第十一話 願い
忙しい。ある意味のデスマーチ!
と言う訳で遅くなりました。
「味噌汁を。味噌汁を毎晩飲ませて下さい」
迷って出てきたのはそんなこと。
脳裏に浮かんだのは二人の弟。いたずらっ子で優しい自慢の家族。
美月の両親は共働きで、あまり子供に感心がある方ではなかった。姉弟が『暖かな家族』に憧れるのは自然な流れだろう。
勿論あまりないだけで、愛情なく育ったわけではなかったのだが、他の子の当たり前が与えられないのはかなりキツイものだ。ただその劣等感は夜鷹高校に通いだしてから霧散したが。
美月は幼いころTVで見た家族番組を覚えている。
学校のこと、今日あったことを楽しそうに会話しながら味噌汁を飲む。その姿に憧れ、洋食メインの食卓を和食にチェンジし、幼稚園から帰って来た弟達の話を聞くようになった。ときたま早く帰って来る両親も笑顔が増えた。
家族らしい家族になれる魔法のスープ。
美月にとって味噌汁は米よりも大切なソウルフード(スープ?)なのだ。
白雪はそもそも味噌あるのかしら……と今更なことを呟いていたが、漬物も伝わっているのだ、あっても可笑しくはないと思う。
「えっと……どういうものですか?」
首を傾げるクラウス。あざといが可愛い。
「スープみたいなもので大豆から作られる味噌が溶かされています。野菜がたくさん入っていて体に優しいですよ」
「味噌あるかしら」
「……探してみます」
「そういえば、﨑ノ宮さんは何を願ったんですか?」
「この国最高の教育を受ける権利。人数分願ったから」
「……真面目ですねぇ。私考えもしませんでした」
「知識は武器よ。武術と悩んだけれど……」
妖精姫はリアリストだった。
美月はイメージとの違いに戸惑いつつも、尊敬の目を向ける。
「それにドラゴンとかいたら浪漫じゃない、妖精とかエルフとか。本で出てくるかも、教師として来るかも」
「私の感動と尊敬を返せ」