異世界チュートリアル【後編】
名前:
Lv1
職業:なし
HP 8000/8000
STR+300
VIT+300
AGI+300
INT+300
WIS+300
所持金:100,000G
装備:なし
さっきから驚きっぱなしだったが、今度はむしろ驚きを通り越して呆れた。試練の内容から、ファンタジーの世界に飛ばされたようだと思ったが、これではまるっきりゲームだ。俺は今まで緊張感を持っていたことが急に馬鹿らしく思えてきた。
……というか結局、名前はわからずじまいなんだな。
すると、そんな俺の心を見透かしたかのように、麗華が言った。
「貴方様の冒険者情報は、随分と、気の抜けた方法で記載をなされているようですね。その冒険者情報は、貴方様が、最もご自身の情報が、最も把握しやすい記載方法で記載がなされております。つまり冒険者情報は、貴方様ご自身を表しているも同然でございます。この世界では、”外からいらした方々”のうち約7割が最初の一年間でお亡くなりになります。貴方様もその7割にならぬよう、お気をつけください。」
俺は麗華に、ほぼ直接的に腑抜けと言われ、少しむっとしたが、確かに気を抜き過ぎていたかもしれないと思い、反省をした。
「では冒険者情報について説明をさせて頂きます。冒険者情報には、貴方様が神様から頂いた加護の力、貴方様が今所持していらっしゃるお金の金額、そして、貴方様が今装備なさっている『装備が有効となっている』装備品が、常時確認できます。お金につきましては、はじめに皆様に100,000Gづつお渡ししております。お金は冒険者情報から引き出したり、入れることが可能です、道具も同様に引き出したり、入れることが可能です。ただ、道具は入れられる量に制限がごさいます。また、ご自身の情報でお知りになりたいことがありましたら、冒険者情報を開いて頂き、それを思い浮かべて頂けましたら、可能な限り情報が出てまいります。」
とりあえず、最後に言っていた機能の確認のため、自分の性別の情報を知りたいと思うと、男と冒険者情報の下の方に表示された。
それからお金が1G引き出したいと思うと冒険者情報からゆっくりと金色のコインが落ちて来て手のひらに乗った。
(これが1Gか…何も装飾がないのに手に乗せただけで1Gだとわかるな、なんだか……不思議だ)
出てきたコインを冒険者情報にしまうと麗華は説明を続けた。
「次に、神様から頂いた加護について、説明をさせて頂きます。この世界での貴方様方の身体能力は、貴方様があちらの世界からいらっしゃった時のうち、最も高い能力を貴方様が所持なさっていた時の能力をそれぞれ持っており、そこに神様から頂いた加護の力が加わったもの、となっております。」
つまりは、だ。
仮に、俺が元の世界で陸上をやっていたが引退し、それからボクサーになって死んでしまってここに来たならば……
俺は、この世界で、陸上で現役の頃の足の速さと、ボクシングのパンチ力を兼ね備えた状態に、神からの加護というもので強化された能力になる、ということだ。
「次に、神様から頂いた加護の1つ1つについて説明をさせて頂きます。まずHPについて説明をさせて頂きます。貴方様を覆う薄い光がお分かり頂けますでしょうか?」
右手をよく見ると、確かにうすく青い光が手の周りを覆っている。
(ふむ、これが神の加護か)
「この光は、貴方様の盾となり鎧となります。ですが、無限ではありません。その限度を表すのがHPです。HPは敵からの攻撃を受けると減っていきます。」
つまり、RPGのようにHPが0になると死ぬ、というわけではないということだ。……なぜだかわからないが、違和感を感じる。
「HPは、回復薬などのHPを回復していただける道具や、HPを回復していただける魔法をかけていただくなどで回復が可能です。」
ああ、そうか。冒険者情報の書き方がそれぞれ異なると言っていたのに相手が普通にHPと言っていたから違和感があるんだ。
おそらく、これもこの世界の”会話”の恩恵なのだろう。
例えば、相手がbreadと言っても、自分には相手が伝えたいことがダイレクトに伝わるからこっちにはパンと聞こえるのだ。
その後も説明が続いた。RPGでのステータスと幾つか違う点があったのでそれも込みでまとめるとこうなる。
STR:物理攻撃力up、速度小up
VIT:物理防御力up、魔法防御小up、持久力up、痛覚遮断、異常耐性up
AGI:速度up、思考速度小up、空間からの負荷の抵抗力up
INT:魔法攻撃力up、思考速度up
WIS:魔法防御力up、物理防御小up、MP回復速度up、MP消費量減、異常耐性up
MP:魔法またはスキルを使用するのに必要なエネルギー
こうしてみると、HPとMP以外ゲーム用語から多少意味が違う。
まずこの世界のSTRは、ゲーム用語でいうSTR+AGIだ。
そして、ゲームの世界のようにVITしか上げてないと魔法でイチコロというわけではない。VITは少ないながらもWISの効果があり、WISもVITの効果を少ないながらも持っている。また、VITには感じるダメージを減らす効果、WISにはMPの消費量減少の効果がある。
INTは思考速度upというのがついている以外はゲーム用語のINTと同じ。
AGIの空間からの負荷の耐性とは、例えばいるだけでダメージをくらう空間内でもダメージをくらわないといった具合だ。
「そして、冒険者情報には記載されませんが、”外からいらした方々”は、それぞれ個人能力≪パーソナルアビリティ≫を1つから3つまで有しています。これらは、1人1人異なった能力であり、冒険者情報等では確認できません。また、この世界で個人能力≪アビリティ》が開花することも多々あります。」
つまり最低でも10億もこの世界には違うスキルがあるというわけだ。
さて、自分の個人能力についてだが、俺は記憶もないし……どうしようか
当たり前のことだが、他人に情報はあまり漏らしたくない。
「個人能力は”外からいらした方々”がもといた世界で得意としていたことや、その補佐をするようなものとなっております。ですから、そこから推測して頂きスキルを使用してください。また、どうしてもわからない場合は職業が”分析者”となっていらっしゃるかたに調べて頂くと大雑把にではありますが、わかるようになっております。」
そうして『では職業の話が上がりましたので、次は職業についてお話しします。』『次に装備についてお話しします。』『次にギルドについてお話しします。』…………
と続いていき、しばらくしてやっと話が終わり麗華は部屋を出て行った。
「さあ、どうしたもんか」
俺が悩んでいるのは試練についてだ。
「絶対に強いよなぁ」
試練の内容はあるファンタジー風なモンスターを一体倒すことだ。
そのモンスターはファンタジーの世界ではよく頂点にいるとなっている、有名なモンスター。
そう
「ドラゴン」
ようやく物語がスタートできます。
ここまで読んでくれた方々
こんな長文の説明文につきあってくださって、ありがとうございました。