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ケモノテスト  作者: ヤタ
1章 ケモノ達の学園
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ケモノのはじまり

どうも初めまして。ヤタです。

初めての小説投稿緊張しますね(笑)でも小説って書くの楽しいですね。国語力無いけど精一杯書かせていただくのでほんの暇つぶしにでも楽しんでもらえると嬉しいです!というかそうなるよう頑張ります!

「はい! 次!」


  僕、迦具土(かぐつち) (みや)はこの時をずっと心待ちにしていた。

  1年のときの高校生活はあまりにも退屈で味気どころか匂いすらしなかったのだ。無味無臭、空気より味のないものなんて初めてじゃないだろうか。

  そう、今年から2年生。待ちに待ったケモノテスト(・・・・・・)が始まろうとしている。

  この、王充(おうじゅう)学園では生徒達の学力向上のためにテストに面白いシステムが加えられていた。

  それが『ケモノテスト』。

  ケモノテストとは、ケモノを戦わせるゲームだ。 テストの点数がそのままポイントとなりケモノのレベルを上げたり、装備を買ったり……つまりRPGのように育てることができる。

  戦いには()けが生じる。 相手の点数を奪ったり、装備の交換、クラスの入れ替えまでお互いが承諾(しょうだく)すればほとんどなんでも有りだ。


「はい! 次!」

 

  さっきからなんなんだ、なんて声が聞こえそうだが、これは決して軍隊の敬礼確認とかではない。今は始業式の前、もっと言うならクラス発表よりも前だ。どこかフワフワした雰囲気が漂ってるのは初期召喚が行われているからだろう。この召喚で僕のこれからの相棒が決まる。

  選ばれるケモノはこの前受けた召喚テストの結果によって決まる、ここでほぼ後の結果は目に見えてるのだ。

  つまり弱い動物だった場合は……うん、考えないようにしておこう。まあ召喚テストも自信はあるしそこまで酷いやつではないだろう。きっとそうだ、うん。


「おい! 次は迦具土だぞ、早くしろ!」


  いつの間にか僕の番が来ていたらしく、先生がこっちに向かって大きく声をあげている。


「まあまあ先生、落ち着いてくださいよ。善は急げって言うじゃないですか」


「うん、だからはやくしろって言ってるだろ……てか絶対おまえはその意味間違えて覚えているな」

 

  僕のさわやかな物言いに先生はすっごく呆れた顔をした。それはもうものすごく。


「それくらい分かっていますよ。牛御膳(ぎゅうごぜん)は熱い内がおいしいから速く食べろとかそういう……」


「迦具土 宮は去年留年……と……」


「ちょっとまって!? 今完全に僕を諦めたでしょ!」


「諦めたくもなるわ! 何が牛御膳だ! そもそもぜんの漢字違ってんじゃん! ああ牛御膳食べたくなってきたし!!」


 先生の最後のセリフが特に切実に聞こえる……しかし僕はそんなことより留年のことしか気にしてられならない。


「というか速く召喚してくれ……お前がこの列最後だからってぐだぐだしすぎだ……」


 僕は今日寝坊で遅刻になりかけていたせいで、学校に着いたときには既に大行列が出来ていた。それもしょうがない、昨日はこの初召喚に興奮してなかなか寝付けなかったのだ。


 もし学校で史上最強のケモノが出てきたらどうしよう……


 僕の心はこれから出会うケモノに高2とは言えないほど躍っている。顔はニヤつきに溢れていて今にも強欲が決壊しそうな勢いだ。おっといかん……クールにいかねば、COOLに。


「気持ち悪い顔してないで速く召喚してくれ」


「む、酷いこと言いますね先生……すんごいケモノ出てきて腰抜かしても知らないですよ?」


「分かった分かった。だから速く召喚しなさい」


先生確実にそんな事はありえないというような顔をしているなあ……


「まあ確実にそんなことは絶対ありえないよ」


「絶対まで付けられたよ!」


 心を読んだかのように核心をついた先生は、ついでに絶対まで追加していた。

 僕はそんなかわいそうな目に遭いながらも、ぐっと堪えて明るく叫んだ。


「よっしゃいくぜ! 召喚!」


  僕の意気のいい叫びとともに壮大(そうだい)なエフェクトがかかった。徐々に光が薄らいできて僕の相棒となるべきケモノのシルエットが浮かび上がってきた。まるで雪のような純白な白い毛並み、なんでも削り取れそうな牙、どんな危機にも対応できそうな(ひげ)、そして……


「ちっちゃ!?」


 なんと、サイズはとても小さく僕は思わず叫んだ。

  (てのひら)にでも余裕で入り込んでしまえそうだ。


「ね、ねずみかよー!!!」


……僕のこれからのパートナーはネズミに決まりました。


「史上最強ねえ……」


「やめて、そんな捨てられた哀れな子犬を見るような目で僕を見ないで!」


実際捨てられたようなものだけどね……運に。


「そんな落ち込むとは失礼なやつだな」


急に場外から声が聞こえたので、一瞬頭が空白になつた。周りを見回したが、辺り一面喧騒に包まれているし話に入ってきた様子もない。


「こっちだこっち」

 

 妙に高いソプラノのような声……まさかと思い僕は足元を見た。


「ね、ねずみが喋ってる!?」


 白い小さなネズミが頬を掻きながらこっちを見上げている。


「おお、喋れるタイプのケモノは珍しいな。良かったなアタリだぞ」


「そんなアイスが当たって良かったねぐらいの軽さで言われても! それにそこは正直どうでもいいでしょ!? ここで運が良くてもねずみの時点で運悪いしプラスマイナスで言えば100%マイナスだよ!」


「よく息続いたな……」


 僕は(いき)()()えになりながら叫んだ。

 というか叫んでないと目から(うろこ)がこぼれ落ちてしまいそうだ……


「まあおまえの召喚テストの結果が悪いせいだろ」


「僕そんなに酷い成績だったんですか!? 結構自信あったのに!」


「おまえは本気で言ってんのか? ……この学年でおまえは最下位だよ!」


「ええ!? そんな馬鹿な!」


「馬鹿なのはおまえだ! 坊っちゃんで有名な作者の名前を答えろ。さらにその作者の有名な小説、吾輩(わがはい)は( )であるの空欄を答えろ。なんでこんな簡単な問題でおまえの回答は[聖徳太子(しょうとくたいし)]なんだよ! ちなみに[吾輩はコロ○ケである]ってなんナリよ!? 」


「む……この教科書嘘が書いてあるな……」


「それは歴史の教科書だよ……国語だこ・く・ご! なんで旧千円違いでちょっと惜しいことになってんだよ!」


 先生どころかこんなちっこいねずみまでやれやれというような顔をしている。

 なんだか心外だなあ……こっちも本気で書いた訳ではないんだよ? ……コロ○ケは……


 言い忘れてたがさっきからこんなに突っ込んでくれるこの先生は僕の去年の担任の東野(ひがしの)先生だ。適当だけど生徒のことはちゃんと考えてくれてる。僕はこの先生が結構好きだったりする。


「まあいいや、取り敢えずそこの白ねずみお疲れさん。召還!」


 召喚とは別に召還……つまり帰れと言ったが、ネズミは消える気配がない。


「召還! 召還! しょうかん! ようかんの食感! ……」


 途中から意味が分からないようなことも叫んでた気がするがやはり白ねずみが消える気がしない。それどころか俯いて暗い顔をしている。すると突然……


「帰るのいやじゃー! あそこ狭いし居心地悪いんだよ!」


 暗い顔をしていて、少し心配になっていた僕の良心をよそに、ネズミはとんでもない私情を訴えていた。


「おまえはどっかの電気ねずみか! 赤い頬袋(ほおぶくろ)付けて出直してこい! てかおまえたちの住んでる空間狭いのか……」


 実際色も違うしバチバチもならないため、関連性は低い気もするがきっと気のせいだろう。


「まあしょうがないからそのまま連れてけ」


「トホホ……まあ小さいから邪魔(じゃま)にはならないしいいか」


 東野先生はめんどくさいのか適当に僕に押し付けてきた。そういうところは好きでもなんでもない。

ああそうだ、こいつの名前どうしようかな。シンプルにシロ? んーありきたりだなあ。そうだ!


「おまえの名前はユキだ!」


「絶対見たまんまだね……もうちょっと他にないの? ヒエログリフとか」


 ユキはありきたりをどうにかしようとして、結果ありきたりになってしまった僕を完全に看破していた。けれど提示した名前はちょっとよく分からないことになっている。


「ヒエログリフてなんだよ、考え抜いた結果古代文字になってんじゃん……」


「ユキよりはありきたりじゃないぞ」


「いや、ありきたり回避のために色々なもん失ってるよ!」


 そんな名前は絶対嫌だと僕は必死に懇願した。というか普通は呼ばれる側が嫌なはずでしょ……


「だいたいヒエログリフ呼びにくいよ。考えてもみてよ? おはようヒエログリフ、いってきますヒエログリフ、ヒエログリフをいただきます、とかすごく言いにくいだろ」


「今完全に危ないの混じってたでしょ!?」


 オレを食うきか!? とユキは驚愕してきたが何を言っているか分からないというような顔をしといた。


「とにかくユキはユキ! 食べられたくなかったらそうしときなよ」


「認めた! 今完全に認めた!!」


 ギャーギャー騒いでいる僕たちを見て、東野先生が目をつむりこめかみの辺りを人差し指で押している。


「バカのケモノはバカなのかあ……手のかかる生徒が増えた気分だ……」


「「ちょっとそこ一緒にしないでくれる!?」」


「ハモってるよお……完全に手間倍だよお……」


 今度は頭を抱え始めた。隣の列の先生がすごく哀れみな視線を投げかけている。


 というか手間って言ってた時点で先生としてダメな気もする……


「とにかく問題だけは起こすなよ? 本当に……本当に頼むな?」


「信用ないなあ……僕がなんかしましたっけ?」


「うるさい赤点常習犯、おまえ何度先生が助けてやったと……」


 去年のことを思い出したのか本気で東野先生が泣きそうだ。ユキはそんな先生を見てその後僕を一瞥すると、分かりやすくうわーという顔をした。


「いや、赤点って言っても取ってないよ? ギリギリ回避してるし」


「ギリギリなのかよ……」


「いやまあネズミよ……宮だってダメなりにダメなんだよ」


「フォローになってない!? 先生そこ頑張ってるの間違いでしょ!」


 もう泣く涙も枯れたのか、東野先生はグッと親指を立ててはにかんだが、何も嬉しくない。


「とりあえずよろしくな、ダメ」


「ええ!? こっちの呼び名そんなんなの!? なにさダメって……なんか同い年みたい」


「それはタメだな」


 東野先生はもはやただ言い返すだけになってしまった。


「まあ冗談はさておき、よろしくなご主人」


「ご主人……おおなんか偉いみたい」


 今までご主人なんて呼ばれたことはない。そもそも呼ばれてたらこんな学園には通っていないのだが……


「とにかくおまえら、終わったんならさっさと教室に行け」


 東野先生の、もう付き合いきれない空気が分かりやすく伝わっている。あえて言わせてもらおう……僕もそれには賛成だ。


「そういえばクラスも変わるんだっけ……」


「ご主人何か心配ごとでもあるのか?」


「いやあ、うまく馴染めるかなあ……と」


 新しいクラス、新しい仲間。新しい環境はそれだけで大抵の人を萎縮させるはずだ。そこには出会いや運命があるかもしれない。でも同時に暗雲と隣り合わせだ。


「大丈夫大丈夫。ご主人なら上手く馴染めるよ」


「おお! 励ましてくれるの?」


「多分サンドバッグくらいの価値は見出してもらえるよ」


「奴隷!? 馴染むどころかダメな色に染まってるよ!!」


 傷に塩を塗られた気分だ……いや、いっそ塗り込みまくった方が、かえって痛みに慣れて怖がらなくてもいいかもしれない。


 そんなことを考えながら歩いていると、間違えて旧クラスの方向に歩いていた。


「うおっと!? こっちじゃなかった……」


「おいおい迷ったのか?」


 ユキは大丈夫か? と顔を覗き込んでいる。その額には、そもそも高2が校舎で迷うか?と呆れた汗が一筋流れている。


「いや迷ったわけじゃないよ? ただいつもの癖でここに……」


「悪い癖は直しといた方がいいんだぞ?赤点とか特に」


「余計な御世話じゃ!」


 そんなこんなで来た道を戻ろうとUターンしたところ、僕の目に入り込んだのは一枚の壁画……いや半紙である。そこには墨で今月の目標が綺麗に書かれていた。

 見たところ学園長作のようだ。


「なになに? 心機一転し我が身を磨け! だって」


「つまりご主人みたくだらだらするなってことだな」


「そんないつもだらだらしてないよ!?」


「じゃあなにしてるんだ?」


「そりゃあ漫画読んだりゲームしたり……」


「もういい」


 こりゃダメだと言わんばかりにユキは一方的に話をうち切った。が僕もここで退くわけにはいかない……反撃を試みよう。


「そもそも漫画鑑賞だって立派な読書じゃない?挿絵の多い小説と変わらないじゃないか」


「……」


「よく漫画ばかり読んでると頭が悪くなるとか聞くけどさ? あれ完全に嘘だよね。むしろ小説なんか字ばっかりでさ、その中の一文字なんか頭に残るわけないじゃないか」


「…………」


「その点漫画ってのはその時の状況とか情景に映されるんだし頭に残るでしょ」


「……」


「つまりだらだらしてないからね!」


「……」


 グッと親指を立ててはにかんだが、ユキは白い目を向けている。もはや興味のない瞳には生気すら感じない。


「ご主人……じゃあラノベも禁止だな?」


「!!?」


「だって小説の文字なんて頭に入らないんだろう?」


 それは予想してなかった! まずい……ドヤ顔した手前何も言えない……まあ言うけど。


「いやあ、悪い……とは言ってないよ? ほらあの……だから……ね?」


 まあ……言えてないけど。

 歯切れが悪い僕の顔をじとーっとユキが見つめてくる。……やめて!? そんな生気を吸い取るような目で見ないで!? もうもはやその白さ恐ろしいよ!

 僕はもう目を見ない事にした。ほら……目を閉じれば綺麗な……


「ボソっ(お前の顔面に右ストレートっ)」


「うぎみゃあ! サンドバッグやめて!!」


 ハッとなってカッと目を見開いた。危ない……ユキが可愛いらしく耳元に呟いてきたため、鮮明にビジョンが浮かんでしまった。

 さっきのユキの言葉は意外と僕の心を脅していたようだ……奴隷にはならないよう頑張ろう。


「そういえば召喚テストの結果って分からないのか?」


「ん? ああそれなら召喚する前に校庭で結果の書いてある紙を貰ったよ?」


 その場を任されていた新任の先生は、僕が来るのをわざわざ待ってまで渡してくれたが、急いでそれどころじゃなかったためポケットに突っ込んだままだ。


「まあ学年最下位らしいし、今さらドキドキはしてないけどね」


 召喚テストはあくまで召喚するケモノの選別なだけだから成績に付与されたりはしない。だから赤点とかの心配もないのだが……


「まあ……ネズミレベルだからねえ……」


「むっ? ネズミをバカにするなよ!? なかなか生命力あるんだぞ?」


「生命力って……誇示できるところが狭いよ! Gか!!」


「ご主人! 世界のネズミ愛好家に謝れ!!」


「おまえこそ世界のG特殊部隊に駆逐されろ!」


「G特殊部隊!? なにそれ怖い! 想像しただけで鳥肌が……」


 ユキがワナワナと震えている。まあ無理もない、Gはそれだけの破壊力がある。それこそ地球どころか火星を巻き込んでの戦争になるぐらい。


「ちなみにG撃退専門部隊もあるよ。内のおばあちゃんとか……」


「オレそのおばあちゃん尊敬するな……」


「……な」


 話が逸れた……召喚テストの結果だ。早速しわくちゃになった紙を広げて見てみると……


『総合点53点……ゴミか』


「まさかの!? ゴミ!? え、なに僕ゴミなの!?」


「うるさいゴミめ! さっさと燃えるゴミと燃えないゴミで分別されてこい!」


「酷い! てか誰だこれ書いたの!!!」


「そりゃあ燃えないゴミか……ペットボトルって線もある……」


「ゴミが書いてんの!? 何ちょっと仲間だ的な反応見せちゃってんの!!?」


 まさかテスト結果に毒吐かれるとは思わなかった……

 まあ前を向いて進もう、きっとこれを(かて)に頑張れば大丈夫だ、と僕は心で綺麗事にまとめた。


『これはもう無理ですね。諦めて一歩下がって別の道を探しましょう』


 まさかのダメ出し!?前に進ませてもらえなかったよ!!


『人生には色んな道があります……焦らず自分にあった道を歩いていきましょう』


「え、なにこれ!? 良いこと言ってるけどこれテスト結果だよ!!? 御世話焼き過ぎだよ! なにテスト一枚で人生解こうとしてるんだよ!!」


 なんだか悲しくなってきた……


『コツン……ササっ!』


 僕たちが廊下でギャーギャー騒いでいると、何かにぶつかる音と、誰かが物陰に隠れる気配がした。


「だ、だれ?」


 ユキの方をチラッと見てみると、自分でもないと首を横にブンブン振っていた。もちろん僕自身でもない。

 となると誰かが僕たちを狙って? いやそれはない……ここは学校だ。一応この後にシリアス展開する予定はない。


「なんだろう……気のせいかな?」


「いやあ……気配がはともかく音はしたしなあ」


 少しずつ少しずつ、音のした方へ足を引きずりながら近づく。じわりじわりと背中には嫌な汗をかき、ユキも多少固まって緊張している。


「こら! おまえたちそこで何してるんだ!!」


 あと少しで曲がり角の階段、というところで先生がこちらに向かって叫びながら走ってきた。


「やば!? 先生に捕まったらまた説教だ! 去年散々やらかしたから目をつけられてるんだよなあ」


 ちなみにやらかしたと言っても暴力沙汰ではない。


「何を?」


「そりゃあ……あ、ほら逃げなきゃ」


「今完全にごまかしたな?」


 僕たちは猛ダッシュでその場を後にした。結局あの気配はなんだったのだろう。


「(迦具土……宮……くん?)」


 陰でそう呟やかれたのも知らずに、僕たちはリアル鬼ごっこに没頭したのだった。……それはもう全力で。



 結局捕まった。僕らが階段を駆使して昇り降り昇り降りを繰り返して逃避しようとしたところを、先生はまどろっこしくなったのかくだりの途中で大ジャンプ。そのまま僕らの前まで階段を全て飛び越し(・・・・・・)おい迫ってきたのだ。運動神経が良すぎるぞ……

 そんなこんなでお説教。


「ちょ、先生」


「なんだ?」


「とりあえず首根っこ掴んでの移動はやめてください!」


 僕とユキはそれぞれ猫の親子のように(咥えられてはないけど)首根っこ掴まれて、尚且つそのまま引きずられていた。


「ああ悪い悪い」


「痛!!? そこ耳!! 耳を引っ張って引きずる(・・・・)とか聞いたことないよ! せめて立たせて!? 引きちぎれるう!!」


 ユキは僕を見て顔を青ざめている。この先生には逆らわないでおこうと小声で呟いている。

 それが賢明だ……僕も去年から大層御世話になっている。生徒指導兼学年主任兼学園長補佐兼生徒会顧問の富田先生だ。もはや上記の最初が日本語ではなく中国語みたいになっている……ここまで来るとありがたみもくそもない。ちなみに闇の噂だとア○ソックも兼任しているとか……


「んでお前らはなぜあんな所にいたんだ?」


 生徒指導室にて尋問が行われた。


「なぜもなにも道を間違えたって言ってますよね!?」


 移動中に大体の弁明はしておいた。まあ言い訳にしか聞こえてないようだが。


「犯人ってのは誰もが嘘をつくもんだ。おまえがジリジリと何かに近づくのを見たと言っているだろう。なんだ? 我慢できずに防災ベルでも押そうとしたか?」


「する訳ないでしょ! 小学生か!」


「おまえの頭は小学生並みだと東野先生から聞いている」


「あんにゃろう!!」


 グッとはにかんでいる東野先生が頭に浮かぶ。僕はそれを容赦なく搔き消した……二度と現れんな!


「それになんだその白ネズミは……」


「何って……召喚したケモノですよ? そんなことも知らないんですか?」


 ぷくくと手のひらを押さえて笑ってみたが、先生の顔が笑っていない。いや笑っているか……目以外が……


「ほほお、貴様が先生を笑えるほどの立場があるのか?」


「ごめんなさい、土下座でも何でもするので拳と僕の成績判断書を下ろしてください」


 富田先生は左手に僕の成績を判断する紙を、右手はゲンコツをそれぞれ持っていた。肉体的と社会的にそれぞれ殺そうなんてこの先生は(むご)すぎる。


「そうじゃない、なぜその白ネズミを召還せずに手元に置いているんだと聞いてるんだ」


「ああ……それならユキが帰りたくないって……」


「じゃあご主人さらバギャギャバ!!」


「いやこの状況で返さないよ!?」


 僕は思いっきりユキを行かないでと抱きしめた。正確には握りしめたが。


「いや……おまえそれ潰れてるからな……?」


 手の中を見るとユキが、しなっと干からびたほうれん草みたいになっている。まあ大丈夫だろう。


「ということです」


「おまえはしれっと説明するな……手の中をきちんと埋葬してやれよ?」


「はーい」


 今日は始業式でしかも予鈴が鳴ったため、今日は珍しく早く解放された。まあ冤罪なのだし当然といえば当然なのだが、いつもは問答無用で冷たい床に正座で雷を落とされるところだ。今日はラッキーかもしれない。

 ちなみにユキは水をぶっかけたら復活した。


「んでご主人どうするんだ?」


「んー、そもそも考えたらクラス分からないじゃん。クラス分けが発表されているところに行こっか。」


 僕たちは今度こそ地獄を見ないためにも道を間違えないよう注意して歩いた。

1話が終わってどうでしたか?

次が楽しみ!なんて思ってもらえてると嬉しいです。次からもっとヒロイン出していきたいと思います!そして笑いをもって取り入れたいですね。次もよろしくお願いします

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