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第九話 第二グラウンド
白雪は息を呑んだ。
目の前の少年は何も変わったこともなく立っている。
その細く美しい声も、ピシリと伸ばされた背筋も何も変わらない。
なのに。何だ、この威圧感は。
思わず気圧された。彼が纏うのは殺気でも何でもないというのに。
違う。今までの奴らとは次元が違う、彼が誘拐犯である筈がない。
そうだとしても美月をみすみす逃す隙は与えないだろう。
なるほど、これは一筋縄では行かない。……美月が餌付けされていたのは交渉材料に覚えておくが。
「……失言をお許し下さいまし」
白雪は彼を見誤った。咄嗟にスイッチを切り替える。
……私もまだまだですね。
「こちらこそ。サキノミヤ家のご令嬢。私の話を聞いて下さりますか?」
「ええ、勿論」
「ではまず彼ら二人が何故気絶しているのかからお聞きしても?」
白雪のかんばせには既に『妖精姫』の微笑みが浮かんでいた。
ゴーンとゴングが鳴った。
……第二グラウンド、開始。
ちなみに。
美月はその間プルプル震えていた。
怖い、怖すぎる
ちょい短いかな?