テスト10日前!
そんな僕ももうすぐ中間テスト!(泣)
天野くんとの騒動があってから数日、今日は土曜日。
中間テストまで、あとのこり10日だ。
そんなこともあって今日はみんなでお勉強会をしていた。
「暑いんじゃあ!」
まだ五月の半ばに僕は呟いた。
「おいおい宮、まだそんな季節じゃないぞ?」
汗をかいて、だらーとうな垂れている宮にむっかって、隼人は呆れたような顔で言った。
「むさ暑いだよ!」
そう、ここには男しかいないのだ。
「しょうがないだろ雲母と結城は用事があったんだから」
今日、雲母は家で弟の面倒があり、結城さんは家の人とお出かけだそうだ。
「なら各々家で勉強しようよ」
「いや、それだとおまえは絶対に勉強しない」
くっ、確かにしないだろう。
それはいい、まだ許せる...んだが!
「なんで天野くんも一緒なのさ!」
普段不良な天野と、宮たちはまったく接しないのに、さもあたりまえのように座っている。
「なんだよ宮っちゃん、俺たち友達だろ?」
「いや、友達になった覚えはないよ!?」
正直、数日前の出来事があって会いたくなかった。
思い出したくもないあの少女マンガ物語...
角でぶつかった後、家で作ってきたとケーキを渡したり、雨が降って帰れないをわざと天野くんの前でやったりと...…
だいたいケーキはその日のうちに作れるわけないだろ。
どんだけ恋に夢中だよ...…
「(しょうがないだろ、こいつも勉強しなそうだし。天野がやればほかの不良も渋々やるだろ)」
うーん、そんなにうまくいくかなあ。
たとえ不良の統括である天野が勉強したところで、他の不良が勉強することはないだろう。
「ところで隼っちゃん、例のものは本当にくれるんだよな?」
「もちろんだ。おまえが他の不良も勉強させたら、彼女の写真をくれてやろう」
彼女の写真!?
それってまさか...…
グッ!
隼人は宮の不安を見抜いたのか、すがすがしい笑顔でグッドのハンドサインをした。
隼人め!
僕の写真を売ったな!?
後で覚えトケヨ?
「なんで宮っちゃんはにらんでるんだ?」
「さあ、まあ恥ずかしい写真でもばらまかれたんだろ」
「そのとおりだよ!」
隼人はいつものことのような顔をして普通に話した。
しかし宮にとってあの写真は嫌な思いでそのものなのだ。
「ほらそんなことより、さっさと始めよう」
宮の叫びを華麗に無視した隼人が、勉強道具を出し始めた。
宮も諦めたのか、自分の筆箱を取り出した。
天野も写真ほしさなのか、やる気がみなぎっているようだ。
そして悠太も自分の勉強を始めようとしていた。
「悠太いたの!?」
回送の中に突然現れた悠太に、宮は驚きの声をあげた。
「ずっと一緒にいたぞ」
隼人は悠太に気づいていたのかさらりと答えた。
悠太自身、寡黙な性格なためか、この反応に慣れているのか、うんうんと黙ってうなずいた。
「なんだ、みんなにも見えていたのか。俺はてっきり幽霊かなにかだと。」
「もはや幽霊レベルなのか、悠太の影の薄さは...…」
幽霊同等の影の薄さに、あらためて宮は苦笑した。
「とりあえず、英語から始めるか」
隼人の提案からやっと勉強会が始まった。
ー
夕方。
珍しく勉強に集中していたせいか、いつのまにか夕日が傾いていた。
天野は途中から寝ており、これでもいつもよりがんばったんだぞ、と言う寝起き一発目の言い訳に宮は苦笑していた。
寝たら殴って起こすと言う隼人の脅しで、寝ずに勉強していた宮だったが、理由はそれだけではなかった。
せっかくの修学旅行、どうせなら豪華に楽しみたいしね。
結城さんのためにも。
「へー?」
宮の意図に気づいた隼人が、ニヤニヤした目で宮を見た。
その視線に気づいた宮は、顔を夕日のように真っ赤に染めた。
天野は2人の考えてることに興味がないのか、まだ眠そうな目をこすっていた。
「...…そろそろ帰る」
今日始めてかと思われる悠太の発言は、帰りたいということだ。
これで普段、宮たちとコミュニケーションがとれているのだから不思議だ。
「そうだな、そろそろお開きにするか」
「あ、みんな帰るの?気をつけてね」
やっと勉強会が終わる雰囲気に、宮は分かりやすく隼人たちを追い出そうとした。
「言っとくが、1人でも勉強はしっかりしろよ?」
隼人が浮かれた宮を見かねて、しっかりと釘を刺した。
「もちろんやるとも!」
まるで言葉だけかのような宮の返事に、隼人は疑いの目を向けたが、なにかに閃いたのか、それ以上なにかをいうことはなかった。
「「おじゃましましたー」」
悠太以外はそうつげて帰っていった。
しっかり扉が閉められるのを確認してから、宮は即行で部屋に戻り、買ったばかりのゲームを起動した。
ユキは、さっきまでの宮と隼人のやりとりを聞いていたのか宮に呆れたため息をもらした。
ピンポーンっ
ゲームを始めて数10分で、チャイムが鳴らされた。
普段、1人暮らしな宮の家に、誰か来ることはほとんどなかったため、宮は大方なにか忘れ物をしたんだろうと、誰とも確認せずにドアを開けた。
「あ、迦具土くんっ。突然来てごめんなさい」
なんとそこにいたのは、急に来て申し訳ないのか少し顔を赤らめた結城だった。
ま...…まって、なんで結城さんがこなとこに?
いや、部屋が隣なんだからいてもおかしくはないんだけど...…
そんな宮の雰囲気を察したのか、結城は説明した。
「あの、さきほど東野くんが、宮くんがまだ勉強をがんばっているから、夕飯でも作っていって手伝ってやってほしいと言っていたので」
あんの隼人め、なにか閃いたのはこれだったのか。
でも結城さんと居れるし、怒るに怒れない。
というかなんで隣が結城さんの家って知ってるんだ...…
1人でぎゅっと手を握り、嬉しいような悔しいような顔をする宮に、結城は「?」な顔をした。
「まあ立ち話もあれだから中に入ってよ」
「お、おじゃまします」
まだ異性の家に慣れてないのか、結城はおどおどしながら中に入った。
あ、まずい。
ゲームつけたまんまだ...…
まだがんばっていると思われている手前、ゲームがついているのはまずいと、宮は思った。
結城さんに少し待ってと言って部屋を片付ける中、結城はユキの頭を撫でていた。
ゲームを片付けて、勉強道具をばっちり広げていることに、ユキは本日2回目の呆れた目を向けた。
「あ、お夕飯もしよければたべてください」
「ありがとう!」
ご飯だし砂糖もほとんど使われてないだろう。
隼人が言ってくれたんだしここだけは感謝しないとな!
「東野くんが、勉強しているから甘いものの方がいいだろう、とおっしゃっていたので甘いもの多めにしました!」
ピシャっ
宮の顔面に亀裂の入る音がした。
あんのくそやろう!
次あったら鼻に塩化ナトリウムぶちこんでやる!!
次に生きて会うことができるかどうか分からないということを、宮は意識の中から放棄した。
助けを求められたユキは、気まずそうに顔をそらし、手を合わせてお祈りをしている。
芋の甘煮からは、明らかに湯気とは違う煙が漂っている。
結城はまたも自分の料理に毒物が紛れていると知らないのか、早く食べてほしいと言わんばかりに宮をきらきらした瞳で見ている。
「ゆ、結城サン、のどが渇いたのでお水を取ってきてクダサイマセンカ」
「あ、はい分かりました!」
きらきらしたオーラを漂わせて台所に行く結城を見て、その気持ちを無下にできないと、決心した宮は料理を一気に飲み込んだ。
甘い芋は、土に帰れと言わんばかりに宮を地にたたき伏せた。
まさか..….芋と心中することになるとはね...…
芋とともに土に帰った宮の言葉は、それが最後だった。
社会意味ワカンナイ