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ケモノテスト  作者: ヤタ
1章 ケモノ達の学園
9/39

生徒会とケモノテスト

生徒会って結構キツイんすね……

 放課後、俗に言う帰りの会というものを終えてから僕達は体育館へと来ていた。やはり広いところの方が、壮大にやれるということで生徒会が押さえておいてくれたようだ。

 ここで僕達の運命を賭けた、壮絶な戦いの火蓋が切って落とされることになる。

 そう、それはいいのだ、それは。


「なんか…………イメージしてたのと違う」


 僕の呟きに関係はないだろうが、それを皮切りに体育館、もとい会場がワッと盛り上がる。それも当然だろう。今この場には、先生を含めて何百という生徒が集まっているのだから。


「おい、あれが今回の騒ぎの中心か。なんていうか、とことん非凡な面子だな!」


「1、2、3、4……おい一人足んないぞ。俺は5対5の勝負って聞いたんだけど」


 観客は、一周囲う2階で僕らを見下ろしている。体育館に対して2階という表現はややズレている気もするが。

 遠目で見ているせいか、悠太の存在に気が付いていない者までいる。というか近くでも見失うのだから、これは遠近両用のステルスか。なんと便利なんだろう、いらないけど。


 するとそこで、一瞬スピーカーの方からプツリと音がする。何かと思うと。


「さあ! よってらっしゃいみてらっしゃい! 生徒会と馬鹿達によりケモノテストの開始だよ! この勝負、司会はわたくし、野々(のの) 乃々花(ののか)がお送りします! え? そろそろ名前が適当になってきたって? ノープログレム! この作品キラキラネームが多いことは作者が1番よく分かってます! だから私の名前はむしろこの中では妥当な方なのです!」


 スピーカーから大音量で声が流れ出た。いや、これは出力の問題より声の大きさが問題かもしれないが。

 そして作者って何のことだろう。なんだかメから始まってタで終わる2文字の言葉に感じるけど、残念ながらここは現実だ。空から女の子は降ってこないはず。


「そして実況は、『めんどくさがりなら負けないぞ! 生徒に自由と適当と奔放を!』東野先生! 」


 なんだその売り文句みたいなのは。それ要約すると唯のダメ人間じゃないか。


「あー、何故俺がこんなことに……だいたい副校長があんなに……」


「おーっと! 愚痴が始まると学校の闇を聞きそうだからここら辺で止めておくぞ?」


 恐らく、この前の職員室での騒ぎのペナルティかなんかだろう。この事態を収めろとかなんとか言われたに違いない。


「あ、あれは!?」


 観客の内誰かが奇声を上げて指をさしたその瞬間、体育館のドアが勢いよく開けられた。逆光で白く染まる中、5人の生徒のシルエットが見えてくる。


「来たぞ来たぞ来たぞー! 今回の主役の登場だー! 我が校のエリート軍団(一部)である生徒会執行部だー!」


 野々さんが大声で叫ぶと、シルエットが段々明らかになっていく。なんでもいいけど隣の東野先生が五月蝿そうに顔をしかめている。


「あらあら、なんだかやけに賑わしくなっているわね。またあなたたちが何かやったのかしら?」


 長い黒髪を後ろに伸ばし、切り長の目が凛々しさを引き立てている。佐々木さんだ。


「まずはこの方! なんというても我が校の2学年主席の佐々木 奈々会長! それに、歴代の主席と比較しても類を見ない天才だとか。東野先生、彼女をどう見ますか?」


「あー、俺の生徒に欲しい」


「はい! 実現不可能な夢ありがとうございます!」


 東野先生には大事な僕たちがいるじやないかっ……となんだか睨まれたような気がした。気をつけよう。


「会長、これは彼らのやったことじゃないですよ。……全く、どこから情報が漏れたのやら……彼が可哀想じゃないか(ボソッ)」


 続いて現れたのはメガネを掛けたクールな感じの男子生徒だ。身長はスラッと伸びていて、女子生徒にとても人気がありそうだ。しかし不思議と悪感情が芽生えない。

 確か、生徒会室で僕らに助け舟を出してくれた人だ。


「次はこの方! 2学年次席の鳥井(とりい) 和利(かずとし)くん! そしてなんて佐々木さんの右腕、副会長を務めているそうです! 1位が会長、2位が副会長なんて、この学園はどんだけテンプレ踏めば気が済むんでしょうか、ねえ東野先生?」


「ん、ああ。本当どっかの馬鹿とかに見習わせたいな。俺の仕事とか代わりにやってくれそうだし」


「宮のことね」

「宮のことだな」

「宮以外にない」


「みんななんで馬鹿って言葉だけで判断するかな!? なんかすごいみんなに見られてる気がするし!」


 雲母、隼人、悠太の順に僕と決定付けられていく。会場の観客までもがなんか僕をじーっと見ている。違うのは苦笑した結城さんぐらいだろうか。


「こほん、東野先生。生徒の悪口とは聞き捨てなりませんな?」


「んげ、副校長先生……今のは愛称とかそういう……」


 東野先生が副校長に問い詰められている。

 ふんっ、そのまま解雇されてしまえばいいさ。


 そんな調子で残り3人の自己紹介も流れていく、が僕は弁明に必死こいていて正直あまり聞いていない。


「続きまして、対戦者の紹介だ! まずはこの人、東野先生の実の弟にして、頭がよく回る策士! 顔はちょっと怖いけど……(ボソ) 今回の戦いも画策したのは彼だと噂されているぞ! 東野 隼人さん! 顔はちょっと怖いけど……(ボソ)」


「っておい! なんで俺がアニキの弟だってバレてんだよ!?」


 そして残念なことに、誰もへーそうなんだという反応がない。みんな薄々気づいていたようだ。


「あと司会! 顔は怖いけどって聞こえてるからな! これは生まれつきなんだからしゃあねえだろ!」


 会場の(主に女子)から小さな悲鳴が聞こえる。威圧的な鋭い目つきはどうしようもないと思う。


「はい、では改めまして次は、あれ? どこにもいない」


「ここにいる」


「ってうわ!? いつの間に側にいたんですか、気がつかなかった……えーっと、佐伯 悠太くんです! 情報によると、彼は影がとても薄いとのこと。あ、わたくし新聞部なのですが、部員も全く見つけられなかったためこれしか情報がありません!」


 相変わらずの影の薄さ。司会が喋り終わった直後に、会場から意識されなくなった。

 恐らくケモノテストするときに、誰だっけこいつ? となるに違いない。


「はい! 次は皆さんご存知、柊 雲母さんです! んー見てるだけで眩しい……キラキラ輝いてます! 名前とピッタリの容姿端麗、可愛すぎます。でもこの名前普通苗字じゃないですかね?」


「あはは、あの司会お世辞が上手ね。全く、ハードルが上がっちゃうじゃない」


 自覚がないにしても結構嬉しそうな雲母。ハードル上がっちゃうのはまだ発表されてない僕の方だ畜生。ついさっき人としての認識具合に疑問を持ったばかりだし。


「これは男子生徒諸君、盛り上がってるんじゃないでしょうか!」


 おおー! という(主に野太い)声が会場に木霊する。まあ気持ちは分からないでもない、僕も幼馴染じゃなかったら叫んでたところだ。


「そして今回の原因となったこの男! 富田先生のお世話になったこと数知れず! 何故か不良以上に問題行動の多い王充学園きってのお馬鹿さん! 迦具土 宮くん!!」


 と、その瞬間会場がシンっと静まり返った。

 中には「そんな奴いたっけ?」とか「うーん? 初めて見る顔よね」と呟く生徒もいる。これはもう笑われるより辛い仕打ちだ。


「えーっと……迦具土くん、元気出してくださいね!」


「その言葉がトドメだって分かっててやってるよね!?」


 辛い……空気が辛い。

 会場の雰囲気が氷点下に落ちたとき、またもスピーカーからザザとノイズが走る。


「これで紹介は終わ……え? まだ終わってないの?」


 そういえば5人って言われてたな、と野々さんが呟き、会場が先程と打って変わって騒めく。


「えーっと、最後はこの方……結城 月さん! なんと昨日転校してきたばかりだそうです! あんまり情報はな……って何あの子可愛い!?」


 と、もはや司会の務めを忘れて前のめりになる野々さん。その絶叫に誘われてか、会場に(主に野太い)声が響き渡る。

 しかしまあその気持ちも分かる。なんせ我が校で一番と呼び声高い雲母と同じくらいの美少女なのだ。ほんらりした雰囲気と優しい性格もこれまた見事にマッチしている。


「いや……あの、そんなことないです」


 結城さんは恐縮そうに身を縮めて、できるだけ視線から逃れようと僕の背に隠れる。

 とても嬉しい状況だけど、会場中から妬みと殺気を向けられているため素直に喜べない。というか喜んだら殺される気がする。


「これでやっと本当に紹介が終わりましたね。ぶっちゃけいらなかったんじゃないかと思っちゃいますが、東野先生どう思います?」


「あー、確かにいらんかったな。これからの人生において必要なこと不必要なことしっかり区別しないとだな、効率が悪くなっていざというときに時間も何もかもが足りなくなり……」


「つまり?」


「めんどくせえからさっさとやって帰らせろちくしょう」


「はい! 先生とは思えないほど、清々しいめんどくさい発言ありがとうございます!!」


 副校長先生がまた睨んでいたような気がする。東野先生も学習しないなあ。


「では改めてルールを説明します!5人対5人の一騎打ちです!先に3勝した方が勝利となります!それぞれ賭けたものは放課後の自由とこれからの雑務です! では1回戦、両者前へどうぞ」


「やっと始まったわね。まずはかるーく1勝してくるから待ってなさい」


 我がチームの先方は雲母だ。容姿端麗な外見からは想像できないほど男前に出て行った。なるほどこれが残念系というやつか。


 村人A「こっちはまず僕からです。召喚!」


 村人って……ここ学校だよね?

 この際呼び名がないため村人くんと呼ぶが、彼の召喚の宣言より会場の一点が光り輝く。そのエフェクトは徐々に大きくなり、僕らが見上げるほどとなる。いや……大きすぎない?

 そして段々光が和らいできて、そのケモノが姿を現わす。そこに立っていたのは


「ぬ、ぬりかべ!? なんじゃそりゃ!」


 そこには、知名度の高い妖怪の内の一体であるぬりかべがいた。土とも岩とも違う、コンクリートのような質感で色は淀んだ灰色をしている。見上げるほどというのも納得で、その全長は4、5メートルにも及ぶ。

 僕がそんなはちゃめちゃなケモノに口を開けていると


「あら、バケモノ(・・・)だって立派なケモノよ? 全てがあなたの白ネズミのように獣という訳ではないのよ」


 横から佐々木会長は涼しげな顔をして言った。それは要するになんでもあり、ということであるらしい。

 しかし、バケモノと言われても、長方形の薄いハンペンのようなものが2本足で直立しているのだ。恐怖よりシュールさの方が勝ってしまう。


「おーっと村人選手、ここは規格外のバケモノを出してきた。どうやって攻撃するのか見ものだー! 倒れるのか? やっぱり倒れるのかー!?」


 ついに公式で名前が村人くんに決定。

 会場の雰囲気を掴まれたが、ここは雲母も負けていられない。どーんと派手なケモノを……ん、そういえば何気にみんなのケモノ見るのは初めてだな。

 雲母はいったいどんなケモノだろう。


「召喚!!」


 と、何が出るか思考に耽っていたところへ雲母の声が飛び込む。先程よりも白い輝きが灯り、淀んだぬりかべも心なしか洗われている気がする。

 エフェクトが晴れて現れたのは、ユキと似た色の純白の毛、しかし耳が異様に長い。


「う、うさぎだー!なんと雲母選手うさぎを使ってきたぞ!これは戦えるのか!?」


 そこに現れたのは、キョトンという顔をした1匹のウサギだった。凶暴性も強さも何もかんじない、ただのウサギだ。


「うーちゃんを舐めないでよね!いくのよ!」


 いや、正直なめる以外の反応を僕は出来ない。このシチュエーション、練習してもリアクションを習得出来そうにない。


「ふ、そんな愛くるしいうさぎでぼくのぬりかべには勝てない。そして君も僕のこの強さに晴れるといい」


 自意識過剰な村人は、自前らしい長めの前髪をサッとただ払う。その動作に会場中の男たちが野次を投げる。そのほとんどが、黙れこの自意識過剰村人が! である。ちなみに、たまに引っ込めクソ前髪! というのもある。


「村人くん……生徒会の評判を悪くするなら後でお仕置きを……」


「か、会長は僕の名前知ってますよね!…… い、いえなんでもありませんからお仕置きだけは勘弁をっ!!」


 佐々木さんがギロリと睨むと、自意識過剰クソ前髪村人は恐怖に顔を青くする。なんというか、佐々木さんの独裁っぷりが垣間見えて、ちょっと可哀想になる。


「く、くそ! いけ、ぬりかべ!!」


 涙目の自意識過剰クソ前髪村人は、自暴自棄になって指示をする。


「おおっと! 先に動いた……というか雲母さんの方は呆気にとられて動けなかった感じですけど、まあとにかくぬりかべが攻撃を仕掛けましたあ!!」


 ぬりかべはゆっくりした動きで近づくと、ウサギに向けて倒れこむ。サイズがサイズなため遅くとも範囲が広く、攻撃力に関しては言うまでもない。


「うーちゃん! 避けて!!」


 雲母が叫ぶと、うーちゃんと呼ばれたウサギは間一髪で避ける。側数ミリを境に埃が舞い、ドシンと大きな音が体育館を振動させた。頭の上でユキがビクついている。


「オレ、あれやられたら絶対死ぬ」


「ユキじゃなくたって大抵は圧死するよ……あんなの受けて大丈夫なの像ぐらいじゃない?」


 2人して地震のような振れにフラフラしていると、そんなに長くは続かないようで徐々に収まっていった。


「なんちゅう重さ……というかよく体育館潰れないね」


「まあケモノテスト用にかなり頑丈に作られてるからな。燃えない崩れない劣化しないが売りらしいぞ。噂じゃ空爆があってもここだけ無事なんていうのもある」


 隼人が腕を組みながら解説をすると、横から佐々木会長が付け加えをする。


「ふふ、核に耐えられるなんてホラも出るくらい頑丈なのよ。なんならライターで炙ってみる?」


「会長がなんてことするんだ!?」


 冗談よ、と真顔で言われても説得力がない。


「今よ、うーちゃん! パンチ連打!」


 と立ち上がるまでの反動の隙を逃さずうーちゃんはパンチを連続で放つ、が


「全然効かないね……」


 ぬりかべは見た目通り頑丈なのか、体力が全然減らない。表示されたHPの減り具合も雀の涙ほどだ。


「ふはは、そんなちゃちな攻撃で我が鉄壁を破れるとでも?」


 村人くんは、フレミングの法則のようにした手で顔を覆ってポーズを決める。クソ野郎といい自意識過剰といい中二病といい、モブキャラのくせに個性がありすぎる。少し悠太に分けてあげてほしいぐらいだ。


「じゃあこれならどうかしら? うーちゃん!!」


「おおっと!うさぎが飛びついた!ぬりかべはどうする!?」


 どうやってか完全に立ち上がったぬりかべに、うーちゃんは可愛らしい瞳を瞬かせ飛びつく。ぬりかべはうーちゃんの突然の行動に一瞬停止すると


「む、むをおぉぉ!!」


 灰色の体の目の付いている辺りを紅くして、短い手をバタつかせて叫んだ。


「デレている! まさかのデレている!? おおっとしかし手が短いせいで抱きしめられないようだ!! ショックを受けているぞ! そして崩れていったあああ! どうやら精神崩壊のようだ! ダメージはでかい!」


 …………なんだこれ?

 意味も分からず呆然としているとHPが半分まで落ちた。システムが精神ダメージまで計算するとは思えないが、ならばなんだろう。


「今の……飛びつき、そうかそういうことか……」


 近くで隼人がぶつくさ言っているが、上手く聞き取れなかった。


「この勝負、とりあえずもらったな」


「あら、随分とお仲間さんに信用があるのね」


 自信気に勝利を確信する隼人に、佐々木さんが茶々を入れる。当然だ、と隼人が返すと佐々木さんは微笑ましそうに見つめた。


「逆にあんたはあいつに期待してないのか?」


「それは当然……とう、ぜん……たぶんきっとね」


 そこは確信を持ってあげて! ほら、なんだかチラチラ悲しい目で見てくるよ? こう捨てられかけの子犬みたいな目で……


「そういえばHP以外のステータスが表示されないね。故障かな?」


 と、ちょうどそのタイミングで東野先生が解説に入る。もうはかったんじゃないかってくらいのタイミングで。


「あー、言い忘れてたが今ステータス表示が壊れててな。1番大事なHPだけは速攻で直したんだが、もうちょい掛かるんでまっててくれ」


 会場が小さく騒めくが、きっとほとんどの生徒はこう思っていることだろう。どうせ生徒会の方が点数は高い、と。それも当然だ、なんせ僕らは9クラス。この学校の落ちこぼれが集まるところである。


「ぬりかべ、突進だ!」


 ちょうど着地の瞬間を狙われたため、遅い動きながらも突進が当たってしまう。ダンプカーのようなその重厚な衝突に、うーちゃんは吹っ飛び会場中はやっぱりなとため息を吐く。

 誰だって思っている、僕らじゃ生徒会には勝てないと。今だってこの一撃で勝負が決まったと、


「思ってるんだろうなあ、これが」


 隼人が含み笑いをすると、その呟きに答えたように俯いていた雲母が


「あーもう! 負けたかと思ったじゃない!」


 強気の見える顔で正面を向いた。うーちゃんがその声に合わせて飛び起きる。

 会場はどよめき、中にはたまたま掠ったんだよ、と言う生徒もいるが、残念ながらそうじゃない。


「おっと、表示機能が回復したようだ。みんな上を見てみろ」


「「「!!?」」」


 東野先生の気だるげな解説に、生徒たちが上を向いて絶句する。それもそのはず。


【村人 合計点数258点、レベル4 攻撃92 防御98 素早さ68】


【柊 雲母 合計点数286点、レベル5 攻撃79 防御87 素早さ120】


「は、はあ!? なんで素早さが100点越えなんだよ、いやそもそもなんで9クラスの人間がこんな高得点!?」


 村人の絶叫が会場のどよめきを誘う。周りにも、不可解なことが起きていると動揺が伝播する。

 当然の反応だ。何故なら今回の課題テストは上限が100点の物。いくら天才だって120パーセントの点数は取れない筈。


「あら、あなたたち、もしかしてケモノテスト慣れっこなのかしら?」


 佐々木さんだけが僕たちの考えに気づいて聞いてくるが、そのクールな顔つきは崩れそうにない。


「残念ながら慣れてはないな。あんたの考えは大体合ってるけど、雲母のあれは唯の人徳だ。それにしても、いいのか? あのままじゃ負けちまうぜ」


「あら、そうかしら? 私には時間もなければステータスを賭けられるような相手も少なかったと思うけど。はたしてあなたたち全員があそこまでの点数を持っているかしらね」


 うっ、全部お見通しだ。確かに残念ながら、多くてもクラスメイト分しか集められていない。それも雲母に極振り状態だ。だからこそ僕たちは、東野先生への説得だったり敵情視察に回った。


「狼狽えるな、俺に任せとけ」


 悪友がそんな風に言うのだ。ならばドシっと構えておこう。

 しかし油断は出来ない。うーちゃんのHPは今ので半分を下回った。同じものを喰らえば次は保たないだろう。同じものを喰らえば、だが。


「これならどう? うーちゃん、跳ねるのよ」


 素早さ120点分、それにウサギの元々の身体能力が加われば『跳ねる』という言葉はその意味だけで留まらない。つまり


「は、はやっ!? ぬりかべ狼狽えるな、まずはしっかり見定めてっ……」


 残念ながらぬりかべの素早さでは、絶対にうーちゃんに攻撃を当てられない。そして向こうの攻撃が空振りに終わると引き換えに、こちらはごく僅かでも攻撃を当てていく。


「く、あたらないっ……しっかり狙うんだぬりかべ!!」


「そのくらいじゃ絶対にあたらない、うーちゃんのスピードには勝てないわっ!!」


 そしてじわじわHPは削られていく。ときにパンチ、ときにキック、耳を鞭のようにしならせるなんてこともする。

 いよいよHPが4分の1を過ぎたところで、雲母が指を指す。


「これで最後っ!! うーちゃんいっけえぇぇ!!」


 なけなしの突進を済んでのところで回避。


「く、くそ、どこに行った!?」


「上よ!!」


 村人は雲母の声に反応して上を見上げるが、照明の光に目を細めてしまった。そしてそれが絶対のチャンスとなる。

 うーちゃんは回転しながら落下し、ぬりかべの頭に向けて踵落としを決める。反動のことも考えずに放った一撃は、それだけでぬりかべのHPをゼロにした。

 つまり


「雲母さんの勝ちだああぁぁ!!!」


 司会の野々さんもこの結果は意外だったらしく、その興奮した叫びに感化されたのか、それとも自らの意思なのか、会場全体が叫びで埋め尽くされた。


「お疲れ、雲母」


「まあ、私にかかればこんなもんよっ」


 片目を瞑って微笑んだ雲母とハイタッチし、パンっという景気のいい音が騒がしい体育館に響いていった。

どんどん投稿が遅くなってる!

しかも短い……

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