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ケモノテスト  作者: ヤタ
2章 獣修決戦!!
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テスト2週間前!

遅くなりました!

 獣修決戦は6月の初めに行われる。

 それに伴って王充学園の修学旅行は少し遅い。

 今は5月に入って少したったが僕達はものすごい危機に襲われていた。それは……


「中間テストまであと2週間だ!」


「その通りだ宮。そして宮以外の俺たちはテストの点数が悪い。つまり獣修決戦でもボコボコにされる未来しか残っていない!」


「え、僕以外なの?へへへ照れるな」


「……宮は悪すぎて言葉にできない」


 いきなり現れた悠太がボソッと呟いた。


「そんなことないよ!?君達と同じくらいの……」


「その通りだ!」


「そんなことないくらい言えぇ!」


 僕の必死の叫びは無視された。

 でも確かにテストが出来なければ一方的に虐殺されるだけだな…ユキが。


「おい!?ご主人それは許さないぞ!?」


 こいつには今ペンダントを付けているからこっちの気持ちがある程度伝わっているのだ。


「ついでにユキが虐殺されればお前も終わりだからな?」


「ああ!そうだった!」


 色々な効果の代償にユキが受けたダメージは僕も痛みとして伝わるのだ。


「くっそ、ユキだけなら良いと思ったんだけどな……」


「もう出てっていいか?」


 ケモノを大事にしない主を青い顔で見ながらユキは言った。


「とにかく勉強だみんな!このテストで悪かったら修学旅行で(わら)を食う羽目になるぞ!」


「「「おお!!」」」


 教卓で叫んだ隼人の声にクラスの大半が拳を上げた。

 しかし、幾人かの不良共はクラスを仕切る隼人を横目で見て舌打ちをした。


「いいの?隼人。あいつら指揮に影響するかもよ?」


 クラスのみんなが勉強ムードに移り、隼人も自分の席に着いたとき僕はコソコソ話しかけた。


「んー、結構問題かもなあ。特にこのクラスを統括してるあの天野がめんどそうだ」


 天野(あまの) 亮介(りょうすけ)……この学校の不良を全て統括している頭だ。

 確かに彼なら、少し人相の怖い隼人程度では支持されても無視だろう。

 それに修学旅行も楽しみというわけではないようだ。


「でも逆に天野1人を説得できれば問題は全て解決されるがな」


「……天野の情報を集めてきた。」


「うわ!?悠太いつのまに。というか天野の情報?」


 いつもながらの影の薄さだ。


「ああ、ありがとう。あらかじめ悠太には天野の情報を依頼していたんだ。しかし速かったな……」


「……そこら辺の不良が天野を大声で称えてた」


「なるほどそういうことか」


 納得したような顔をしてから隼人は悠太の仕入れてきた情報を読んだ。


「なんて書いてあるの?」


「天野は彼女がいないらしい」


「そんなのなんにも使えないじゃないか」


 彼女がいなかったところでこちらの指示に従ってくれる訳ではない。


「いや、そう笑えたものでもないぞ。どうやら天野は結構運命的な一目惚れが多いそうだ。それもベタなやつが」


「それがなんになるのさ」


「つまり天野に適当なやつと恋させてそいつとのデート1日券とか渡せば言うことくらい聞いてくれるだろ」


 なるほど、確かにそれなら指示は受けてくれるだろう。

 でも……


「恋させる相手がいないじゃないか。僕らの知り合いは雲母と結城さんだけだよ?それに女の子にこういうことをさせるのはちょっと……」


 女の子の恋っていうのは特別なものだろう。

 それを利用するってのはかわいそうな気がする。


「そこは問題ない。ちょっと結城来てくれ!」


 え、まさか断れない性格の結城さんにこの役を?


「はい?お呼びしましたか」


「結城にはしてもらいたいことがある。それは……」


 まって結城さん!

 その話は聞いちゃダメだ!


 僕は必死に叫びたかったが隼人に口を押さえられて声が出ない。


「宮を女装させてほしい」


「……へ?」


 女装?僕が?


 そのとき僕は珍しく頭の回転が速くて全てを悟った。


「そんなのいやに決まって「分かりました!!」る…じゃん…」


 結城さんの笑顔な2つ返事に僕は自分の尊厳の折れる音が聞こえた。



 ー


 風になびくストレートヘアー。

 頬を赤らめた顔。

 制服のスカートを握って震えている姿を見れば誰もが可愛いと思ってしまうだろう……僕じゃなければ!


「思った以上に似合ってるな……」


「はい!宮くん可愛いです!」


「この前もそうだったけど似合いすぎて不気味ね」


 隼人と結城さん、雲母が口を揃えて褒めてくれたけど正直嬉しくない。

 まさか隼人が、結城さんじゃなくて僕に天野を恋させようと考えているなんて、思いもしなかった。


「なんてことだ……もう僕お婿にいけない……」


「大丈夫よ。元からいけるような顔ではないわ」


「まさかのとどめ!?雲母少しは慰めを入れたらどうだよ!」


「大丈夫です宮くん……私がお嫁に貰ってあげます!」


「お嫁!?」


 結城さんまでとどめを……


「だいたいなんで僕が女装似合うなんて分かったのさ?」


「ん?雲母に写真を見せて貰った」


 雲母がにこやかな顔をしてる。

 あとであの顔を絶望色に変えてやろう。


「ということで早速[宮を天野にくっつけてみんな楽しい修学旅行作戦]を始めようか」


「くっつけないでよ!?それにみんなって僕は楽しくならないじゃないか!」


「今天野は購買にいるようだ。その帰り道にこの曲がり角で宮にはぶつかってもらう」


「無視しないで!?」


「そこでユキは天野とぶつかるタイミングを宮に教えてやってくれ。おまえの小ささなら天野にはバレないだろう」


「了解だ」


 隼人の「散!」の掛け声とともにみんなは隠れにいった。


 くっそみんなして僕を無視して……


「(ご主人!天野ってやつがきたぞ。準備して!)」


 ユキからの気持ちが伝わってきた。


「(3……2……1……今だ!)」


 僕は雲母曰くベタなシチュエーションである紙束を抱えて走り出した。


 ドカっ!


 ユキの指示は完璧だったようで、天野と僕は見事曲がり角でぶつかり、抱えていた紙束を宙に投げ出した。


「いってえな!てめえどこに目をつけて……!」


「す、すみませんでした!」


 ひい〜!

 天野くんめちゃくちゃ怒ってるよ!

 殺される殺される殺される!


「(すごいな宮のやつ、涙目まで浮かべて完璧じゃないか)」


 隼人たちが遠くでそんこことを話しているとも知らずに僕は完全にパニックになっていた。


「こ、これからは気をつけろよ?ほらこれ」


「え?あ、ありがとう……」


 てっきり怒って殴られて男ってバレて校舎裏に連れてかれてボコボコにされた挙句写真撮られてSNSに拡散されて僕の人生は終わるかと思っていたのに、意外にも天野くんは紙を拾ってくれた。


「んじゃあ俺行くから」


「あ、はい」


 僕の横を通り過ぎる天野くんの顔がほんの少し赤かったのは気のせいだろうか。


「よし!完璧だったぞ宮!まるで少女漫画の一部のようだった」


「気持ちの悪いこと言うのはよしてくれ」


 宮×天野なんて冗談じゃない。

 なんにせよこれで僕の女装は終わり……


「さあ次のステップいくぞ」


 ん?


「え?は!?まだなんかあるの!?」


「まだもなにもこの作戦はステップ10まであるから。言ってなかったっけ?」


「聞いてねええぇぇ!!!」


 僕の叫びは虚しくその日はずっと女装で天野くんと対面させられるのであった。


雲母の登場シーンが難しい…

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