第十二話 幻想
「そういえばエルフとかやっぱり居るの?」
どことなく誤魔化すように白雪はクラウスに向き直った。
美月は半眼になりながらもクラウスに期待のこもった視線を送る。
ちなみに二人がある意味で誘拐されているのに、あっさりとクラウスの事を許したのは彼が所謂美形であったことと、異世界という浪漫があったのは確かだ。
二人の紅茶のお代わりを自然に注ぎ、彼は苦笑してみせた。
「貴方方が言うエルフと同じか分かりませんが居ますよ、そう呼ばれる民なら」
「「マジか」」
「深い森の山奥に住んでいまして」
「「テンプレ」」
「色が白くて美形が多くて」
「「ファンタジーキタ━!」」
「竜相手に素手と弓で挑む戦闘民族です」
「「……?」」
一瞬思考停止する美月と白雪。
「たまに竜の里長から訴状が届きます。『エルフ殿の妙薬を譲って欲しいと言ったら、闘えと言って襲い掛かって来ました。あいつらしつこいし、急ぎなので何とかして下さい』というのが最近の訴えです」
「!?、へ?」
「……妙薬?ていうか竜話せるの!?」
ガタイが良いから誤解されがちですが、繊細で真面目、人見知りな種族なんですよ、と丁寧に解説するクラウスに、竜という心踊る存在に対しての幻想が打ち砕かれる二人。
「現実って酷いのね」
「﨑ノ宮さん!?これ、一言で済ませていいのかなぁ??」
フッと哀愁ただよう笑みを浮かべ、遠い目をする白雪に呼びかけ、彼女はこれだけは譲れないと、穏やかに笑っている元凶に問いかけた。
「教えてください、エルフの胸は貧乳ですか?」
「私の会ったことのあるエルフは男性のみですが、嫁自慢で貧乳だと言っていましたので……」
「よし、許す!」
「キ○○ン先生万歳!」
興奮しきった彼女らに、全員かどうかは知りませんよという彼の言葉は届かなかった。
クラウスは苦笑して自らの魔法で連れて来てしまった彼女等を観察した。未曾有の事態にも冷静な二人だと思っていたが、自分が思っていたよりも幼いかもしれない。(精神年齢が)
彼女達の興奮はしばらく続きそうだと判断し、思考の海に入る。
召喚魔法。時と空間の属性を持つ者しか使えず、男爵家でしかない自分を魔法師長にさせてくれた魔法。呼び出すモノの条件を指定し、他属性を使える魔法陣の中に転移させることで完成される。
その条件に。
彼は確かに付け加えた。
「困りましたね……」
鬼才と呼ばれる身、既に帰還魔法は出来ることまではこの時間内に確定出来ている。
だから。
これの謎は解かなくてはならないのだろう。
「そろそろ来ますか、頼むしかありませんね」
己を唯一吹っ飛ばし、男爵家には過ぎた魔力量を笑い飛ばし、意地っ張りな苦労人。
自分が張った罠が力業でその瞬間破壊されたことを知り、そのタイミングの良さに苦笑を深めた。
しばらく投稿できません。リアルの事情です。
真に申し訳ありません。