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ケモノテスト  作者: ヤタ
1章 ケモノ達の学園
7/39

ポイントの横領

 僕と隼人、ユキは自分達の教室に戻るため廊下を歩いていた。しかし、その足取りは重く、会話のトーンも暗いままだ。


「隼人、さっきの話をどう思う?」


「罠……ってことはないだろうな。多分本当の事だろう」


「そっかあ……」


「なあ…………」


 僕が曖昧に返事をしているとユキが話しかけてきた。

 隼人は取り合わないようなので僕も無視をする。


「そういえば隼人は点数どのくらい上がったのさ」


「まあ今んとこ倍くらいだな。んでお前の点数の倍分はあると思う」


「そっかあ……」


「なあおい…………」


 ユキがしつこく話しかけてくる。その目は何かを言いたげだが隼人は無視を続けた。僕も返事をする気はない。


「それで今後のことなんだけど……」


「チャイム鳴ったんだから急げよっ!!」


「「えぇ〜…………」」


 僕らは遂に反応してしまった。

 だってさ、ギリギリ間に合うなら急ぐ気にもなるけど、もう遅刻だって思うとねえ……


「どうせ間に合わないんだし」


「このダメ人間!!」


 ユキが耳元で叫ぶため耳の奥がキーンとなった。

 隼人もうるさそうに手を顔の前でブンブンしている。


「オレは蝿か!!」


 またも耳の奥が痛む。どうせ叫ぶなら頭の上で叫んでほしい。


「まあいいじゃないか。ほら教室が見えてきたぞ」


 水道すらない殺風景な廊下を歩くと、僕らの教室2-9が見えてきた。それでも僕らには急ぐ気はない。何故ならそれは……


「あの兄貴だからなあ」


 隼人も同じことを考えていたらしく、隣で僕の言おうとしていた事に被せてくる。

 でもまあその気持ちはすごく分かる。なんせ僕らの担任である東野先生は、三度の飯より楽が好きな超面倒くさがりなのだ。結局、先程のテスト破りもお咎めなしだ。


「だよねえ、あの東野先生だからねえ。多分僕らがいない事にすら気付いてないよ」


 そうやって談笑する僕と隼人。ユキも何故か否定できないらしく、まあいっかという感じである。

 そんなふわふわした雰囲気で教室の扉を開ける。


「ほお、貴様ら。誰が貴様らがいない事に気付いてないだって?」


 その瞬間、ふわふわした雰囲気は一転、地獄へと化したのだった。


 ー


「うぅ、ひどい目にあったよ」


 肩を回すとボキバキとなっちゃいけない音がなった。


「いっつつ……本当だ畜生。なんで俺らばっかりこんな目に……」


 隼人も胡座をかいて痺れと格闘している。悠太がちょんっと触れるたびに、あぎぃと情けない声をあげている。


「そんなのあんた達が遅れてくるのが悪いんでしょうが」


「それはそうかもしれなあぎぃ!?」


 今度は僕が標的となったようだ。気配もなしに突然来るのだから質が悪い。


「でもまさか臨時で富田の野郎が授業を受け持つとか考えないだろ」


 悠々と授業を遅れてきた僕たちを待っていたのは、何処の学校にも一人はいる(だろう)鬼の教師、富田先生であった。


「ほらみろご主人、オレの言う事を素直に聞いていればだなあ」


「む、ユキだって最後はまあいったみたいになってたじゃないか」


「知らないなあ」


 ユキが、肩から顔を肘で突いてくる。なんだかとてもイライラする。


「あはは……お二人とも大丈夫ですか?」


 唯一心配してくれる結城さんも、なんとも言えない顔をしている。こう、困った子供を見る保母さんみたいな。


「大丈夫じゃねえよ……なんたって正座なんだよ」


「本当にね、暴力で訴えられない良いラインを突いてくるよ」


 僕たちは見つかった後全力で身を守ったが、暴力らしい暴力はなかった。なんだただの説教かあなんて安心していると、富田先生はにっこり……そこで水入れたバケツ持って正座してろ、三つだ。


「三つって、しかもオマケに足固定の腕固定……ある意味拷問だぞ」


「僕は30分辺りから足と腕の感覚が無くなってたよ」


 案外、細くとも動くことは重要なようだ。身体が鈍るとはよく言ったものである。


「ほらそんなことより、強化しなくて良いのかしら?」


 雲母が言い聞かせるように言ってくる。体験した事のない人には分からないだろう、この苦痛が。


「でもそうだね、もうあんまり時間も残されていないんだ。早く上げないと」


「ああ、今回は(・・・)本当に負けられなくなっちまったからな」


「今回は、ですか?」


「ん、それはまた後で話すとするかな」


 隼人のセリフに結城さんは気になる様子だけど、正直今は時間がないためこっちを優先してもらおう。


「じゃあ行こうかユキ」


 床にいたユキが頭の上まで駆け上がってくる。


「ご主人、次は誰を狙うんだ?」


「そうだねえ、さっきより強くなったんだしもうちょっと点数の高そうな人を」


「いや、たぶん点数低いやつを倒した方がいいだろうな」


「なんでさ隼人」


「時間を掛けてリスクを負うより数やってリスクを減らした方がいいだろ……そうだなあ、あのリーゼントが良いと思うぞ」


 そう言われてみると確かにそうかもしれない。

 しかし、リーゼントに関しては大丈夫なのだろうか。


「そんな疑うような目で俺を見るな。大丈夫だ、俺も話した事あるから」


 ふむ、隼人が話せるのなら大丈夫なのかもしれない。


「分かった、じゃあいってみるよ」


 僕とユキは、机の上に足を乗せて黒板を睨んでいるリーゼント君へと赴いた。


「あの、リーゼントく……」


「ぁああ゛!?」


 本当に大丈夫なのだろうか。


「えーと……突然だけどケモノテストって知ってる?」


「俺とタイマン張りたいってか!? 上等だこらぁ!!」


 話が噛み合わないっ!!?


「えーとあの、まあある意味タイマンなんだけど……」


「ああ゛!? てめえなめてんのかぁ? ぶっ飛ばすぞ!!」


「………………ごめんもういいや」


 正直もう会話を諦めた。

 だって日本語が伝わらないのだから。


「本当に話した事あるの?」


 隼人はさも当然だといった顔をして言った。


「勿論だ。話した事はあるぞ、会話は成り立たなかったがな」


 思わずですよねーと呟いてしまう。

 不良ってそんなに分からないものなのだろうか。

 いや、多分リーゼント君が特別なんだ。特別弱いんだ…………頭が。


「まあリーゼントだからなあ」


「なんかリーゼントのせいみたいになってるよ」


 なんて話をして遠い目をしていると、頭の上のユキがソプラノの声で話しかけてきた。


「なあご主人たちいいのか? 点数上げ…………というか段々飽きてきてるだろ」


「「ぎくっ」」


「……………………はぁ」


 だって作業ゲームをしている気分にさせられるのだ。ほら、頑張ってゲーム内のお金を稼いでいて、あれ? なんで自分はこんなことしてるんだろう。現実で使えるわけでもないのに……ってなるのと一緒だ。


「まあいいけどなー、どうせオレには関係ないんだし。補習とか知らないしー」


「なんか、勉強しない子供に自発的に宿題させるための親の策略みたいになってるよ。あの、お母さん知らないからねーみたいな」


 ユキはその白い毛並みを繕うように僕の話を無視した。隼人もまた、僕の言葉にかぶしてくる。


「というかチビに全く関係ない話でもねえけどな」


「へ? なんで??」


 ユキは意味が分からなそうに首を傾ける。


「なぜもなにも……補習になったら勿論帰りは遅くなる」


「いや、それくらいは別にそこら辺ぶらぶらしてるからいいぞ?」


 確かに、別にユキは飼い主が大好きなワンコロではないのだ。むしろ思春期の娘のように外で遊びまくるに決まってる。いや、別に思春期の息子もありえるだろうし、そもそも反抗期になるかも分からないのだが。


「そうじゃない、帰りが遅くなるのは宮の事だ」


「そりゃあまあ必然的にそうなるよね」


 隼人は結局何を言いたいのだろうか。


「ったく……理解力に乏しい奴らだな……つまり、宮の帰りが遅くなるイコール飯遅くなるオーケー?」


「「あ…………」」


 なるほど、そこに落ち着く訳か。それならユキにも関係はある。

 僕は一人暮らしなのだ、帰りが遅くなればご飯も遅いなる。先に帰っても意味がない。


「む、確かにそれは困る」


 ユキもその事は考えていなかったのか、少々困ったように眉根を寄せた。すると突然、何かを思い浮かんだ……いや、大事な事に気付いたようにバッ! と顔を上げた。


「てか!! だったら点数上げ頑張れよ!!」


 ごもっともである。

 その後ユキによって強制的に働かされた僕達の点数はどんどん上昇した。ついでに、急だが、百姓を強制労働させたお殿様は基本どうなるか。答えは謀反を起こされて泣きに入るだが……この後ユキがどうなったかは語るまでもない。


 ー


『キーンコーンカーンコーン』


 毎度毎度、よく飽きもしないなと思う程当たり障りのないチャイムの音が、終業の知らせをする。


「いっその事有名なポップスにしたらみんなも喜ぶんじゃ?」


「そんなの聞いて誰がわーいってなるのよ」


 雲母がジト目で僕のことを見てくる。

 その顔には、また馬鹿な事をと分かりやすく書いてあった。


「いやほら、そして〜か〜なら〜ずってなったらみんなもウルトラソ○ル! って感じで終わった感でるんじゃない?」


「ヘイ! の後に起立、気をつけ、礼ってするのよ? シュール以外の何物でもないじゃない」


 なんかそんな気がしてきた。


「ほら、そんな事よりお昼にしましょうよ」


 あ、そういえば今は昼休みだっけ。

 雲母の可愛らしいお弁当包みにも納得だ。


「今日は僕もお弁当だよ」


 僕もまた鞄の中から弁当包みを取り出す。流石に雲母と同じサイズとは言わないが、少し小さめである。


「おいおい、そんなんで足りるのか?」


 隼人が横から、僕の弁当箱を覗いて冷やかす。

 ちなみに、隼人もまた珍しく持参であるらしく、大きめの包みを持っている。しかし、中身はお米ではなさそうだ。サンドウィッチか何かだろう。


「んー、確かに物足りないけど今月はピンチだからねえ。どっかの誰かさんのせいで」


 僕のため息交じりの声に、隼人も雲母も訳が分からないと頭にハテナマークを出している。

 事情を知っているユキは僕と同様にため息を、何となく察した結城さんはあははと苦笑していた。


「ご主人、オレの飯は?」


 お腹が空いたらしいユキはさっさと寄越せと服を引っ張る。


「はいこれ」


「ひまわりの種じゃん!! ハムちゃんずか!!」


 だってこれなら校庭に生えてるのから取ってこれるからタダなんだ。まあ収穫したのは去年の夏終わりだけど。


「じゃあ代わりにこのあーー」


「あさがおの種とかじゃないよな?」


「…………………………」


「ちょっとまてご主人、何故無言で取り出した物をしまおうとするんだ!!? 本当にあさがおの種だったの! ねえ!?」


 げふんげふん、別にちょっとチョコチップみたいだなあってな感覚で拾っただけだし。


「しょうがないなあ、僕の分を少し分けてあげるよ」


「しょうがないって…………捕縛された捕虜だってまだマシなご飯でだよ」


 衣食住揃ってて勉強も仕事もしないニートネズミが何を言うか。


「働かざるもの食うべからし! つまりユキに()権はない!!」


「………………いらないよ!! ちょっと今騙されかけたよ!!」


 ガミガミと叫び散らかすユキをどうどうと宥める。どうでもいいけど、お肉を多めに取り分けたら機嫌が直るってどうなんだろう。


「んで悠太はまたもそんなに多いのか」


「あ、いたんだ」


「…………(コク)」


 影のとことん薄い悠太は、大量のパンを抱え込んでいた。

 よくもこんなに食べて太らないな。むしろ一般的に見たら細いし。


「あ、よく見たら菓子パンばかりですね」


「む、本当だ。羨ましい」


 結城さんはよく周りを見ているようで、悠太の好みをずばり当てた。正直なところ僕は気付かなかった。あ……いや決して認識してなかった訳ではないんだよ? 友達だし…………

 ついでにユキも負けじ劣らずの食い意地で、ヨダレを垂らしかねん程菓子パンを凝視している。


「これはあげない」


 悠太は一欠片も渡す気はないようで、パンを潰しかねない程強く抱え直した。でもそのクリームパンは気をつけた方がいいんじゃないかな。


「ほら、さっさと食っちまえ宮。時は飯なり、そんなに時間はないと思え」


「どうしたのさそんなせっせかして。もうこの後もポイント狩りだけでしょ?」


 そう聞くと、隼人は食べ進めていた箸を止めた。


「いや、さっきの休み時間でまとまった点数は稼げたからな。今からは少し兄貴に話を聞きに行こうと思ってる」


「それって、さっきAIが言ってた話のこと?」


 隼人は黙って頷く。

 ユキはさして興味もないのかご飯を貪り食ってるが、雲母と結城さんはなんの話だか分からないような顔をして…………あれ?


「そういえばあの話を聞いてる時悠太はどうしてたの? 一緒に行ったけど帰りはいなかったよね」


「ご主人……ずっと側にいたぞ」


「え、いや! だって正座させられてたの僕と隼人だけじゃん!!」


「………………」


「ちょっとねえ待ってよ、なんで悠太今顔を逸らしたのさ。まさかあの時それすらも気付かれて……」


 可哀想だっていう気持ちとこんな羨ましいという気持ちが交差したの初めてだ。


「ねえちょっと待ちなさいよ。さっきからあの話だのAIだの全く見えないわ」


 雲母は困惑したように箸を置いた。


「あ、えっとね、生徒会が補習で先生と陰謀が……」


「えー宮は日本語が苦手なため俺が代わりに説明する」


 日本語が苦手ってそれもう日本人の日常会話が成り立たないじゃないか。


「まずは今の状況をふりかえる」


 隼人が分かりやすいように、紙を広げてペンで図を書いていく。


「えーと、私は迦具土くんの成績がその……芳しくないということでお友達をも巻き込んで補習をさせられそうになっている、とまでしか聞いてません」


「流石結城だ、どっかの会話が出来ないエイリアン野郎とは違って理解が早い」


「なんだよ! このエイリアン顔め!!」


「うるせえ、エイリアン頭」


 僕と隼人のにらみ合いが始まる。


「ほら! 話が進まないじゃない」


 と、そこで雲母から静止と先を促すような仲裁が入る。


「ごほん、それでなんだが、このひと騒動はどうやらただの過程らしい」


「え、補習がですか? テストを満点取るのが目標ってことですか」


「じゃあ満点でも取れば補習は無くなるってことかしら?」


 結城さんが思案顔で聞き返してくると、それに乗った雲母が何だ簡単じゃないとばかりに首を振る。

 そして簡単なのは結城さんがいるからであって雲母がどうこう言える立場ではないが、まあ死にたくないので口を閉じておく。


「まあそれなら確かに状況としては単純だったんだが……」


 隼人はもったいぶるように一度息を吐き、それから前を見て諦めたように肩を落とした。


「簡単に言うと、先生による生徒のための学力強化プロジェクトってことらしい」


 本音のところはな、と髪をくしゃくしゃにして悔しそうに付け足す。


「なるほど、それで生徒会が補習なんてらしくもない動きを見せたんですね」


 結城さんは今の隼人の短い台詞だけで全てが分かったらしい。

 もしかしたら彼女は状況の把握、もしくは全てを見通す力に長けているのかもしれない。流石は頭が良いだけはある。


「らしくもないのか?」


 ユキはどこか引っかかったらしく、頭の上で結城さんを見つめる。


「チビはあんまり学校って物を知らないからな。いいか」


 生徒会……正しくは生徒会執行部と呼ばれるべきものは、おそらくどこの学校にでもあるだろう。結城さんは転校しただけなのだから、前の学校と王充学園の差は考えていないのだ。

 しかし、ユキはそもそも学校という物を最近知ったばかりだ。だからこそ生徒会って偉いんだなあとは分かってもそこまでである。


「生徒会ってのは生徒の中じゃ偉い……とはまあ言わんが、学校の中でそれなりに深いところを知っている。それでもそれだけだ。生徒のトップである生徒会長様であれ、先生には届かない」


 一言区切ってから隼人はユキにそう説明した。


「だからこそ、生徒会には勝手に生徒を補習させる先生みたいな権限(・・)はない。そこがらしくないっていうことだな」


 分かったか、と締めくくる隼人。

 ユキはいまいち理解できてなさそうだが、これ以上は頭がパンクしそうなのか、必死に頷いている。


「それで、生徒会がらしくないのは分かったけど、なんで補習なのよ。生徒会顧問の富田先生はそんなことする先生とは思えないじゃない」


「いや……雲母にとっての富田の野郎と俺たちにとっての富田の野郎はだいぶ認識が違うと思うが……まあこの際それはいいか」


 そう雲母や結城さんには富田先生は甘いのだ。

 まあ理由は女子だから、というよりも優良児だからなんだけど。そういう点で言えば悠太もそんなに扱いは酷くない。


「富田の野郎は学校内でそれなりの地位にいる、がそれでもトップではない」


「つまり……」


「そう、主犯は学園長。その名の通り学園の長だ」


「主犯って言うと悪く聞こえちゃいますね。やってることは立派なことなのに……」


 そう苦笑する結城さんはやはり真面目なのだろう。

 しかし、その認識は間違いだ。決して結城さんの考えを否定するとかではない。そうではない、そんなことではないのだ。ただ、そう僕らは


「補習反対! 僕たち従順な生徒を地獄の牢獄に閉ざすなど言語道断、死をもって償いべき!!」


「死をもって!? そこまでの所業ですか!!?」


「まあそんなことは当たり前なんだが」


「当たり前なんですか!?」


 結城さんは、何か信じられないものを見たのか目を見開いている。

 何もおかしくはない、それだけ学園長の企みは非人間的だということだ。


「はいはい、学園長の企みについてはおいといて、根本的にやることは変わってないじゃない。東野、どうすんの」


 雲母は手を軽く叩いて僕たちを宥める。ついでに結城さんに、あいつらの言うことに聞く耳をもっちゃダメよと言うのはやめてほしい。


「どうするもこうするも、直訴するしかないだろ」


「ははあん、それでお兄様に掛け合ってもらおうって訳だ?」


「お前の発言といやらしい顔つきと存在と魂が見るに耐えないことは置いといて、だいたい合ってるな」


「存在と魂は全く関係なかったよね! というか発言は合ってるのに否定されたっ!?」


 魂まで否定されると、いよいよ僕は日本語が不出来な日本人以下に格下げな気がする。もしかしたら人以下かもしれない。


「まあ、おそらく一蹴されて終わるとは思うけどな」


 隼人は念のためだよと念押しして話を区切る。

 そして清々しい笑顔を見せたかと思うと


「それに、一蹴されたら100倍返しで蹴りつけるだけだからな」


「人はそれを処刑と言うんじゃないかな……?」


 もしくはリンチ。お昼ご飯から一文字変えるだけで、こんなにも物騒な言葉になる。不思議だ。


「とにかく、話をするだけでも全然違うだろ。行くぞ、宮」


「へいへい、まったく隼人は僕がいないとてんでだめだね。しょうがないからついて行ってあげるとするよ」


 まあどうせまた、何を馬鹿なことを言ってんだこの馬鹿、ぐらい言われると思いながらも軽口をやめない。


「ほんと俺はお前がいないとどうしようもないぐらい何もできないよ」


 しかし、予想は斜め45度きっかりを行き、隼人は申し訳がなさそうに頭をカリカリ掻いている。

 なんだ、急にどうしたんだこいつは。発言しといてなんだが、僕なしでもこいつは悠々生きていくだろうに。


「ああ、俺は自分が傷つくのが怖いのさ」


「哀愁漂わせたかっこいいセリフみたいになってるけど、貴様が僕を盾扱いしようとしてるのがよーく分かったよ!! この人でなし!!」


 必死の叫びも空しく、女の子の前で二言がうんたらかんたら言われた僕は、身の危険を感じながらも逆らえずにしくしくついていくのだった。

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