彼
しばらくすると、パトカーの音と共に真っ赤な外車が校門を通る。
真っ赤な車から、ジャージに金髪の30代後半のおじさんが出てくる、まぁ、牧野なのだが。牧野は長ったらしい前髪を払って、僕の元へ歩いてくる。ジャージのクセに何を格好つけているのか。
僕は、牧野の見えるであろう場所まで歩き寄った。
「柊希くんじゃあないか!で!死体ってのはどれのことかなぁ?」
金髪を夕日に光らせて話しかけてくる。周りにいた生徒達は不思議そうに僕を見ている。そりゃそうだろう。
「あっちだよ。」
牧野は、ふんふんと鼻を鳴らし、近づく。すると、数人のゴミが牧野を囲む。
「なぁにを怪しがってるのかな?俺は探偵だよ?ほら、先生たち、ちょっとどいてくれないかな。」
牧野は名刺をゴミに渡し、ゴミを押し退け南陽花の死体に寄る。
首が少し、遠くに落ちている。それを牧野は寄って見た。牧野は手袋をして、その顔のに触れ、南の口を開けた。
牧野は僕を呼びつける。周りからは注目を浴びる。迷惑だ。
「どうしたの?」
「見て、これ。紙が入ってる。しかも、顔も傷だらけだ。何で切られたんだろう。」
牧野は南の口から紙を取り出し広げる。
そこには所々、血で汚れていて読めないものの、メッセージらしき字が書いてある。
「なんだこれ。遺書?」
「西田愛様へ?誰だい。柊希くん。西田愛とは。」
「西田愛は愛じゃなくて愛って読むんだよ。」
「うわっDQNかよ。」
牧野はドン引きして、手紙の本文へ目を移す。確かにラブというのはどうなのだろうか。
西田は南と仲の良かった同級生のはずだ。同じく大人しい子で、何か不思議な人間だった。
「愛は…で…の…。ありがとう。全然血で読めねぇ。ちょっと、このDQNに話聞くか?」
牧野は手紙をクリアの袋に入れて立ち上がる。
警察は牧野に話しかける。
「牧野さんなんですね。お初にかかりますわ。いつも、お世話になっているようで。」
警察はニコニコとしながら牧野と目を合わせる。どうやら警察官の中では有名なようだ。
警察のひとりが僕を見て首を傾げる。
「そちらの坊ちゃんは?」
「俺の弟子。柊希って言うんだよ。そこそこやるから仲良くしてくれ。」
警察は、よろしくと一斉に僕を見る。恥ずかしい。警察のひとりが前に出て手を差し出す。
「巡査長の白金です。よろしく。」
「東柊希です。こちらこそよろしく。」
素直に手を取ると満足そうに白金は一歩足を引いた。