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 全ての作業を終えてクロが部屋に戻ったのは、明け方も近くなってからだった。

 ベッドからサクラが、もそりと体を起こす。

「起きていたのか」

 するりと布団に潜り込んで、不器用な前足が温かな体を抱き寄せた。

「眠らないと、体によくないぞ」

「だって、起きたらクロがいないから……」

 黒犬は愛情に任せてさらに抱きしめる。

「俺だって、いつでもお前の隣に居てやりたい」

 ふと視線を下に向けた彼は、この上なく幸せそうに鼻を鳴らした。

「お前『たち』だったな」

 長い口吻が甘くサクラの頬に触れる。

「ここから出たら、三人でどこかへ出かけたいな」

 両腕を広げた女が、黒い毛に覆われた胸元に沈んだ。

「どこに行きたい?」

「そうだな、俺は犬だから行ける場所なんて限られている。……海、とかいいな」

「そうだね、マックをテイクアウトして」

「芋もつけてくれよ」

 くすくすと笑いながら二人は身を摺り寄せあう。

……お互いの熱情を分け合うのも悪くないが……

 クロは寧ろ、サクラのぬくもりを腕の中に感じるこの瞬間が好きだ。そしてサクラも、黒犬が与えてくれる、ただ甘いだけの時間を何よりも大切にしていた。

「ここから出たら……」

 どれほどの苦労が待っているのか、解らないほどに子供ではない。

 だがこの一瞬だけは幸せな夢だけを分け合って……

(サクラ……放したくない)

 この世でたった一つの『マモリタイモノ』。それが間違いなく腕の中にある喜びに、黒犬は暖かく満たされるのを感じていた。


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