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ケモノテスト  作者: ヤタ
1章 ケモノ達の学園
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ケモノと補習!?

投稿遅れてすみませんでした!


 昨日、結城さんが隣に引っ越してきたことと静姉さんがやってきたことに、感動と絶望を同時に味わうというなかなか出来ない経験をしてから一日が経った。ついでにあの後電話を掛けてみても静姉さんは全くもって出る気配が無く、内の家計事情(全面的に食費)が大変なことになっている。今日の朝なんてたまたま買っておいた野菜ジュースで済ませるといった具合だ。

 流石に僕も高校男子だ。ただの液体では物足りないが、点滴をブッ刺すよりはマシかとギリギリの所を我慢する。

 ついでにユキにはクッキーと称してパン粉をレンジで焼いたものに砂糖をブッかけて渡しておいた。


 そして今に至る。


 静だ……今この状況に形容できるのはこの言葉だけだろう。無理矢理言うなればまるでこの場所の時だけが止まってしまったかのようである。

 窓から差す光に埋もれながら、風に揺られて木々が楽しそうに談話している。小鳥は(ひな)の為に餌をさがしているのか、せわしなくあっちへこっちへと羽をばたつかせている。

 こんな何も無い時間や空間が逆に僕を落ち着かせる。僕の周りはいつも工事現場顔負けのごとく騒がしいからたまにはこういうのもいいだろう。

 …………さて。


 どうしよう! 全く分からない!!(泣)


 僕は、いや僕()は平和な人生において流す必要の無かった血の涙を流しています。

 …………………………テストという名の。



 ー



『キーンコーンカーンコーン』


 一見教会の鐘の音にも聞こえるそれは、僕を冥府の彼方へと送り出していた。

 そう、一言で表すならそう……終わった……2つの意味で終わった……

 疑問に満ちた君たちは何が終わったって? と思うだろう。あえてそれに答えるなら、そうだなあ、人生……かな。


「なに人生終わったような顔してんだよご主人」


「ユキはいいよなあ、テストがなくて」


 流石にユキを頭に乗っけてテストはできないので、テストの時だけ先生に見てて貰っていた。そんなこんなで今は定位置である僕の頭に乗っかっている。


「ふはは、まあねずみの特権だな」


 そうやって自慢げに答えるユキ。くそ!次はネズミに生まれてやる!

 一人淡々とテストの問題用紙を片付けている隼人を見ると、その顔に青ざめた様子は無くいつもと同じ調子に見える。さてはテストの山が当たったな!?


「さて、飯でも食うか」


 あ、ダメだ。片付けかけた問題用紙をもしゃもしゃ食い始めたよ。あのままだと飯と称して例えカミソリでも飲み込みこんでしまいそうだ。

 結局みんなこんなもんなのか。なんたって学年最低成績の2-9だからな。

 さてと、このまま学校は終了だし、ご飯をどうするか。僕も購買で買えばいいか。早くしないとまた悠太に全部買われてしまうな。もう二度とあんなネバネバ〜ランドは味わいたくない。


「迦具土くん」


 立ち上がり際に結城さんが話しかけてきた。正直、テスト後あるあるの答え合わせを持ちかけられそうで怖い。僕には適当に相槌を打つことくらいしか出来そうにないし。


「テストの出来はどうでした?」


 若干想像していた質問とはズレたが、どちらにせよ僕の心を撃ち抜くには変わりなかった。もちろんこれは恋のキューピッドが可愛らしい矢を撃ち放つなんていう可愛いものではなく、テロリスト物の映画に出てくるようなゴツいおっさんに機関銃ぶっぱなされたような意味でだ。


「えーあーうん……まあまあ……かな?」


 わざとらしいぐらい曖昧に答えてしまった。昨日一緒に勉強しておいてまるっきり出来なかったなんていうのは恥ずかしすぎる。……まあ結局見栄だけどね!


「そうですか……私はダメでした……」


「え、なんていうか意外だよ」


「そうですか? 私はそんなに頭は良くないんですよ」


「またまたあ、謙遜でしょ?」


 そんなのは見え見えである。透け透けだ。


「本当ですよ。今回も数学で一問も空白ですし……ってあれ? 迦具土くんどうしたんですか!?」


「見ないで!! こんな感覚の差がある僕なんて見ないで!!?」


 涙を腕で拭いながら走り去ろうとする僕を驚愕する結城さん。でも仕方がなかった。一問しかまともに解けなかった僕とはきっと相いられないだろうから。

 いや、それにしたって一問以外全部解けたってすごくない?


「諦めろ。結城は別次元に生きている」


 声の方向を見てみると、両膝を地面に着けて片手で顔を隠しながら天を仰ぐ悠太の姿があった。それはまるで神に奇跡を乞うようにも、お母さんごめんなさいと(こうべ)を垂れるようにも見えた。というか絶望の色に染まるとついでに影の薄さも染まるんだろうか。


「悠太は同志なんだね……」


「一門しか解けてない宮に言われると心外」


「ちょっとまって!? 僕はそんなこと一言も言ってないんだけど!!? さては貴様覗いたな!影の薄さ利用して盗み見たな!!!」


「ヒューヒューラリー」


「口笛を口で言うとか分かりやすいわ! もういっそわざとでしょ!?」


「……勘違いしないでほしい」


「何が!?」


「宮の答案に価値は無かった」


「ムキャー!!!!」


 なんてやつだ。カンニングした挙句意味が無かったなんてどんな責め苦だよ。悪いのは向こうなのに悪い気がしてきちゃったよ。


「ふふん、宮はその程度なのね」


 得意そうに胸を張りながら僕を見下す雲母。この場合の見下すはもちろん物理的ではない。


「その様子だと自信があるとか?」


「ええ、平均点は越すと思うわ」


「志し低!? このクラスの平均点は1組の最低点にも及ばないと思うんだけど!?」


「何言ってるのよ、結城がいる限り内の平均点はウナギのぼりよ?」


「いえ、あの……私一人じゃウナギのぼりにはならないんじゃ……」


「そうだよ! 平均の出し方分かってる!?」


「そんなの小学生でも分かるわよ。逆に宮はちゃんと分かってる?」


「全体の和×全体の個数」


「「……………」」


 二人して鋭い沈黙を築く。何か間違ったことでも言っただろうか。


「宮に聞いた私が馬鹿だったわ」


「え!? なんで!!?」


「ご主人、×(かける)じゃなくて÷(わる)だよ」


「え!? あ……いやちょっと向きを間違えたんだよ……?」


「そしたら足し算になるわね……」


 みんなして哀れみの視線を投げかけてくる。とても心外だ、誰にだって間違いはあるだろうに。

 視界の端ではまだ隼人が放心していた。その姿は野に放たれた家畜の羊のようにシオシオムシャムシャしている。そんな後頭部に堪らず手刀を放つ。


 『スパっ!』


「いっつ! 何しやがる宮! だいたい今の効果音手刀のレベルに収まってねえだろ!?」


「はて効果音? 隼人くんは何をおっしゃってるんだか?」


「く……まあいい。んでなんだよ、俺は今食事に忙しいんだよ」


 それは人として恥ずかしくないのだろうか。


「隼人はどうだったのさ?」


「あ? まあまあだよまあまあ」


 隼人は嘘を付くことに罪悪感はないのか、一ミリも表情を変えずに清々しく言い放った。んー、ちょっとそれは見栄の張りすぎじゃないだろうか。


「無理しなくていいんだよ? ほら宮くんに正直に言ってごらん」


「出来は最悪だが得意げに慰めようとしてるお前よりは抜群にできた」


「んだとお!?」


 さも当然と言った顔で言う隼人。上等じゃないか、その勝負受けてやる。


「僕は英語で10問は解けたよ!」


「ふっ甘いな、俺は15問は解けたぞ」


 くそ、あと僅差だったか。


「あなたたち今日の英語50問以上はあったわよ……」


「あとは解けてないって普通にまずいんじゃないのか?」


 雲母とユキが可哀想な物を見る目で見てくる。いいのさ、こんなの赤点を越せればなんとでもなる。


「というかお腹空いたぞご主人」


「え、ああそうだったね。隼人はともかくみんなは人間だもんね。お昼買いに行かなくちゃ」


「おい宮、それだとまるで俺が人の食えない物が食えるみたいじゃないか」


 その通りだと突っ込むのも疲れたのでスルーすることにした。


「私お弁当だよ」


「あ、私もです」


 二人の手にはそれぞれお弁当箱と思われる包みが握られていた。サイズ的に主食はおにぎり一個くらいだろうか。本当によくそれで足りるなあ。

 つまり僕と隼人と悠太が弁当を買いに行かなくちゃいけないわけだ。


「ということで二人共、じゃんけんでもしよっか」


 もちろんお昼のパシリじゃんけんである。


「……もう買った」


 悠太を見る(一苦労して見つける)と、その手、いや両腕で抱えるほどのパンがあった。もちろん鞄に入る量ではないため家から持ってきた訳じゃない、つまり……


「もう買ってきたの!? いつ、てか相変わらず多いな!」


「今」


「だろうね!」


 いつの間にか影の薄さが治った(直るではなく治るで正解、こっちが正常)悠太はもう買ってきたようだ。それにしてもすごい量だ。定番の焼きそばパンからツナマヨネーズのおにぎりなんかも持っている。


「く、じゃあ隼人じゃんけんだ」


 実質負ける確率が上がってしまったが、まあ負けなければいいんだ負けなければ。


「いいだろう宮。でもただのじゃんけんじゃつまらん、いたっちょ心理戦でもどうだ?」


「嫌だ」


「何故だ?」


「昨日のことがあって貴様を信用できるか!!」


 僕は覚えているぞ、あの理不尽なじゃんけんを! もう二度と騙されないと誓ったネバネバの地獄を。


「今度は真面目だから安心しろ」


「む、じゃあ暴力的な行為は禁止ね、フリもだよ」


「オーケーオーケー」


「じゃあ……最初は「パー」……」


 …………………………………。

 普通は『最初はグー』じゃなかっただろうか。


「そんなもん心理戦でもなんでもないじゃん!小学生か!!」


「ほら、おまえの負けだ行って来い。焼きそばパンで頼む」


「くそ!!」


 こうなったら焼きそばパンを目の前で握り潰してやる。そう誓いながら教室を出る。購買は一階にあり少し離れた所にあるためとぼとぼ歩く。渡り廊下に差し掛かった所で誰かに声を掛けられた。


「迦具土 宮くん。ちょっといいかな」


 これは恋の素敵イベントかなと思いつつ振り返るとそこには腕を組みながら上品に立っている女子生徒がいた。ピシッと伸びた姿勢はまるで出来るキャリアウーマンのようだ。


「え……あ! 君は確かあの体育館のときの!」


「あら、そういえば申し遅れてたわね。私の名前は佐々木 奈々(ささきなな)。生徒会長をさせてもらってるわ」


 佐々木奈々と名乗った生徒はよろしくと追加して言った。生徒会長、なるほど喧嘩を止める度胸もその場を収めるのにも長けていた訳だ。


「そ、それで生徒会長さんが僕になにか?」


「担当直入に聞きます。あなたバカですか? いえバカですね?」


「もはや確定なの!?」


 ズバッという効果音と共に僕のハートが割かれた。容赦のない口撃が僕の心をえぐってくる。


「それで君を指導しにきたのよ。今日からみっちり勉強頑張りましょう」


 そう言った佐々木さんの目がキラリと光ったような気がした。いや気のせいじゃないはず、僕は知っているぞ、これは獲物を狩るときの目だ……


「ちょ、ちょっと待ってよ! やだよそんなの! せっかく帰宅部なのに勉強なんて!」


 僕は精一杯叫んだが佐々木さんは涼しい顔で一蹴した。


「とういか帰宅部で部活に忙しいわけでもないのに学年最下位なのはどうなの?」


「ゴフっ!!」


 痛い所を突かれた。僕のライフがジワジワと削り取られていくようだ。下手な強攻撃よりよっぽど辛い。


「これは生徒会での決定事項よ。ちなみにあなたのまわりにいるお友達さんも連帯責任でお勉強会に参加してもらうわ」


「生徒会は生徒に死ねと言うの!?」


「言ってる意味が分からないわ」


 お友達、つまり隼人達もこの勉強会という優しい名前の補習に参加させる気だろう。連帯責任……そんなの結城さん以外が許してくれるとは思えない。最悪生き埋めにされるだろう……


「要するに隼人とか悠太とか雲母とか雲母とか雲母が僕の人生を復讐の血で染めるんだよ!この勉強会は争い以外何も生まないと断言します!!」


「あら、そういうのは国のお偉いさんとかに言ってちょうだい。とにかく、他のお仲間にも伝えといてね」


「あ! ちょっと!!」


 佐々木さんは僕の必死の呼び掛けも虚しく、スタスタと廊下の彼方へと消えていってしまった。あのサバサバとした性格が何故だか偉い人なんだなあと変な実感を沸かせる。

 そして一人残された僕は精一杯考える。

 ……さて、どうやって伝えよう……

 やっぱりうまくごますとか考えるよりもストレートに謝ろう。きっとみんなも許してくれるさ。

 そう楽観を意気込んでいると後ろの方からまた呼び掛けられた。一瞬佐々木さんが考え直してくれたのかと思ったが、そのむさ苦しい声色に彼女の知的クールな印象はあてはまらない。


「おい宮、何これから命の危機に立たされようとしているのにちゃんと話も聞いて貰えずさらにすっちゃか逃げられてしまったみたいに突っ立ってるんだ。早く飯を買ってこい」


 ……的確すぎる例えはもはや例えじゃない気がする。


 今聞きたくなかった隼人の声を諸に聞いてしまい、先程までの楽観が泡のように弾けて消えていく、がしかし、後には引けないため土下座の覚悟を決める。


「あ、みんな。実は話したい事があるんだ。今生徒会長から補習に来いって言われたんだけどみんなも巻き添えにしちゃいました!ほんとすみませんでしたあ!!!」


 僕は頭が地面に埋まるかというほど土下座して誠心誠意謝った。この際命には変えられない。プライドなんて安いものさ。だからきっとこれで許してくれるはず。


「宮、顔を上げろ……」


 隼人はそれはそれはもう優しい声色でいった。雲母も隣でまるで聖母マリアのように暖かい慈悲の心で笑っている。


「隼人! 分かってくれたんー」


「じゃないとぶん殴れないだろ」


 ーきっと許してくれるなんて信じてた時期が僕にもありました…………


「まって!? メリケンサックは本当に死ムバゴラゲ!!?」


 いつの間にか取り出したのか、隼人のメリケンサックが僕の顔に突き刺さる。普通メリケンサックが突き刺さるなんてないと思う。死ぬ、これはもう召される。聖母マリアのような笑顔で冥府へと送られてしまう。


「あはは! ご主人顔が凹んでる!」


 こいつは後で埋めてやろう。確か裏山あたりの土が軟らかくて掘りやすかったはずだ。


「悠太! 何気に僕の爪を剥がそうとしないで!?」


 悠太はドス暗い顔をしながら忍び寄っていつの間にか僕を生づめにしようとしていた。想像以上にコイツらは容赦がナイ…………


「あ、あの……」


 何か言いたそうに結城さんがおずおずと手を挙げてきた。控えめなその様子に遠慮なんかいらないのにと思う。


「ん? なんだ結城」


「いえ、その……ケモノテストを挑んでみたらどうでしょうか……」


 僕は数秒ポカーンと放心した。そもそもケモノテストってなんだっけ、とこの学校の主役であるシステムを忘れていた。そして頭の上に這い上がってきたユキを意識して思い出す。


「そ、それだよ結城さん!! それは盲点だったよ!」


 そう、つまりこの学校の決めた絶対なるケモノテストに勝てれば、いくら生徒会でも生徒会長様だろうと文句は言えないわけだ。


「いや、根本的に考えて無理だろ。まず勝てない」


 隼人は多少腕を組んで冷静に突っ込みを入れた。

 確かに学年最低クラスの2-9が学力トップクラス、いや下手したら本当にトップであるエリートに勝てるはずがない……が。


「そんなのやってみなきゃ分かんないよ!? やらずに後悔するならやって後悔しようよ!」


「後悔しちゃだめだろ……」


 隼人が呆れた顔をするが、このさい後悔もやぶさかではない。僕の命を失うことを考えれば後悔なんて安いものさ。これさっきも言った気がする……


「まあでもやるしかないわよ。だって放課後までお勉強とかやだし」


 意外なことに雲母も話に乗ってきてくれた。うんうん、たまには役に立つこともー


「私だって出来ればこの手を染めたくないし」


 何で、何色に? とは恐ろしくて聞けなかった。


「あそこら辺にある消化器を使えば汚れないぞ」


「隼人! 染めたくないってのは物理的にじゃなくて犯罪を犯したくないとかそういう比喩であって……」


「あ、なるほど。それは良い考えだわ」


「あ、あれえぇぇぇ……犯罪に手を染めることに抵抗はないの?」


 怖い、もはや怖いよ。初めてこの国の未来が心配になったよ。


「しょうがない……一か八かやってみるか。行くなら早い方がいいだろ。さっさと行きますかね」


 この勝負、絶対負けられない……


「そもそも頑張るのオレたちだぜ? ご主人?」


 さあ頑張ろう!


「あ、無視するなよ!」


 ー


 生徒会室は中央校舎の3階にあった。普段そこには行かないため構造をよく知らないが、他に扉が無い様子を見るに中はとんでもなく広いのではないか。

 生徒会室の前に立った僕は、入る前にもう気圧されていた。でかい扉に薔薇の花が彫られている。そのいばらには、来るものを拒むかのような妙な圧力があった。


「行くよ?……」


 僕は息を飲んでみんなに聞いたが、隼人と雲母は早くしろという雰囲気だ。怖いもの知らずにも程がある。唯一結城さんだけが、胸に手を添えながら深呼吸をしている。

 僕は職員室に入るよりも重い覚悟で部屋をノックした。


 コンコンッ


「どうぞ」


 中から女生徒と思われる落ち着いた声が返ってきたため、なんとなく静かに扉を開ける。


「失礼します」


「あら、迦具土くんじゃないの。それにお仲間さんまで。どうかしたのかしら」


 女生徒の声の正体は佐々木さんであった。

 中には長方形の机が二つ、長い辺の方をくっつけて並べあった。そこにパイプ椅子が数個並べられている。奥にも何個か並べてありそこにはデスクトップのパソコンも数台置かれている。さらに横にはプリンターらしき機械も置かれており『三枚まで印刷可、それ以上は印刷室へ』と書かれた紙が貼られている。

 綺麗に整理された生徒会室には生徒がそんなに多くのないが、三年生が引退して二年生と一年生しかいないのが原因かもしれない。

 集まる視線のなか、少し萎縮しながらも僕は本題に入った。


「佐々木さん。実はお願いがあってきました」


「お願い、それなら意見箱へ入れて欲しいのだけど」


 職員室の前に置いてあるわよと涼しい顔をして言う。


「いえ、学校全体のことではなくてですね……てか絶対分かってますよね!? 話の流れ的に!」


 隼人に後ろから小突かれる。早く結論だけ言えということらしい。


「僕たちとケモノテストをしてください! こちらの条件は、お察しの通り勝ったら放課後補習を無くしてください」


「んー」


 佐々木さんは悩む素振りをして片手で垂れた髪の毛を耳に掛ける。その様子は僕の頬を少し赤くさせたが、雲母の後ろからの殺気によってたちまち青へと変貌させた。

 周りに目線を配るが、生徒会役員の人たちも困ったような顔をしている。

 さあ、どうだ?正直ここで断られたら終わりだ……

 一拍置いてから佐々木さんはうなづいて告げた。


「やっぱりだめね。これはやめられないわ」


「な!?」


「おいおい待てよ会長さん。見た感じ生徒会は人数が少ないようだな、これで行事詰めの二学期は回せるかな。もし俺たちが負けたら2-9全体で雑用をやってもいいぜ?」


 隼人は涼しい顔してとんでもないことを言った。というかそれ全責任僕に集まるよね?


「あなたは……確か隼人くんね」


「会長、確かにこの人数では文化祭をこなせないと思われます」


 メガネを掛けたクールそうな男子生徒が後ろから声をかけてきた。見たところ副会長のように見える。


「はあ、確かにそれもそうね……分かりました。その勝負受けましょう。ルールはそちら側の5人と生徒会の5人のチーム戦で、試合数は5回。3回勝った方が勝ちということでよろしいわね?」


「…………ああ、問題ない」


 隼人は何故か、佐々木さんを疑うような目で見た。僕たちにとっては願ったり適ったりの筈なのにどうしてだろう。


「では日時は明日の放課後。課題テストの返却後にするわ」


 課題テスト返却後……つまり課題テストの終わった今からじゃ努力のしようがない訳で、僕たちが圧倒的不利だけどお願いしてる手前どうしようもない。

 隼人の一言のせいで勝つ以外に道は無くなった。もし負けたらクラスメイトによって僕の命は消し飛んでしまう。

 絶対勝たなければ……

いよいよケモノテストが始まります…

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