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15

 クロが前島に連れ出されている間の話し相手として、126はサクラのもとを訪ねた。

 ピンクのベッドにちょこんと座っている女を見上げるが……

(解りませんね)

 この娘にはぴんと立ち上がって誘う尻尾も、感情のままにパタパタと動く耳も、およそ『オス』を誘うための器官というものが無い。

「スリーワンは、ゲテモノ好きだったんですね」

「『クロ』だよ、ちゃーちゃん?」

 垂れ耳をふさりと揺らして、アフガンは胸を張った。

「何度言えばわかるんですか。私のことは126と……」

「……前島がつけた番号なんか、絶対に呼ばない」

 およそ小娘には似つかわしくない、静かだが、強い言葉。

「番号でなんか、絶対に呼ばない……」

 思わず知らず、鼻先が下がる。

(高潔だ)

 戦う力も持たぬニンゲンの女なのに、その意思はゆるぎない。

 姿はつりあわずとも気高い魂はアルファに寄り添うものとして相応しい、そう思うのはいささか感慨がすぎるか……

「さすがはスリーワン、女性の趣味も悪くない」

 サクラがやや強い口をきいた。

「ク、ロ。クロだってば!」

「じゃあ私は? 『ちゃーちゃん』というのは普通、愛称でしょう。正式な名前があるんですか」

「正式な……」

「ああ、考えていなかったんですね」

 茶色い毛の奥で彼はこっそり微笑む。ニンゲンは嫌いだが、この女とはいつか分かり合えそうな気がする。

 あの黒犬はこれからますますニンゲンくさくなることだろう。誇り高さを失うことなく、より優しく、より強く満たされて。

(そんなスリーワ……クロさんだからこそ、ついてゆく価値があるんですけどね)

 このニンゲンにそれを伝えるつもりは無い。

 まだ今は……


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