彼女
ー飛んだ。彼女は、屋上から飛び降りたのだ。けど、傷だらけだった。自殺じゃない。殺されたのだ。
アスファルトには赤いペンキの様な、トマトが潰されたようなモノがこびり付いている。
足や腕の関節はあらぬ方向に曲がって、首はどこかへ飛んでいってしまったようだ。
放課後の空は藍色に染まっている。こんな天気の良い日に、殺人なんて、犯人は全く何を考えているのか。
曲がりきった腕や足に、こんな切り傷を残して。周りからは悲鳴が聞こえる。うるさいものだ。
彼女の名前は南陽花。
彼女は、特に目立っていた訳では無い。何か人に恨みを持たれる人間でもない。少し、地味というのか、人と話すのが苦手だったというのか、大人しい子と言った方が印象は良い気がする。
さて、どうしようか、周りはうるさい。彼女のことを気にして見たことがなかったから。普段からどんな人なのかは分からない。
しばらくすると、たくさんのゴミのような教師が来る。何も出来ないくせに、生きがって、偉そうに。
ー皆!離れて!
ゴミの1人が大声を出す。いったい、ゴミに何ができるというのか。僕は無性に腹が立ってきた。さて、事件の始まりだし、彼に電話しなくてはならない。
「もしもし。」
スマホを片手に耳に当てる。周りがうるさいから、話すに、声が聞こえない。どこか、違うところへ行こう。
僕は足取り早く、庭園と古びた看板を掲げる、ビニールハウスの中へ入った。
「こちら、牧野探偵事務所〜。その声は、我が弟子の東柊希くんじゃないかな?」
「そうだよ。僕の学校、L高校で事件。飛び降り自殺。かと、思ったら、腕とか、色んなところ傷だらけ。殺人の可能性あるから、来てくんないかな。」
電話の中の彼はハスキーな声で唸っている。
「いいんだけどさぁ。学校でしょう?俺さぁ学校の先生苦手でさぁ。」
それには共感できる。僕も学校の教師と名ばかりのゴミが大嫌いだ。
「僕も嫌いだよ。でも、さ。いい感じの事件のにおいしないかな。」
彼は更に唸る。
「分かった。今から行くよ。」
彼は電話を切った。
さて、彼女には何があったのか。とても、ワクワクしてきた。探偵の弟子になって、まだ数ヶ月。どんなことがあるのか。