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ケモノテスト  作者: ヤタ
2章 獣修決戦!!
22/39

獣修決戦5

獣修決戦編ついに終わりました!


 人とは思えぬほどの咆哮を直で聞いてしまった僕は、思わず硬直してしまった。

 いや、これは咆哮による硬直ではない。

 今……今は絶対に聞きたくない声を聞いてしまったのがおそらく原因だろう。


「おいそこのメガネ! なにしてやがる!!」


「落ち着いてあま……!!」


「まて! 宮!!」


 その人を呼び止めようとしたとき、隼人に口を

 押さえられた。


「なにすんのさ! 天野くん完全に僕が鳥居くんに暴力振るわれたと勘違いしてるよ!?」


 激昂して吠えているのは天野くんだった。

 正確には「僕」ではなく、天野くんの好きな女装をしている幻影だ……が、今はそれどころではない。


「なに言ってんだよ。むしろそれを狙ったんだよ。これで激情した天野が押さえてくれるだろ」


 お互いに天野くんに聞こえない声量で話した。

 確かに今の天野くんならば、鳳凰を操る鳥居くんでも倒せそうな雰囲気を(かも)し出している。

 しかし……


「なんか卑怯じゃない?」


「なにを今更」


 隼人は悪びれた様子も見せずさらっと答えた。


「顔だけじゃなくて性格まで悪人帯びてきたね……」


 僕の呟きに隼人はぐっと拳を握った。

 その拳は完全に僕の頬を狙っている。


「まって!? 今の僕を殴ったら天野くんの怒りの矛先が隼人に向くよ!?」


「ちっ……」


 それは面倒と思ったのか、隼人は静かに拳を下ろした。


「なになに? これどういう状況。ついに宮が目覚めたの?」


「目覚めてないよ!? 何恐ろしいこと言ってんのさ!!」


 うーちゃんの回復を終えたであろう雲母が駆け寄ってきた。


「……奪い合い……」


「みたいだよね!ね!」


「はいそこ! 盛り上がらない!!」


 いつの間に接近したのか、悠太までとんでもないことを言い出した。


「月の方はまだ苦戦しているみたいね……」


 雲母の言う通り、お互いがお互いのHPを

 減らしあっている。

 たまが減らしては白夜が減らしての繰り返しである。


「でもきっと……結城さんなら勝ってくれるよ」


「宮に言われなくても分かってるわよ!」


 言葉ではツンとしていても、信頼関係ができていると知れて顔は少し(ほころ)んでいる。


「問題は……」


「ああ、天野がどこまで稼いでくれるかだ……」


 時間を、とはあえて言わないようだ。

 謎めいた天野くんでも鳥居くんには勝てないと思っているのだろう。


「宮が応援したらいいんじゃない?」


「……一理ある」


 雲母の発言に悠太が乗っかった。


「いや……そんな単純な……」


「いいからやってみろよ」


 隼人が急かすのでしょうがなく僕は……


「天野くう〜ん! 頑張ってえ〜〜!!」


 ……うん死にたい。


 甘々な声で甘々なセリフを甘々に吐いた。

 甘々に吐いたの意味がよく分からないが、まあとにかくアイドルを演じきった。


「うおおぉぉぉ!!!」


「単純だった!!?」


 天野くんは大層嬉しかったのか、身体から炎のオーラがでている。

 いや……本当に燃えている……だと?


「召かあぁぁぁんんん!!」


 叫んだ瞬間、纏っていた炎が広がった。

 その中で輝く眼光が、一際目立っている。


「グオォォォ!!」


 白夜以上の咆哮に、体育館が響いた。

 もはや揺れているかもしれない。

 登場とともに周りの炎のが弾けて、その姿が露わになった。


「ら、ライオンーー!!!?」


 まさかのであった。

 基本ショボいケモノの9組がライオン

 ……百獣の王を召喚した。


「おいおいまじかよ……」


 ここまでは想定外だと隼人は呟いた。


「ふふ、百獣の王はケモノの王にも成れるのかしら」


 佐々木さんは横目で微笑をした。


「あなたこそ空きありです!」


 さっきのお返しとばかりにたまちゃんの爪が白夜を狙った。

 しかし、白夜は来ると分かっていたのかするりとかわした。

 2人のHPはもう3割を過ぎている。


「鳳凰!」


 鳥居くんの呼びかけに反応して、鳳凰は翼を構えた。


「まずいよ! 翼の攻撃だ!」


「ああ、しかもユキももろともってな勢いだぞ!」


 逃げろと僕たちがわたわたしているのもつかの間、鳳凰は無視して羽を放射した。


「グオォォォ!!!」


 とその寸前、ライオンの咆哮により翼は一掃された。

 ただの咆哮で、だ。


「嘘でしょ……」


 あまりの強さに呆然としてしまった。


「天野くんってそんなに学力いいの!?」


「いやあ……そんなでもないぞ?……」


「これはきっと愛の力ね!」


 雲母はこの手の話が好きなのか、先ほどからこんなことばかり言ってくる。

 残念ながら男同士なのでキュンも何もないが……


「まあなんにせよこれで……」


 隼人はそう言いながら結城さんの方を見た。


「流石 模範解答(パーフェクトアンサー)ね」


「なんですかそれ!?」


「あら知らないの? あなたそう呼ばれているのよ?」


「知りませんよー!」


 結城さんはあわわと顔を真っ赤にしている。


「そんなに嫌かなあ、むしろかっこいいと思うけど」


「まあそりゃ宮には経験することのないことだもんな。憧れるのも分かるさ」


「そうは言うけど隼人もでしょ……」


 お互いに言ってて虚しくなった僕らは、この話は終わりとばかりに真顔で2人の戦いを見た。

 この頃にはもうお互いのHPも1割を切っていてそろそろ佳境に入りそうだ。


「たまちゃん!」


「白夜!」


 お互いに焦燥が感じられる。

 額にはじんわり汗をかいている。


「さて、そろそろ終わりにしましょうか」


「っ!?」


 佐々木さんが最後と言わんばかりに、白夜は攻撃をラッシュしてきた。


 ズザザザっ!


 たまの背後をとった白夜は強靭な尻尾で、たまを上空に投げやったかと思うと、上下左右あらゆる方向から鋭い爪を振り回した。

 空中で爪で引き裂かれた音を撒き散らしながら、たまは落下していった。


「ふふ、勝負あったわね」


 シーンと周りは静まり返って、最後に残ったのは砂埃の舞い散る空間だけだった。

 たまはボロボロになっており、誰もが終わりだと悟った。

 佐々木さんは勝利の余韻に浸っていてどこか火照っている。


「……です」


 そんな中、1人の少女が呟いた。


「まだ……」


 この忘れられたかのように静かな中で呟いた。


「まだ! 終わってません!!」


 結城さんの珍しい叫びがたまの心を、身体を動かした。


「んな!?」


「この戦いは負けられないんです! 東野くんや雲母ちゃんやクラスのみんな! そして迦具土くんが頑張ってくれているから、私は諦めません!!」


 シュバババ!


 猫特有とも思われる、素早い引っ掻きの音が聞こえた。

 否、音は遅れて聞こえてきた。


 ドスンっ!!


 たまが空中を回転して地面に着地すると同時に、白夜の身体が地面に伏した。


「「「わああぁぁぁ!!!」」」


 先ほどの1組、2組、3組の大歓声よりもさらに大きい嵐が、僕たちを注いだ。


「結城さん!!」


「迦具土くん!みんな!」


「すごいわ月!」


 雲母は喜びや感動が抑えきれないのか、思わず抱きついている。


「……これで松坂レベル」


「おお! そうだそうだ! やったあ〜! 最高ランクだ!」


 あまりの激闘に忘れかけていたが、そもそもの

 目標はそれだ。

 普段そんなもの食べられないし、今からよだれが……


「宮、嬉しいのは分かるが汚い……顔が」


「顔なの!? そこよだれじゃないの!?」


「いや、よだれと相まって余計醜い。」


「酷い!!」


 まあなにはともあれこれで修学旅行も最高に楽しめるぞ!


 いつの間にか集まっていた、脱落組の9組の人まで巻き込んで大騒ぎとなっていた。


「あの……」


 ブオォォ!


「「あっつ!!?」」


 なにが起こったのか分からないが、ユキが燃やされていた。

 ついでに僕も熱い。

 2人して頭からプスプスと煙を焚いている。


「あの……僕が代表者なんですけど」


 !!?


「え……?」


 鳥居くんの爆弾発言の後、僕たちは揃ってユキを見た。

 ユキはみんなに見られて照れているのか、恥ずかしがって頭を掻いている。

 が、僕たちが見たいのはその斜め上のHP……


「ゼ……ロ……?」


「何も私が代表者なんて言ってないでしょ?」


「「「ええぇぇぇ!!!?」」」


 佐々木さんのセリフに思わず僕らは口を揃えて叫んでいた。


「そ、そんな! じゃあ……」


「私達が優勝ね」


 がっくし!


 僕は情けながら泣きかけた。

 両膝両手を地面につけていた。


「お、落ち着け宮! 言っても俺たちは2位……」


「おーっすおまえら。テレビで見てたけど頑張ったな〜」


 東野先生が体育館に入ってきて、褒めてくれた。


「まあ惜しかったんじゃないの? ビリだからって落ち込むなよー」


「へ?」


 2位と言いかけた、隼人の口が固まった。

 固まったのは9組全員だが。


「え? 知らんの? 1位以外は倒した生徒数で順位付けするんだぞ」


「えーと僕らが倒したのは……」


「朝霧と1組数名……」


「そ、つまり圧倒的ビリだな」


 東野先生がウインクしながら人差し指を上に立てているが、正直今の僕らには嘲笑にしか見えない。


「え!? みなさん知らなかったんですか!? 私てっきり1位以外は狙ってないのかと……」


 素直な結城さんはとんでもない勘違いをしていたようだ。

 ただ僕たちは出来るだけ上位に残るために、ずるく隠れたり逃げたりばっかりしていただけなのだ。


「まあお前たちみたいに逃げられてばかりじゃ、戦いにもならないからな。だから多分こういうルールなんだよ」


「…………」


 冷たい風が吹き荒れる中、何も言い返せない僕と隼人の顔は真っ青になっていた。

 理由は簡単、みんなの激昂の視線と、天野くんによる熱い眼差しが今になって刺さったからだ。


「宮……」


「なんだい隼人」


 隼人は盛大に深呼吸して、尚且つためを作ってから……


「逃げるぞ!!」


「了解!!!」


 僕らは一目散に逃げた。


「「「まてごらぁぁぁ!!!」」」


「君待ってくれ!」


 クラスメイトの激怒の叫びと天野くんによる甘い言葉に、僕たちは全速力で体育館を抜けて校内中を走り回った。

 喧騒が響く中、結城さんだけが苦笑いしていた。

次は修学旅行編か…もしくは…

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