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 決断に三日もかける必要はない。

 翌朝、サクラはクロを連れてドクターを訪ねた。

 サクラの隣に胸を張って座るクロを見ていると、ドクターは鼻の奥がしょっぱくなる。

(この子は……)

……毛皮に隠されて気がつかないとでも思っているのだろうか。あんなに泣き腫らした目をしているというのに。

「決心はついた?」

 努めて冷たい声を出すドクターに、サクラは吃と顔を向けた。

「この子は、私が守ります」

 クロがビクンと震える。

「何を考えている、サクラ! ダメだぞ。俺だって、一晩中泣いて、やっと……やっと諦めが……」 

 諦めきれない涙が黒い毛皮を伝って床に落ちた。

「父親はコレよ? どんな子が生まれるか解らないのよ」

「それでも、クロを選んだのは私です。つらいことや、苦しいことがあっても、クロの全てを受け入れると、決めたのは私ですから」

 それは揺らぎない『母親』の決意だ。凛と居佇む彼女にドクターは少したじろぐ。

「前島のために、『実験動物』を産むつもり?」

「違います。クロのために……そして私のために、私達の子供を産むんです」

「でも、私は反対よ。あなたはまだ若いわ。子供が欲しいなら、ここを脱出してからまた作ればいい」

「子供が欲しいなら、それでいいかもしれない。でも、この子を産んであげられるのは今回だけです」

「……だそうよ。あなたはどうなの、お父さん?」

「サクラ! お前は俺を甘やかしすぎだ」

 クロは鼻先をすり、と彼女の腹に押し付けた。

「こいつを生んでやってくれ。俺が、全てをかけてお前達を守るから……」

「うん。その『全て』を、受け入れてあげる」

 宿ったばかりの生命いのちを真ん中に抱き合う二人に、ドクターは眦の涙をぐいと拭う。

「悪いけど、私は甘やかしてはあげないわよ。この妊娠は、前島に報告させてもらうわ」

 ドクターの顔がぎゅっと厳しく引き締まった。

「前島がサクラちゃんに気を取られている隙に……脱出を早めましょう」

 その瞳にもやはり、前島への憎悪が燃えている。

「覚悟を決めなさいスリーワン……いえ、クロ! 前島なんかに、子供を渡したくないのなら!」


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