銀髪の少年
机が2つ、椅子とベッドくらいしかない簡素な部屋。
この宿は武器屋の主人こと、総一郎さんに勧められた場所の1つである。1日2食つき、風呂もあり、なかなかの高待遇の割に安めの値段となっている。
俺の視線は部屋に1つしかないベッドに眠っている”緑の加護”を纏う、銀髪の少年に向けられている。
あれからいろいろあった。
ペトロは軽傷そうであったので、とりえず“蘇生アイテム”である“蘇生結晶”を使い、体のダメージを回復させる“栄養剤”を飲ませた。
ちなみにこの“蘇生アイテム”
初めてこの世界に来た者は間違えやすいことこの上ないが、蘇生とあるが別に死んだ者を蘇らせるわけではなく、ただHPがゼロの者のHPを1に回復してくれるだけのアイテムである。
それから海斗から陽菜と合流したと連絡があった。
俺は簡単に事情を説明した後、二人には自分の欲しい物があったら代わりに買っておいてくれと頼み、少年を自分の宿まで運んだ。
少年のことを考えていると、自然と片手が自分の頭に触れていた。
(アレは何であったのだろうか?)
上手く言葉には出来ないが、酷い瞳をしていた。
ーーーそれに。
既視感を感じた。
アレを見た時、頭痛を感じたのも何か関係しているかもしれない。
(何かを思い出しかけた、気がした、んだがなぁ)
視線の先の少年はあんな瞳とはまるで無縁ですよ、と言うように歳相応のあどけない顔をしている。
今となってはあの瞳を持つ少年とは思えない。
幻覚を見ていたみたいだった。
(…改めて見ると女みたいな顔をした奴だ。)
とはいっても見た目は10歳前後、そのくらいの年格好では男女の差もそうは無いから仕方がない。
不意に、ぴくりと彼の目蓋が動くと、彼の目は薄く開いた。
それから、しばらくそのまま目をゆっくりと彷徨わせていたが、やがて俺の方に止まる。
すると目を丸くさせたかと思うと一瞬で、上半身を起こし、布団を体に手繰り寄せ、俺と反対側に飛び退きながら錆びついた短剣をこちらへ向けた。
しかし表情には恐れの感情が見られ、短剣は震えている。
瞳もあの時のようではない。
「とりあえずその物騒なものを下ろしてくれないか?」
すると先程の一連の行動は咄嗟にしていたのか、はっとしたように短剣を下ろし構えを解いた。
「ここは…どこですか?それからあなたは?」
「ここは俺の借りている宿の部屋だ。俺の名前は佐藤真治という。君が倒れていたので勝手ながら連れてきた。」
「…そうですか、僕の名前はペトロと言います。……助けて頂きありがとうございました。」
落ち着いた口調で返答が返ってくる。だがその実、彼の目は警戒の色を残していた。
「……でもなんで僕なんか助けてくれたのですか?」
その言葉には言外に加護なしなのに、と告げている。
「…ただの気まぐれだ。気にするな。」
最初、ただの気まぐれだったのは事実に違いないし嘘は言ってない。
「………」
目の前の少年ーーペトロは警戒した色を残しつつ、ただ黙ってこちらの真意を探ろうと見つめてくる。
だが生憎、俺はここまで警戒している人への気の利いた言葉など知らないし、こちらがこれ以上何を言おうと向こうの警戒心を高めるだけであろう。
よって、差し当たってこちらにできることといえばペトロ少年の目を見つめ返してやることだけである。
何も話そうとしない者と何も話せない者。
自然とお互い黙ることになる。
「「…………」」
俺もそろそろこの事態に収拾をつけなければならないと思うようになる頃。
そんな気まずい沈黙を破るように
【きゅるるるるーー】
何か可愛らしい音がした。
瞬時にペトロの顔が赤く沸騰し、手でおなかをおさえながらうつむく。
それで張り詰めていた空気も緩んでしまった。
俺は冒険者情報から皿にのった温かいコーンスープとパンを取り出し、ベッドの横にある丸いテーブルの上におく。
「……食べるか?温かいし、俺も手をつけてない。」
ペトロはちょっと顔を上げて、目でちらちらと俺の顔と食べ物を交互に見たのち
「………ありがとうございます。」
と小さく消え入りそうな声で頭を下げて言った。
長い間ろくな物を食べてなかったらしく、パンとスープはたちまちなくなってしまった。
ペトロは何ものっていない皿を物欲しげに凝視していたので、俺は冒険者情報から新しくパンを3つ取り出し突き出した。ペトロは口では遠慮していたが、目がパンに釘付けだったのでパンを無言で押し付けた。
ペトロが最後の一切れを大事そうに食べる。
その頃にはペトロの警戒心も多少は弱まっているようであった。
「ペトロは何か仕事をしているのか?」
「……何もしてない、です。」
そう言ったペトロはどこか少し悲しげだった。
「もし良かったらペトロ、しばらく一緒にパーティを組まないか?」
彼は俺の過去を知る鍵になるかもしれない。そう思っての何気ない言葉を言う。
「えっ⁉︎」
当然のことながら、ペトロは驚き戸惑っている様子だった。
「いやか?」
俺はペトロの目を見て尋ねる。
ペトロは考えるようしばらく沈黙したが決意を決めた様に言う。
「……いやじゃないです。」
俺としてはもう少し訝しんでもっと考えるものと思っていたが、すんなりと肯定をしてくれるならばそれに越したことはない。
「じゃあ、いいな?」
俺は冒険者情報を開き、海斗へと電話をかける。
誤字脱字の指摘から、アドバイスまで待ってます!それからこんなんどう?みたいなのあったらドシドシお願いします!是非採用させてもらいます!
追伸
ただあんまりイジメられると悲しいのでお手柔らかに




