第十話 交渉
固唾を呑んで美月は二人を見つめる。
このせいぜい90分も経たない間たくさんのことがありすぎて今更ながらも彼女は混乱していた。
あの後。二人は椅子に座って淡々と現状の把握、半年の生活保証、不可能だった場合の対価などの話をしていた。(不可能だった場合その時に、それぞれが決めることになった)美月にとっては未知の領域、管轄外だったのでノータッチで甘味を食しておいた。
男子二人はまだ目覚めない。どうやら女と男の魂及び魔力の質が関係しているらしい。
この世に生まれて16年と3ヶ月。
まだまだ勉強が足りないと思う。
異世界はあるということ。
異世界でも甘いものは美味しいこと。
ありえない髪色でも美形は変わらないこと
『妖精姫』が、実はかなりの策士?だったこと。
クラウスも怒るのだということ。(後日あれは怒る内には入らないと訂正された)
今日学んだだけでもこんなにある。
そして今現在進行形で学んでいること。
ーー美形が腹を探りあう様子はかなり真面目に心臓に悪い。
終始笑顔で名乗り合うその姿はとても美麗だった。薔薇とか向日葵とかで飾れそうなほどに。
だがしかし、うふふ、あははと笑いあっている所は眼福だ。だがしかし。美月は空気を読む平凡なジョシコーセイ(棒)である。
後ろに渦巻く黒いオーラは気のせいではないと確信できる。
異世界に来てまで学びたくなかったな交渉術。
白雪は被害者、異世界人、か弱い??女の子の立場を存分に使って高待遇を引きずり出してみせ。
クラウスは原因不明、理路整然とした説明に実際の魔法具を見せて、白雪の中の常識が使えないことを証明してみせた。
これでも彼らにとっては前哨戦にもなりはしなかったらしい。半年間の生活保護によると美月もお嬢様の生活ができるらしい。
「願いを1つお願いいたします」
「あまり大きいのは王の許可が必要になりますが……」
美月は遠い目になりつつ紅茶をすする。
…妖精姫は何処へ?
今の頼りになる妖精姫も素敵だ。お姉様!と呼びたくなる。ただ……あまりに違うその姿に戸惑っているだけだ。
美形鑑賞をしていた内の一人、美少女でありファンクラブまである人物の以外な顔が完全に美月の思考回路を麻痺させていた。
15分の激闘後。
クラウスの罪悪感を上手くつき、白雪の無礼を最大限に使った交渉は1つの願いという形であらわれることになったそうな。
我関せず。それを聞き流し砂糖菓子を口に放り込む。
「私は暴言の責任を負い、それは必要ありませんが、美月さん、貴女はここに滞在する間何が必要かしら?」
「ふぇっ!?」飲もうとした紅茶が零れそうになってしまった。
「そうですね。こちらとしても知りたいところです」
いきなり言われても困る。
さっきまであんたら二人で盛り上がってたろーに……(注・あくまでもバトルです)
…あぁでも。
駄目かもしれないけれど。と前置きして。
あるモノを美月は口に出した。
美月は滅茶苦茶甘党です。