とりあえず水だ、水を飲みたい
俺自身が持っていた荷物に水は入ってはいるが
戻る道を覚えていない、というか、あそこに戻る気はしない
とは言っても、ここにいては水は無い
探すしかないか
一は起き上がり道を歩き出した
なんだ、めっちゃ歩きにくい、そしてすごい疲れる
まるで米俵を担ぎながら歩いているかのように感じる
自然と二足であるいてはみたが、これはキツイ
もういいや、熊らしく歩こう・・・
川を見つけて手で水を汲もうとしたけど無理だった
仕方がなく直接口をつけたが、飲みにくい
口の中を、ゆすぐ事はできたけど・・・
ん?
僅かに聞こえていた鈴の音がだんだんと近づいてくる
このままでは、どうしようもないし
現状もまったく理解できない、かといってこの姿のまま
山を下りたら・・やばいことになりそうだ。
一は色々と考え悩んだ結果
鈴の音色の方へと向かって行った、人であればとにかく話しかけてみようと
いた、40代位に見える男性二人だ
向こうもこちらに気が付いたようで声を出さずにそっと後ずさりしている
グガガッ
"待って"と言ったつもりなのに声になっていない
もう一度、一言一言ハッキリと話そうとしてみるが
グァ、ガァ、グァ、ガァ、グァ、ガァ
熊の声帯では言葉を理解していても、人の言葉は喋れないのか・・・
このままでは去ってしまう
そうだ!ならば敵意は無い事を示すんだ
両手を上げての降参のポーズだ
あ、だめだ・・一人が腰を抜かしてしまった。
もう一人が、自分のリュックをこちらに投げてきた・・
いや、別にものはいらないのだけど
はぁ・・俺は諦めが悪いんだ、もう一度話しかけてみる
ギィ、グィ、ゲェ、グゥ、ガァ、ガァ、ギィ
お、ちょっと喋れた気分だぞコレ
向こうも少し不思議そうな顔をしているし
よし、もう少し近くに行ったら何となくでも通じるかもしれない
一は降参のポーズのまま二足でゆっくりと近づいていく
リュックを投げた男は目を大きくして驚いた様子の後
懐から何かを取り出した
そして、それを俺の顔めがけて吹きかけた
うっ、目が痛い、よく見えない
俺はびっくりして思わず手を振り回していた
何かが手に当たった、感覚は軽く当たったという感じだった
「うわぁぁ~~~」
腰を抜かしていた男が叫び声が発した
服と顔には血が付いている
リュックを投げた男は、道の脇の方で倒れて、頭から血を流しピクピクしている。
俺がやったのか・・・
軽く手が当たっただけだぞ、力なんて入れてないぞ
なのに致命傷じゃないか、俺はその現状が怖くなった
また、俺はパニックになってその場所から逃げるように
4足で必死に走り去った。
たぶん一週間に一話ペースで書いていけたらなぁっておもってます。
読んで頂けた方ありがとうございます。