第七話 渡り人?
「ふふふ」
「ははは」
黒いオーラが背中から漂ってくる。
美月は全力で聞かないことにしながらジャムと砂糖を紅茶に入れた。
いつもより格段にたくさん砂糖を入れる。角砂糖が一気に減った。
時は美月が言質を取られた後。およそ、三十分前に遡る。
♦♦♦
美月は開き直り美形鑑賞に勤しんでいた。
美しいものは正義である。
そして異世界。この美貌はなかなか拝めないレア中のレア、道歩いて一等の宝くじを拾う位ありえない。と美月は思う。
「なるほど。神隠しですか、もしかしたら渡り人となっていたのかもしれませんね」
首を傾げる。シュガードーナツを食べていた手を止める。
……渡り人?
何故か、故郷でのお伽話をしていたら、ファンタジーっぽい言葉出てきた〜(半目)
「世界の歪みに嵌ってしまった人達のことですよ。異世界からの客人とも呼ばれます」
「ふーん」
頭が良い人は、直ぐに思い当たる事に気づく。クラウスの仕事たる魔法師長は頭を使う仕事なのかもしれない。
というか世界の歪みって。世界は歪むものなのか。
「珍しいものや新しい知識を運んできてくれるので、かなり歓迎されるのです」
今までに伝わってきたのは、漬物とか水道とかパステルカラー技法などですね。とクラウスは指折り数えて一人頷く。
ジャンルがバラバラ過ぎる。クラウスの頭の中ってどうなってんだろう。
というか漬物って何でやねん。美月は脳内で力一杯関西弁で突っ込んだ。
ん?待てよ?漬物?ってことは
「じゃあ、に」
「美月さん伏せて!」
美月が質問しようとしたその時。可愛らしい声が響き、クラウスに向かって水が飛んでいった。
いやもう見事に距離が開きすぎて掛かっていないが。
「「…………!」」
「この誘拐犯!お菓子で釣ろうなんてなんて卑怯なの!!」
クラウスは未知の道具に。
美月は敬愛する麗しい少女の姿に驚愕した。
夜鷹高校の誇る高嶺の花、『園芸部の妖精』『妖精姫』が鬼もかくやという表情で某炭酸ジュースを持ち、仁王立ちしていた。
やっと一人きた。
うぅ、長かった……
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