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ケモノテスト  作者: ヤタ
3章 暴走!騒動!修学旅行!!
35/39

明くる朝の出来事

 太陽、それは僕たちの生きる源でありまた光の生産者。人はそれを拝み一日に始まりを告げる。時間を教えてくれる物であり野菜を育ててくれる物であり、人間を育ててくれるものである。と、ついでに悠太の天敵。

 とにかくそんな太陽様があってこそ、僕らは生きていられる。

 …………が、今はそんなことどうっでもいい。


「「「眠い…………」」」


 僕と相棒のユキ、悪友の隼人と悠太と共にそう呟く。光の生産者様は、僕たちに非情にも起床時間を告げる。今は有り難みもクソも忘れて、サンサンと輝くそれを疎ましく睨む。


「ああ、溶ける、アイスのように溶けてしまう」


 ユキが眩しそうに太陽を眺めてふやけていく。血の巡りが悪いのか元々頭が悪いのか、クラクラと馬鹿丸出しダンスを繰り広げる。


「くそ、何時間寝れた?」


 普段から目付きの悪い隼人は、その目の下のくまと合わせてより犯罪者チックになっていた。もしくは目付きの悪いパンダだ。


「2時間……それも寝ていない、最後、気絶」


 悠太は、こちらもまたすごいクマ……と言いたいが前髪で目が隠れてしまったいるのでその表情は分からない。普段から区切るような言葉使いだが、今は暗さと相まってメンヘラにしか見えない。


「本当、僕もサンよりムーンがいいよ。いや、別にこれは深い意味がある訳じゃなくてね? サン派を否定するとかそういうんじゃ……」


「くそ、いよいよ宮がやられちまった。いや? 元々おかしかったから大して変わらんか」


 隼人が悪態をついてくるが、カウンターを繰り出す元気もPPもなにもかもが無い。まあ物理攻撃じゃないから倍返しには出来ないんだけど。


「くそっ、富田の野郎俺たちを殺す気か」


 そもそもなんでこんなことになっているかと言うと、昨夜の僕たちの大脱走(と傷害)事件のペナルティが原因だ。最初はただのお説教と補習ドリルをやらされていたのだけれど


「全く、隼人が富田先生にバレないように逃げようとか言い出すから」


「うむうむ」


「うるせえ、お前たちだって賛成しただろうが。まさか、分散して4方向から逃げようとしたら、手頃なものぶん投げてしかも全部的中させるなんて思うか? 仮にも教師、仮にも人間だぞ?」


 本当、教師らしくなければ人間技でもない。しかも動きを封じるだけの、怪我させない程度の強さというのがいやらしい。


「オレ、初めて物的中させられた……」


 ユキの小ささにもしっかり当てに行くとは。針に大岩を通すような豪胆さだ。やっぱり人間やめている。


「しかも影の支配者、佐伯悠太をもあの暗さで見つけたからな」


「本当、死ぬかと」


 隼人が、影の薄まる悠太を励まそうと肩に手を置く……と見せかけて掠りもしない。そうか、これがミスディレクションか。


「今、動いてない」


 これがミスディレクションか。


 今の時刻は7時、5時までは記憶があって、確かそれから、あれ? どうなったんだっけ。


「ねえ、山積みの問題集を解いてる内にどうなったんだっけ?」


「確か、ん? 俺も覚えてないな」


「二人暴走、富田鎮圧」


「「ああ、納得」」


 ちなみにユキは勉強してもしょうがないため、筋トレさせられていた。確か腹筋千回、腕立て千回だった気がする。


「それに比べればまだマシかー、ペンダントも奪ったから疲労伝わらなかったし」


「本当、死ぬかと思ったぞ。ほら見ろよご主人、1日で筋肉ムキっムキだ」


 携帯を覗くと攻撃のステータスが少し上昇していた。そんな馬鹿なと思って他にも調べて見ると。


「あれ、なんか変なのが新しく出てるんだけど。えーと、『筋肉マンへの渇望』?」


「お、そりゃスキルだな。それは、一時的な攻撃力上昇、筋肉量に比例して増えていくみたいだな」


 隼人が横から画面を押して確認すると、詳細データが出てきた。


「じゃあ筋トレ続けたらオレ強くっ」


「ちなみに副作用として、筋力が上がれば上がるほど頭頂部が尖ってきて『魚』という文字が浮かび上がってくるそうだ」


「やっぱりやめとく!」


 とユキが拒否すると画面からスキルが消えた。

 どうやら嫌なら獲得しないでいいらしい。


「というかスキルってなに? 今まであんまり気にしなかったけど」


 僕が聞くと隼人はあからさまに呆気にとられて。


「おまえ……よくそれで今まで勝ってこれたな。あ、そうか俺のおかげか」


 と隼人が自惚れそうになるのをジト目で見ると、流石に恥ずかしかったらしく咳払いをする。


「こほん、つまりあれだ。特殊効果ってことだ」


「特殊効果?」


「ほら、鳥井の鳳凰が炎とか吐いてただろ? あんなもん身体の性能だったら反則じゃねえか」


「ああ、あれがそうだったの。なるほど、確かに鳳凰って火は吐かないもんね」


 使っても聖なる炎ぐらいなもんだろうか。


「あとは、これもまた鳳凰が使ってた『羽の硬質化』『火炎放射』、会長の白虎が使ってた『咆哮の威圧』とかだな」


 なるほど、佐々木さんの使ってた咆哮は一瞬ケモノを停止させていたのか。


「じゃあ結城さんは? あんなに強いんだし何か持ってるんじゃ?」


「んー、それがどうやら持っていないらしくてな。あれは純粋な戦闘力によるものらしい」


 そんなばかな、と一瞬頬が引きつるのを感じる。獣修決戦のとき、1組の生徒を刹那の時間で切り裂いたあれが本当に唯の猫の引っ掻きだったなんて。


「ちなみにスキルは拒めば消せるが、勲章はそうならない。ほら見ろよ、まだ『学園の低脳』が残ってる」


「なんだか懐かしいのを見つけたねえ」


「勲章もまた効果があるんだが、上乗せ出来ても消せることはないらしい」


 らしい、というのは東野先生に聞いたからだろうか。


「んで、効果なんだが……」


「空白…………だね」


 タップしても何も出てこない。説明どころかエラーの文字でさえ、本当に唯の真っ白だ。


「しかも勲章ってのは本当に珍しいらしくてな。あの会長ですら無いんだから相当なもんなんだろ」


「でも何も書いてないんだしあってないようなものだけどね」


 むしろ『学園の低脳』ってない方が良いものなんじゃ、と思わなくもない。


「まあその内なんか浮かび上がるだろ」


「そんなアイデアじゃないんだから……」


 僕がため息を吐くと悠太とユキの腹ペココンビが、お腹をさすって時計を指す。


「朝食、もうすぐ時間」


「そういえばそうだったね、というか」


「ああ…………」


 僕は隼人と目を合わせると、向こうも言いたいことは同じなようで頷き合う。


「「やっと飯にありつける」」


 そもそも僕らの行動の理由はそこにあったのだと儚く思い出したのだった。


 ー


 食堂は、僕ら以外のクラスが泊まっている新館にある。つまりボロっちくなくて、それどころか所々がピカピカ輝いているように見える。


「あ、結城さんおはよう!」


「ふわ〜……ってあ、宮くんおはようございます。それにユキちゃん、東野くんに佐伯くんも」


 結城さんにおはようの挨拶を言える幸せを噛み締めながら、おはようと返される抜群の威力に思わず頰が赤くなる。昨日の自覚してしまった想いが、僕の心臓を変なテンポで動かしている。


「ん、おやおや〜? なんだか迦具土くん、顔が赤いね〜。何か悪いもの〜でも食べた〜?」


 と、なんだか気が抜けるような声がした。その声の主は結城さんの隣から発せられていて


「やあ〜、どうもおはよう〜」


「なんだか珍しい組み合わせだね。おはよう寺荘さん」


 隣に座っているのは、生徒会にも所属している4組の寺荘さんだ。結城さんと二人でいるところを見たことがないため、少々以外だった。


「ん〜、席が空いてなくてね〜。相席させて貰ったの〜」


「え、いっぱい空いてるけど」


「そうだったかな〜? 別に迦具土くんの〜、女装が見たいな〜とか思ってた訳じゃ〜ないよ〜?」


「力が抜けるような言い方でも突っ込めるからね!? バレバレだし着ないから!」


「な〜んだざんね〜ん」


 本気で悲しそうな顔をする寺荘さん。でもこればかりは譲れないものがある。


「というか、結城さんなんだか眠そうだね」


「あ、いやこれは、ちょっと夜更かししてしまい」


 あはは、と軽く顔を赤らめながら髪の毛を弄る結城さん。初めてのお泊りで、雲母とガールズトークが盛り上がったのだろうか。


「(本当は、宮くんたちの隣の部屋で補習してたんですけどね)」


 結城さんは窓の方を向いて苦笑していた。なんだかよく分からないが、あまり突っ込む必要もないだろう。


「そうだ、お隣良いかな?」


 食堂は完全自由席らしく、結城さんを見つけたのはたまたまだ。そう、これはきっと運命である。


「ええ、いいですよ。みなさん(・・・・)と一緒の方が楽しいですし」


 運命の女神様はあまり僕の味方をしてくれないらしい。


 席は6人掛けの長方形机だが、恐らく雲母もいると考えて、悠太だけ別の所から椅子を引っ張りだして短い辺の方に座る。


「じゃあちょっと行こうかな」


「あ、私も飲み物取りに行きます」


 寺荘さんだけ残って、持ってきたらしい食パンをモサモサ食べている。

 朝ごはんは和洋両方のビュッフェのようだ。それぞれ卵焼きとスクランブルエッグ、ご飯とパンのように別れているらしい。ちなみに結城さんは洋食派らしく、机にはパンとサラダが乗っていた。


「って悠太盛りすぎだよ!?」


 悠太のお皿の上に乗せられていたのは、和洋関係なく全種類の食べ物だ。遠くで宿の人が慄いている。


「余裕」


 と一言だけ告げると席に戻っていった。

 結城さんが飲み物を取りに行くため別れると、僕は散々迷った挙句、ユキの意見を取り入れて和食にした。


「えーと、朝から重い物はなあ……無難に魚と卵焼きくらいにしとこ」


「ご主人! オレはあれとそれとこれな」


 流石にサイズが違うため悠太程ではないが、ユキもかなりの大食いだ。ゆで卵と魚とウィンナーとフライドポテトなど様々取り分ける。でも結局和食と洋食の両方じゃないか。


「っと隼人じゃん」


「お、おう宮。良いところに……ってだから俺はそんな食えねえって!」


 隼人の姿を見つけて近づくと、誰かと一緒にいるようで珍しく冷や汗をかいている。


「ちょうどよかった、宮からも言ってやってくれ。栄養バランスを大事にするがために大量に野菜を食うのはおかしいって!」


 誰がそんなことをと隣を見てみれば、どこかぼーっとしている巴里さんだ。今日は綺麗な白髪をストレートじゃなくて三つ編みにしている。それも子供っぽい物でなく、大きくふわっとしているのが特徴だ。

 とりあえず僕はそこらにあるナイフを掴んで


「笑顔で俺を刺そうとすんじゃねえ! だから俺と()はそんなんじゃねえって……逆の手にフォークだと!?」


 さあ、血祭りの始まりだ。神輿(みこし)は祭壇、お供え物は隼人の首だ。


「……おはよう」


 僕と隼人が、ナイフとフォークの正しい使い方講座をしていると、横から巴里さんが僕に挨拶してくれた。


「うん、おはよう巴里さん。今日はなんだかいつもと雰囲気が違うね。イメージチェンジ?」


「……ルームメイト」


 とだけ言って後方を指差した。

 なるほど、あそこの席に座ってる人が結ってあげたんだ。僕の視線に気づくとフワリとした笑顔で手を振ってくれた。


「ああ、どうりでいつもと違った感じだったわけだ」


 この超鈍感男は、これ以上ない程の変化に気付けないときたもんだ。女の人が隼人の方を向くと、一見変わらない笑顔が凍りついたような気がするのは、まあ気のせいにしておこう。まさか声が聞こえた訳じゃあるまいし……あるまいよね?


「…………」


 巴里さんは無表情ながらもちょいちょい後ろを向いて隼人にその髪を見せる。


「(ほら、褒めなきゃだめだよ)」


「(わーってるよ)」


 全く、世話のやける悪友だ。


「あ、あー、その。まあ似合ってるんじゃないか?」


 とぶっきらぼうに言い放つ隼人。その顔は軽く紅くなっていて、照れていることが一目で分かる。と見てたらなんだか殺意が湧いたのでもひとつナイフ講座を……


「なんでもいいけど、日常的な会話しながら光景がナイフとフォークの刺し合いってどうなんだ? ご主人」


「どうもこうもないよ。ほら、蚊が飛んでたらただの日常でだって叩くでしょ? 命のやり取り的にはおんなじだよ」


「ほお? てめえは俺のことを蚊だと言いたいのか」


 隼人が眉間に青筋を立てて、怒り任せに僕のナイフを奪う。とそのまま僕の頭頂部にナイフを突き刺した。


「うぼあぁ!? 痛いっ! つむじが刺激されて禿げるどころか割れる!」


「うるせえ、せめて持ち手側で殴ってやったんだ。感謝しろ」


 く、脳細胞が破壊される。天才な僕の頭がダメになったらどう責任とってくれるんだ。


「ふふ、あなたたちここは食事の場よ? いい加減周りの目を見たらどうかしら」


 ふんわりした口調だがどこか刺のある声。声音は鈴の鳴るような優しい音で、どこなお姉さんのような感覚がする。まあ、静姉さんを見てると全然そのイメージも崩れてくるのだが。


「…………璃音」


 巴里さんがそう呟くと、璃音(りお)と呼ばれたお姉さんっぽい人は巴里さんと隼人の間に割って入るように立ち位置を確保する。


「えーっと……ごめんなさい」


 確かに騒ぎすぎたようなので先ず謝っておくと、分かったらいいのよと優しく包み込むような笑顔で許してくれた。隼人もまた悪かったと思ったのか頭に手を当て謝る。


「ああ、確かに悪かった……」


「ええ、本当しっかりするべきじゃないの?」


 あれ? 隼人にだけちょっと厳しいような。

 思わず振り返ると、そこには普通の笑顔に戻っている璃音さんの顔が。


「…………璃音、これ褒められた」


 巴里さんが、普段はぼーっとした顔を軽い微笑みにして璃音さんに近づく。


「あー! もう! 咲は可愛いなあ! 褒められた? そうかそうか、また結ってあげるからね!」


 と、もう堪らないという様子で璃音さんが巴里さんに抱きつく。なるほど、この溺愛っぷりを見て納得した。璃音さんが隼人にだけ厳しい理由が。


「(褒めたまでは許すけど、髪に触れたらコロス)」


 本当に、厳しい。

 珍しく隼人が顔を青くすると、璃音さんは満足したのかそのまま巴里さんを連れて席に戻る。


「隼人、エライ人を敵に回したね」


「ああ、あの耳打ちしてきたときの笑顔見たか? 小動物くらいなら、あれだけで殺せるんじゃないかと思ったぞ」


 つくづく僕らの周りの女子は強いなあ。

 佐々木さんに雲母に璃音さんがランクインだ。


 とそこでユキがさっさと帰ろうぜと言いながら腹をさする。冷めてしまった器の中身を見て、しょうがないと思いながら2人と1匹で席に戻る。


「そういえば雲母を見かけないね?」


 席に戻った僕とユキと隼人は開口一番にそう告げる。すると、口の中にある物を飲み込んでから結城さんが言った。


「んく……はい、先程までは普通にいたんですけどね。そういえば食べ物が置いてある方にはいなかったんですか?」


「うーん、いなかったと思うよ? ねえ隼人」


 僕が話題を振ると、少し思案顔になった隼人はやはりと言って顔を横に振った。


「ああ、食事の場で血祭りを始めようとするやつ以外はいなかった」


「そんな人がいたんですか!? ど、どうしましょう寺荘さん、何か防犯対策とかしといた方がっ……」


 結城さんが本気で驚き慌てふためいている。どうしよう、僕だなんて言えない。


「う〜ん、まあ〜なんとか〜なるなでしょ〜」


 寺荘さんはめんどくさいのか、適当に返事して、また自分のサラダの上のコーンと格闘する。


「あ、もしかして雲母ちゃんが危ない目に! わ、私ちょっと見てきます!」


「あ、ちょっ。結城さんそれはないか安心し……いっちゃった」


 なんせ犯人は僕なのだし、そもそもリア充男以外に牙は向かないから安全なんだけどなあ。

 そそっかしいところも可愛いと、罪悪感と胸キュンの狭間で揺れてしまう。


「おい、さっさと誤解を解いてこい犯罪者」


「元はと言えば隼人があんなこと言うからでしょ……ちょっと行ってくるから」


「ご主人、オレは先に食べてるからいってらー」


 ユキは、もうこれ以上は付き合っていられん、限界だ、と朝ご飯を貪り始める。隣では、悠太がもう半分以上食べ終わっていた。なんて末恐ろしい。


 結城さんを追いかけると、案外早く追いついた。食事の場では走っていけないという考えのようで、駆け出したい衝動がありつつも速足にとどめる結城さんはとても立派である。


「結城さん、大丈夫だから止まって」


「あ、宮くんも心配で来たんですね」


「心配はまあ心配で来たんだけど……」


 雲母ではなく話をややこしくしそうな結城さんに、と心の中でつぶやく。


「というか、こっちは綺麗で広いね」


「そうですね、でも私は旧館も趣があって好きですけよ」


 どこか幼く感じる結城さんの声は、微笑みと見事にマッチしている。


「渡り廊下のギシッと鳴る所とか、障子や畳の匂いとか。宮くんもそうだと思いますけど、普段は洋室ですし、なんだか珍しい感じじゃないですか?」


 確かに、僕や結城さんの住むマンションは広いながらも全部洋室だ。言われてみれば畳や障子なんて祖父母の家以来かもしれない。


「それに、昨日は雲母ちゃんと色んな話が出来て嬉しかったですし」


 そっか、やっぱりガールズトークで盛り上がってたみたいだ。やはり定番の好きな人の話とかなのだろうか。そういえば雲母の好きな人とかそういうの聞いたことないな。


「(まあ、補習が終わった後だったので本当にすごい夜更かしになってしまいましたが……)」


「僕たちはそんな華やかな物じゃなかったからなあ……物とか飛び交ってたし……」


「あ、それってもしかして枕投げですか? 定番ですね!」


 結城さんがキラキラした目で食いついてくる。なんだろう、青春の定番みたいなことが好きだったりするのだろうか。


「あー……うん、まあそんなとこかな」


 本当は枕より全然硬かったし、当たりどころが悪かったら最悪死ぬデスゲームだったんだけど、まあそんな現実を結城さんに突きつけることもないだろう。


「そういえば結城さんは洋食派なんだね」


 机の上のトーストやコーンスープを思い出して言うと、結城さんは僕を軽く見上げた。


「はい、内はいつもトーストなんですよ。たまには和食もいいかなとは思ったんですけど、普段と違うことすると狂っちゃいそうで」


 えへへ、と彼女は自分の頭を撫でて照れたようにする。すると、照れを誤魔化すようにハッとなって前方を指差した。


「あれ、雲母ちゃんじゃないですか? よかった……」


 ホッと胸をなでおろす結城さん。どっかの犯罪者に血祭りにあげられてないことを確認できて安堵の表情だ。何故か僕までホッとしてしまった。当事者なのに。

 確かに結城さんの視線の先には雲母がいる。しかしちょっと様子がおかしいような。


「あの、だからそんなんじゃなくて、その、あんまりその話は……」


 雲母と話している三3の女子生徒、確か廊下ですれ違ったことはあるのだけど、流石に名前までは知らない。そもそも話したこともないけど、雲母の知り合いなのだろうか。


「ねえ! なんでならなかったの!? もったいないじゃない」


「えっと……だからその……」


 知り合い、の割には雲母が一方的に話しかけられている、というか質問責めにあっている。一転雲母の方は渋い顔をしながら曖昧に答えるが、3人の女子生徒はわーきゃー興奮していて彼女の反応に気付かない。


「雲母ちゃん……」


 と結城さんが心配そうに彼女の元に駆け寄ろうとすると


「だってアイドル(・・・・)でしょ!? すごいじゃないの!」


「だからその話はやめてって言ってるでしょ!!」


 ついに抑えきれなくなったのか、雲母の叫びが朝の食堂に響き渡る。

 その瞬間、三人の女子生徒は驚きに身を固め、周囲の席の人も何事かとこちらを振り返る。


「あ……………………」


 雲母はやってしまったと口元を押さえ、辺りを見回すと、固まっている僕らと目があった。


「雲母ちゃん、あの……」


 結城さんが心配そうに手を胸の前で組みながら雲母に話し掛けようとすると


「…………ごめん」


 と一言だけ告げて走り去っていってしまった。

 それでもやっぱり心配なのか、結城さんが追いかけようとするので僕もそれに付いていこうとすると


「宮くんは待っていてください。大勢で行ってもあれなので。ここは私にまかせてください」


 と僕に軽く手を振り、硬直が解けて困惑に変わりつつある女子生徒3人に軽くお辞儀をして行ってしまった。なんだか不穏な空気になってきたと、僕は心の中で嫌な予感に身を震えさせたのだった。

やっと雲母の話になった……

でも今思うと宮が結城を好きって気づいた後だしちょっと酷だったか……

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