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ケモノテスト  作者: ヤタ
1章 ケモノ達の学園
3/39

ケモノと謎少女

3話目です!

いや言われなくても分かってるって言われそうですがこのさい気にしない!(笑)

しかし、サブタイトルってつけるの難しいですね(笑)結構適当につけちゃってます。

謎少女って程登場もしません。


 表彰式というものはどうしてこう長いのだろう。他人の好成績をたたえるのは大事なこととは分かっていても、どこか自分には関係ないと思ってしまうのだ。

 さっきからニ十何人もの生徒がメダルやら賞状やらを受け取っているが、よくも春休みの短い間にあそこまで集めたものだ。

 この先にまだ学園長のなが……ありがたい話があると思うとすごく憂鬱である。

 僕の頭の上のユキはすやすやと眠っている。ねずみとはすごく羨ましいな。


「ったく……すやすや眠りやがって……」


「ふふっ」


 ん、結城さんがこちらを見て微笑んでいる。きっとユキを見ているのだろう。始業式は寝れて、結城さんに見つめられるなんて流石にずるくはないか……まあそうは思っても相手がねずみなのではしょうがないか。

 結局、結城さんとはくだらない話をするだけでなにもなかった。今は少しもったいないと後悔しているが、この調子ならもっと仲良くなれるだろう。というかなりたい。

 おっと、考え事している内に学園長のありがたい話が終わってしまった。

 始業式も終わり、3年生から徐々に移動しているな。

 この学園の体育館は一階建てであり、周りは何もない雑草に覆われている。出口は普通の横扉が2つと、もう1つ司会などを頼まれている生徒か先生が通るために用意されている。基本は上級生から順に移動するが、なんせ人数が人数だ。あっという間に混みまくってしまう。

 しかし、それでも先に行く三年生は案外早く体育館を抜けて、徐々に二年生が移動し始める。三年生を待っていたためか、早く帰りたいと我が我がとみんながみんなを押しのけている。


「おい! ぶつかってんじゃねえ!」


「はあ? てめえがぶつかってきてんだろうが!」


 うわ、すぐ近くで喧嘩が起こりそうだ。まったくそんなことで喧嘩なんかしなくても……

 お互い胸ぐらを掴み合い火花を散らしている。しかも両方とも見たことある顔だぞ。朝、自分の教室で!


「やめなさい!」


 そんなイカつい男共を止めたのは意外にも少女だった。いや、少女というのは正しくないか、どちらかといえば女性という方が合ってるかもしれない。綺麗な黒髪のロングヘア、キリッとした目には眼鏡をかけている。


 わ、誰だろう。こんな怖そうな人達を止めようとするなんて勇気ある人だなあ……


「殴り合いはよくないわね。まず状況を説明してくれる?」


「ああ?こいつがぶつかってきたんだよ。ついでにガンもくれやがって」


「てめえがぶつかったんだろうがよお! 何がガンだ、てめえの腐った目でちゃんと見えたのか? あ?」


「んだとおお!!」


 僕は見ていなかったが、そもそもぶつかっただけで喧嘩する方がおかしい。普通あ、すみませんって程度で終わるとこだろうに。


「はいはい分かったわ。つまりどちらも相手がぶつかったって思ったのね?別にそのくらいいいじゃない。男のくせに器が小さいのね?」


 女の人はズカズカと本心をぶつけている。が、どれも正論なのでなんとも言えない空気だ。


「っくそが……」


 不良共も何故か言い返せない。これが無言の圧力、というやつなのだろうか。まあ逆上して突っかからない辺り、紳士として最低限は理性を持っているらしい。


「お互い納得してなさそうね……はぁ、しょうがないわね。このまま戦争とかされても困るし、ケモノテストで決着をつけましょう」


「ああ? 何勝手に決めてんだ……まあいいか、みんなの前でボコらさせてやるのも悪くないし、どうしてやろうかあ」


「いいえ? 賭けならもっと穏便に済ませてくれるかしら。そうね……負けた方がみんなの前で土下座、この辺りが妥当かしら」


 それはそれで、なかなか残酷だと思う。まあ、殴り合いをされるくらいならちょうどいいかもしれないが。


「ちっ、まあいいけどよ」


「そう、なら審判は……先生を呼ぶほどでもないし、そうね、そこの目をそらした君、やってくれるかしら。いえやってくれるわよね」


 ひぃ……目を合わせないようにしてたのばれた……すごく目が怖いしやるしかないか……


「……分かりました」


 まだケモノテストしたこともないのに審判だなんて……ついてないな……


「じゃあ両者位置についてください。」


 この場所が体育館ということもあり、結構な数の人が野次馬となり集まっていた。一年生も来年のためか、移動する足を止めて見入っている。そうして自然に出来た円状のステージで問題の不良2人は睨み合っている。ついでにユキはこんな中でも眠っている……

 両者を見て開始宣告……ん?なんかさっきの女の人が近寄ってくる……


「……これはデモンストレーションとしての機会としてちょうどいいわ。多分すぐにチャイムが鳴るだろうし、おそらく決着はつかないから、そしたら打ち切りにしてちょうだい……」


 開始の直前、謎の女の人が耳打ちをしてきた。決着はつかない……つまりどっちも土下座しなくていい、後々の被害も減るだろう。これを見越して二人にこの戦いを吹っかけたのなら、この人は相当頭がキレる。


「え……それって」


「じゃあまたね」


 僕が誰なのかと尋ねる前に謎の女の人は姿を消していた。あわや忍者かと思うその行動に僕は何故か背筋を強張らせていた。

 あと、何をもってしてのまたね(・・・)なのだろうか。

 深く考えていると、不良の二人がまだかと睨んできたので僕は意識を放り捨てた。改めて両者を見て開始宣告をする。


「じゃあ、ケモノテスト開始!」


「「召喚!!!」」


 2人の叫びとともにエフェクトが走った。それぞれのケモノが姿を現し始める。登場演出はめんどくさいので省くが……え、いや、そんなやらないの?みたいな顔しないでよ不良の人達……それ審判の仕事じゃないよ。

 えーと、2人のケモノはそれぞれ不良Aがアライグマ、不良Bがアシカだ。テストをまだ受けてないせいだろう、お互いレベルも装備も全然だ。


「いけ、アライグマ! ひっかきまくれ!」


「ふっ、アシカにそんなちゃちな攻撃が通用するとでも?」


 スマートに決めてるとこ申し訳ないがHPめちゃくちゃダメージ受けてるよ。レベル差がないからあんましそういうとこ関係ないみたいだね。

 しかし流石アシカ。見た目通りHPは多いようだ。


「お返しだ! 思いっきりビンタしてやれ!」


 言い忘れていたが、ケモノテストには様々な戦い方がある。今のようにケモノに指示を出す場合もあれば、意思疎通により自分である程度動かすこともできる。

 それにケモノにはそれぞれ特徴があり、例えば今のアシカならHPが高いが素早くはないなどがある。


「くっ、アライグマ!」


 呼ばれたアライグマが、アシカの前足に思い切りはたかれた。体重が重いため、重量の効いたピンタはもはやただの砲丸にしか見えない。直撃したアライグマのHPを、さっきまで散々やられてたアシカ同様にした。それも一発で、だ。


「こうなったらやけだ! とにかく引っ掻きまくれ!」


 結果ただの殴り合いだ……しかしアライグマも素早さは相当のようで、しかも一撃の威力は小さくとも残像となるほどの攻撃をずっとされているといくらHPの高いアシカでも凌ぎきれない。しかも素早くはないため逃げられない。

 お互いの攻防が続きHPの残りが三分の二となったところで……


 『キーンコーンカーンコーン』


 先程告げられた通り、決着のつかないままチャイムが鳴った。僕は言われた通り、その瞬間手を挙げ……


「両者そこまで! 引き分け!」


「「「おお!」」」


 集団から歓声が上がった。

 初めてのケモノテストを見れて興奮していたのだろう。

 ついでに不良2人は納得してないかと思いきや、握手をして笑いあっている。こんな簡単に和解するならこんな大袈裟にしなくても良かったんじゃ……

 まあいいか、さあ早く帰らないと。そういえばさっきの女の人はどこにいったのだろう。というか誰だったのだろうか。


 ー


 体育館の一件が終わり、教室に戻る頃にはもう授業を始める寸前だった。慌てて駆け込むと東野先生にはまた何かやらかしたのかと言われた。信用の無さが辛い……

 授業といってもほぼ業務連絡だけだ。そして先生の話も終わりいよいよ放課後。

 僕達は雲母の「お昼一緒に食べよ!」の一言でお昼を一緒に食べることになった。雲母もたまには役にたつようだ。


「宮は外しましょう」


「ごめんなさい、調子乗ったこと言って……思って悪かったので一緒に食べさせてください」


 いい加減に心を読むのをやめてほしいものだ。そしてユキはご飯と聞いた途端に飛び起きた。食い意地の張ったやつめ……。寝起きとは思えない俊敏さで跳ね上がっている。

 そして人きしり踊ったあと、お腹がぐーっと鳴り、さすっている。


「ところでユキもご飯って欲しいのか」


「オレだって生きものだぞご主人!」


 ケモノは生きているらしい。衝撃の事実だ。

 実際ケモノの詳細は詳しく話されていない。一説によると電脳空間が目に見えているだけとか、異世界から送られてきた等があるが、学園長が一向に話そうとはしない。

 別に今になって気にはしないが、おかしな話である。


 僕達はお昼を調達するべく購買へと向かっていた。

 ちなみに結城さんと雲母は自飯なのだが、僕達についてきてくれたのだ。

 購買のある場所までの廊下を歩いていると、向こう側から知っている顔が歩いてきた。


「ん? あれは東野先生」


 先程の授業が終わり、一旦職員室に行ってまたどこかに行くのだろうか。先生も先生でなかなか忙しいのかもしれない。


「あ、そうだ宮。俺とアニキが兄弟だってことみんなに言うなよ?」


 隼人が耳打ちをしてきた。結城さんに変なことを言わないために、釘を刺してきたのだろうか。


「分かってるって。まったくなんでそんな恥ずかしがるかな……」


「こっちにも色々と事情があるんだ。悠太と雲母も頼むぞ」


「……了解」


「分かったわ」


 先生がこっちに近づいてきた。すれ違うとき、一応僕らも挨拶する。隼人はというと……


「アニ……兄さ……にいに……先生……」


 お前はバカか。何度間違えれば気がすむんだ。絶対ばれただろ……


「ふふっ、私もよくありますよ、先生を家族のように言っちゃうの」


 あれ? ばれてない……結城さん意外と天然か?


「あー……ここまで言っちまったし、まあ結城ならいいか。実は東野先生と俺は兄弟なんだよ」


 え? いやバレてなかったんだけど?


「え!? あ、そういえば顔とか似てますね」


「本当、顔だけじゃなくて性格も似れば良かイタイイタイ」


「アニキ、今日の晩飯の食料はこいつでいいか?」


「俺は構わないよ」


「構ってよ!? 先生そこは助けてよ! 僕を食べても美味しくないよ!?」


「確かに腹壊しそうだ。」


 酷い言い様だ。腹を壊すほど汚くはないぞ。


「んで本題だが、今日の晩飯はなんにするんだ?」


「オムライスで」


「ん、了解」


 隼人の家は共働きで隼人が家の晩御飯を作ってるそうだ。というかオムライス……先生なかなか子供っぽいな。


「お腹すいた、早く」


 悠太の痺れが切れてきたようなので、僕達は購買に昼ご飯を選びに向かった。今日はなににしようか、焼きそばパンかコロッケパンか……よし、カツサンドにしよう。

 しかし、僕の手はカツサンドへと伸びようとしたところで隼人と手がぶつかった。


「隼人、僕の方が速かった」


「なにを言う、俺の手の方が2、3ミリ多く掴んでいるだろ?」


 カツサンドは残り1つ。ここは譲れないな。


「宮ここは公平にじゃんけんにしないか?」


「いいだろう隼人」


 僕はじゃんけんがまあまあ強いんだ。まあじゃんけんに強いも弱いもないかもしれないが……


「「最初はグーじゃんけん……」」


 ぽんと出そうとした瞬間隼人は僕に向かって拳を振り上げた。


「ちょっ! 危な!」


 僕は反射的に両手で顔を被った。


「ぽん」


「へ?」


 よく見れば隼人の手はチョキになっていた。そして顔を被った僕の手はパーに……


「なっ、ずるいぞ隼人!」


「宮、(いくさ)の心理戦とはこういうものなのだよ」


 今のは心理もくそもないだろう。むしろ物理的な手段だ。


「今は戦じゃないでしょ!?」


「なにを言う、腹が減っては戦は出来ぬというだろ?つまりこれは戦なんだよ」


「そんなので納得すると思ってんのか!」


「宮なら納得するだろ」


「くっ、一瞬納得してしまったのは事実だ」


「一瞬でも納得したのか……」


 しょうがないカツサンドは諦めて他のもの……


「ない!? パンがない!」


「ごめんねぇ、パンなら残りも少なかったし全部あの子が買っちゃったよ……」


 購買のおばちゃんが指差す方向には両手いっぱいにパンを抱えた悠太の姿が……


「悠太このやろー!!!」


「これは戦……油断したら死ぬ」


「なに悠太も間に受けてるの!?」


 ちくしょう、悠太までそんなこと言うのか……影が薄い効果をどんなときに発揮しているんだ。

 しょうがない残っているのはーー


 ーー塩昆布、納豆バー、男梅。


 …………最悪だ。なんでこんなものしか……


「塩昆布……はどう考えてもご飯じゃないよなあ。男梅も流石に足りないし……」


 結局僕は唯一腹の足しになりそうな納得バーを選択した。納豆バー……未知の領域だが、きっと大豆バー関連の新商品だ。というか、じゃないと困る。


「すみませんこれください」


 僕は、え? これ買うの……? というおばちゃんの視線に耐えながらそれを掴んだ。


 ー


 僕達は屋上で食べることにした。

 普通学校は屋上は禁止だったりするのだが、隼人が東野先生にこっそり鍵を貰ってくれているのだ。おかげで他には誰もいなくていい場所だ……

 そう、場所は良い。

 悪いのは大豆バーなんかを置いといたあの購買だ。断じて僕のせいじゃない。


「宮、いい加減諦めてそれ食え」


 僕はさっきから膝を抱えていじけているのである。それは何故か。さてみなさんは間違った買い物をしてしまったときどうする?

 A.返品を試みる

 B.諦めて人生の経験とする

 C.思い切りぶん投げて忘れる


「うるさい隼人! 僕の気持ちがきさまには分からないだろう! こんな……こんな……納豆バー()を買ってしまうなんて!」


 僕は選択肢Cを選択した。


「それにしても宮も本当マヌケよね」


 雲母に毒を吐かれるが今回ばかりはしょうがない。なんせバーとバームを見間違えたんだから。


「納豆バームってなんだよ……罰ゲームにしか思えないだろ……」


 納豆バーム……形状はバームクーヘンとなんら変わらない。変わっているのはきっとバームの頭についている文字だけだろう。納豆……そこには甘いケーキと、明らかに異次元に在るべき豆が埋まっていた。

 さっきから雲母や結城さんのお弁当がすごく光り輝いて見えるよ……


「あの……迦具土くん食べますか?」


「はああ、いたわってくれるのは結城さんだけだよ、でもせっかくだけど結城さんの分がなくなっちゃうから」


 本当は結城さんの手料理を食べてみたかったけどしょうがない。そもそもこれは僕の失態だ。99パーセント購買が悪くても、1パーセントは僕に非がある。1パーセントだけは。


「ユキも納豆バーム食べるかい?」


「オレは遠慮するよご主人。たーんとお食べ」


 ユキは分かりやすく、鼻をつまんで拒んでくる。そうかい、なら空腹になるで死んでしまえばいいさ。


「あ、それならユキちゃんだけでもどうぞ! ユキちゃんなら少しでも大丈夫でしょうし」


「お! 本当か!? なら遠慮な……」


「え?なに?そんなにこの納豆バームが食べたいのか! しょうがないなあ!!!」


 僕は納豆バームをちぎってユキの口の中にねじ込んだ。


「うが!? まてごしゅじ……!!?」


 ユキは気絶してしまった。ユキだけそんないい思いはさせないのだ。……しかし気絶とは……そんなにもとてつもない威力なのか……? いやまあ死ぬことはないだろうし? 所詮は食べ物だし? 豆だし、豆。

 僕は意を決して納豆バームを頬張った。バームクーヘンの程よい甘さと納豆のネバネバと臭みが口の中であいまって……


「まっず!?」


 僕は倒れた拍子に頭をぶつけて、痛みでなんとか持ち越した。

 危ない……意識を持ってかれるとこだった……なんという威力だ納豆バーム……


「うわ! 臭!? 息しないで宮!」


「雲母は僕に永遠の眠りにつけというの!?」


 くっそ、あとで口をゆすごう。しかし今日は朝から災難続きだな。帰り道には交通事故にでもあうんじゃないか僕……


「あの、それで足りるんですか?」


 結城さんがおずおずと聞いてきた。

 確かに、運動部に入ってはいないとはいえ男子高校生。満腹かと言えば嘘かもしれないが、もともと某大豆バーが異形の変化を遂げたようなもの。朝飯の代わりになるくらいの満腹感はあるのでわざわざ追加で食べようとも思わない。


「んー、エネルギー食品みたいな感じだから大丈夫だよ」


「いや白ねずみむしろ、いやもはや生気失ってるぞ……」


 食べて気絶しかけての何をもってして大丈夫なのか、僕自身も良く分からないがそう答えておいた。

 結城さんは自分のお弁当と僕の顔を交互に見てそう答えた。きっと分けてくれるつもりだったのだろう。さっきも言った通り、結城さんの分が無くなってしまうのでここは遠慮させてもらおう。


「白ねずみ、なかなか起きないな」


 隼人は未だに大の字で目を回してぶっ倒れている僕の相棒に声を掛けた。


「起きたって……隼人眠ってるように言うけどその程度で済んでないからね?」


「他人事のように言ってるけどそれやったの宮よ?」


「僕は食べたから、同じ境遇にあったのでセーフだよ」


「あっそ……」


 雲母が呆れ顔を見せている。その顔には、ユキちゃんがかわいそうと目に見えて書かれている。


「ところで結城のお弁当って自作!?」


 雲母が結城さんのお弁当を見て目をキラキラさせている。雲母の目が輝くのも頷ける。タコの形のソーセージ俗に言うたこさんウインナーを始め、少し茶色い、でもそれが一段と美味しそうに見える卵焼き。串にはトマトが刺さっていて面白く、なんとも色とりどりで美味しそうなのだ。


「はい! そうですよ」


「へー凄いな、結城は自分で作ってるのか」


 隼人も関心そうに頷いている。


「といっても隼人も夜は自炊しているんだから腕はあるでしょ?」


「いやいや、宮よ。このクオリティを朝に作ることが一番すごいんだ」


 確かにこれはどれもこれも昨日の夕飯の残り物ではなさそうだ。栄養のバランスも良いし文句の付けようがない。


「そういう柊ちゃんも自作ですよね?」


「ん? あ、雲母で良いよ! こっちも月って呼ぶね?」


「あ、はい!雲母ちゃん!」


 結城さんを下の名前で呼ぶなんて!羨ましい……女の子同士だからなせることだけど……

 ああ、女の子同士の友情って良いな。雲母は裏で何か言ったりしないし二人は本当の親友になれるだろう。


「うんうん、あと自作っちゃ自作だけど私は夕飯とかも詰め込んでるしね」


 ちょっと恥ずかしそうに頬を掻く雲母。その手にあるお弁当の中身を見ると、昨日は生姜焼きだったのか甘辛そうな豚肉がはいっている。


「それでも自作なんだからやっぱりすごいよ!」


「そ、そう? 宮がそういうなら……」


 褒められて照れてるのか頬を少し赤らめている。その顔は俯かれてて、何かをぼそぼそと呟いている。


「(あー宮は鈍感だよなあ………)」


 なんだか隼人がニマニマしている。とても気持ちが悪い。納豆バームを思い出しそうなくらいのゲスの笑みだ。


「ハッ!?」


「あ、ユキ起きたの?」


「お前も寝てたように言ってんじゃねえかよ……」


 隼人がなんか言ってるが聞こえない。


「なんかすごい嫌な夢を見たぞ……」


「それってどんな?」


 そう聞くとユキは言い辛そうにわなわな震え始めた。


「なんていうか……納豆が粘り着いて、そのまま出られなくなったと思ったら……一緒に発酵された……」


「うわあ……それは嫌だね。なんでそんな夢見たんだろうね」


「ご主人のせいだから!?」


「宮。ユキちゃんいじめちゃダメでしょ」


「これはもう傷害罪レベルだと思う……」


 ユキは納豆バームの味を思い出しそうになったのか、両手両膝を床に付いてどんよりした。ついでにたまにえずいている。


「というかご主人よく食べて平気だな……」


 ユキが僕の手に持っている納豆バームの袋を見て言った。


「いやほら、僕はユキほどか弱くな」


「味音痴なんだな……」


「し、心外な!!」


 僕の必死の叫びも虚しく、ユキはやれやれと首を横に振っている。


「 ん、ああそういえばステータスをまだ見てなかったな」


 隼人が先ほどの会話を思い出したのかそう告げた。確かにユキのステータスはまだ見ていなかった。


「どんなに酷いのだろうか……」


「うん、酷い前提なんだな」


 ユキが白い目で見てくる。いやそもそもお前の潜在能力なんだが……


「まあ人類最下位じゃあ大したことはないよなあ」


「ちょっと隼人!? 学年から人類はオーバーダウンしすぎだよ!!」


「オーバーを使ってなおし過ぎって……」


 しかし学年最下位は現実だ。少なからず今は酷いはずだ。今は!


「じゃあ折角だし見てみようかな」


 僕はポケットから携帯を出して起動した。慣れた手つきで検索、王充学園と素早く打ってホームページにアクセスする。ホームページにある生徒情報をタップし、そこにユーザー名とすごく厳重なパスワードを打ち込む。暫く経ってから僕の名前とユキの名前、その下には……


「レベル1 スキル無し HP10 攻撃1 素早さ3 防御1……」


「これは酷いな……」


「私初期値でも平均20はあるわよ……」


「私はまだケモノ持っていないので……」


「……カス」


 みんなが可哀想な目で僕を見てくる。結城さんはまだケモノの初召喚もしていないらしい。


「もうなんなのさ!! 悠太は久しぶりに出てきたと思ったら一言カスって!!」


 涙が、涙が止まらない!僕が顔を覆っていても誰も同情すらしてくれない。隼人に至ってはあざ笑っている。


「まあどんまいご主人」


「っこんの!!」


「待てご主人! いくらねずみでも屋上からは死ぬ!!!」


 ユキを思いっきり握って放り投げようとした瞬間指にしがみついて難を逃れられた。


「まあまあ、お? 他にもなんか書いてあるぞ」


「え? 本当だ何々? 勲章……え、何勲章って!!」


 何にもしていないのに勲章が付与されてるってすごいんじゃないか!?


「みんなはあるの?」


「「俺(私)はないよ」」


 悠太も無言で首を横に振っている。結城さんは、先程も言った通り……と静かに頷いてる。

 それを確認した隼人が僕の携帯を覗き見て


「俺が読んでやるよ。何々? ……学園の帝王?」


「え!何その(ほま)れ!! やっぱ僕には何か才能が……」


「あ、読み間違えた。学園の低脳(・・)だ」


「……ふっざけんなあぁぁ!!!」


 嬉しかっただけに最悪の気分だよ! 気分失墜だよ!


「まあまあ、宮にはお似合いよ」


「そんな(なぐさ)めいらないよ! むしろ(いや)みじゃないか! 何これ、テストの採点不備があったときのような気分!!」


 しかもこれが勲章って……勲章って褒められることじゃないの?


「迦具土くん、きっと頑張れば他にも付きますよ」


「うぅ、ありがとう結城さん」


「ご主人!こうなったら今日から勉き」


「それはやだ」


「…………」


「まあ白ねずみ、それは無理な相談だ」


「そうよ、不可能よ」


 そのセリフを聞いてユキが唖然としている。


「オレが強くなれることはないのか……」


「な! まだそうと決まった訳じゃ……」


「良いんだ良いんだご主人。分かってるから」


 こいつめ、もう諦めモードになってやがる。


「ん、そういえばこれからどうしようか?」


 雲母がこれからの予定を聞いてきた。みんなの手元を見てみると、もうお弁当は食べ終わったようだ。


「僕は特に用事ないよ?」


 目の前でマルを作って意思表示をする。周囲を見回してみると、全員頷いている。他の3人も特にないようだ。


「じゃあせっかくだしこれから遊びに行かない?」


 特に断る理由もなく、みんなも承諾した。


「じゃあどこに行く?」


「あ、最近できたあのデパートなんてどう?」


 東の方向を見てみれば新しく、オープン! と書いてあるデパートが見えた。


「じゃあ新しく開店したデパートへレッツゴー!」


 雲母の元気の良い掛け声とともに僕達は立ち上がった。

結構長くなってしまったかな?

まあでも書くの楽しいのでしょうがないのです。今回も楽しんでもらえてたらめっちゃ幸せです!

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