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落とされる

連載小説っていうのを書いてみたいので投稿してみました。

いちおう終わりまで続けようと意気込んでいますが、不定期になるとおもいます。

――

第*話 決着、そして……


「ふはははは! よくぞきたな勇者よ! わざわざ倒されにくるとは殊勝なことよ」

「はいはい。わかりましたよ。あんたが魔王ってことでいいの? FA?」

 一番奥の豪勢な椅子にふんぞり返る巨体にはき捨てる。召喚されてからこっち幾度となく戦ってきたが、ついに全力を出すことはなかった。

「そのとおり、だ! 我輩こそが魔王!」

 いちいち叫ばなくても聞こえてるっつーの……だっせぇ。

「部下どもを倒した実力はあなどれんが、我輩には勝てんぞ! なぜなら我輩は」

「肉は飾りで精神だけの存在、だろ? なんども聞かされてわかってるっつーの」

 魔王の言葉など待たない。いつもどおり足先に力を込めて体を前にぶっ飛ばす。魔王の足元で真上に跳躍して、体をひねりながら両手それぞれの剣で魔王のでかい体ごとかち上げる。

 用意してきた聖剣は二本。まず魔王の見えてる体をぶった切って、そのあと出てきた精神体をなぎ払う。この世の剣では切れないっていうからわざわざ冥界までいって盗って、いや取ってきた。勝てない道理はない。

――


「……よし、できた。あとは王国に凱旋して王女さまとのムフフな結婚を描いてお終い、と」

 我ながらホレボレするほどの出来だ、と少年はひとりごちる。薄暗い部屋でPCに向かう彼は自分で打ち込んだ文章を読み返しながらにやついている。さしずめ大物作家の気分でも味わっているのだろう。

 ……イライラする。一事が万事あの調子なのだろうな。これが価値観の違いだけなら見過ごすこともできるのだが。

「うっし、投稿完了。せっかくだし最初から見てくかな」

 ちょうどいい。彼の名作とやらを見てみるか。

「……ッチ。もっと感想よこせよな。評価もすくねぇし」

 ながし読みだがおおまかなあらすじはつかめた。そして予想が覆ることはなかった。

 現実世界から突然召喚された主人公。わけのわからぬままトントン拍子に話が進み魔物との戦い。しかし主人公持ち前の奇跡的なパワーで常勝無敗。水戸黄門も裸足で逃げ出す勇者の特権をいかんなく発揮しながら悠々と魔王退治をこなす。

 そして平和になった王国で王女と結婚し王様になりました。めでたしめでたし。

 たしかに痛快ではある。阿修羅のごとき強さの主人公に自己投影して爽快になれる、これは重要なことだ。異世界を舞台にするぶん感情移入がうまくいかないこともあるかもしれないが、主人公を召喚というかたちで現代の若者に設定できている。弊害はないだろう。

 王女との婚姻も憧れをそのまま絵に描いたようで幸福の表現としては申し分ない。多少ベタな部分もあれ、王道のファンタジーだ。

「……この子に私たちの希望が、あるのでしょうか」

 さてね。期待を背負わされることはあってもかけたことはないからわからないな。

「あなたは向こうで準備をしてください。この子を落とすのは私がやりますわ」



 おかしい。俺の作品は完璧だってのに周りの評価が追いつかねぇ。感想書き込まれてると思えば『おもしろかったです』のひとことだけだったり。

「そうか……時代が俺に追いついていないだけなのか……フッ」

「なんとまあ。ずいぶんと傲慢なのだな」

 完全に油断していた。全身の毛が逆立つ感覚に襲われる。

 その声が俺に対する相槌だと気づくのに一呼吸をかけてしまった。

「ッ!! だ、誰だ!!」

 声がした。ここは俺の部屋で他には誰も居ないから、ふいに声が聞こえるなんてことはないはずだ。

「誰だ、とは。無礼だぞ人間」

 まただ。……おそるおそる、モニタに目をやる。

 信じられないことだが、声はそちらから聞こえたのだ。

 若い女性の声。所謂アニメ声というか、甲高い特徴的な声色が耳について離れない。

 ……いた。さきほどまで無機質な文字の羅列を映していた画面の中に、そいつははっきりと映し出されていた。

「ようやく認識したか、人間。私の姿を拝めるなんてめったにないことだ、幸運を噛み締め歓喜を涙で表すくらいのことはしてほしいものだな」

 ふふん、と胸を張る謎の少女。一瞬ゲームかなんかかと思ったが、こんなキャラが出るゲーム買った覚えはないし。なにより、ここまで精巧な3D描写があるのだろうか。

「な、なんだこれ……ちっちぇえのが……え?」

 一瞬だった。それまでは画面の中にいた少女がいきなり画面から飛び出してくる。

 驚きすぎて動けなかった。

 画面の中では見えなかったが彼女の両手にバットが握られている。あれはたしか中学のときに入って一瞬でやめた野球部のときの……それを少女はおもいきり掲げ上げた、天を割るいきおいで。

 振りかぶったバットがその後どういう役割を果たすのか。スポーツなんぞこれっぽっちもやっていない自分にもそれくらいはわかる。バットは打つために使うのだ。

「ひとつだけ覚えておけ! 私はちいさくなどない! これから大きくなるのだッ!!」

 意味不明な叫び声とともに、天からバットが降ってきたのだけは覚えている。


――

第*話 呼ばれて飛び出て、俺参上!


「おお、そなたが勇者か! 忌まわしき魔王を倒したあかつきには望むだけの褒美を取らせよう!」

 豪勢な衣装に真紅のマント、いかにもといった口ひげをたくわえた王様がいう。魔王なる聞きなれないセリフもこの王様から述べられれば自然と入ってくる気がした。似合ってるなって。

 ようするにファンタジーの世界に召喚されてしまった、ということだ。どういった経緯があるかは理解の範疇を超えていたが、部屋でPCやっていた俺が選ばれ引っ張られた。そういうことらしい。

 まぁ、おもしろいことは好きだ。召喚を行った魔法使いがいうには最強の能力を持ってるってことだったし、案外楽にいけるかもしれん。

 王様の提案を二つ返事で了承し、通貨単位のよくわからない金貨をたくさんもらった。

 振り返り、ため息をひとつ。魔王が現れ、それに従う魔族が恐怖を運んでくる。その最前線に立たされる格好となったこの城のなんと美しいことか。いまだ鉄壁をほこる城壁は美しく均等にカーブを描き楕円を結ぶ。核となる城は左右対称を基に、しかし容易には攻め込めぬ難解な作りをしている。一直線に昇ると王にはたどり着けず、いつのまにか城下へ出てしまう不思議な術が効いているともいわれている。

 守ろう、この城を。なにも持たずここまできた自分だから、動機なんてそんなもんで充分だ。

「……なんてな。くっせえくっせえ」

 とりあえず腹減った。なんか食おう。

――


 目の前に広がる鮮やかな緑。葉が幾重にも重なり木漏れ日を演出している。人の手が入っていない、野生の力強さと温かさがそこにある。

 幹の向きを確認して、ようやく自分が仰向けに倒れているということに気づいた。

「ぐっ……ッ!」

 起き上がろうとするが、頭の中からがつんと痛みが響いてくる。さっき――かどうかはわからないが思い切り殴られた衝撃が残っているのだろう。体は起こせたが、とても立ち上がる気にはなれない。手近な幹にもたれかかるのが精一杯。

 森の中という不可思議な風景と殴られたあとの鈍痛。どうすればいいのかわからない不安と焦燥感。

 ……夢だ。これは夢なんだ。そうだよ俺は部屋にいたんだ、いきなり森の中にいるなんてそんなばかな話が……あったっけ。

 PCモニタから人が飛び出すのを見たばかりだ。あそこからすでに夢だったといえばそのとおりかもしれないが、夢の言葉で片付けられるほど曖昧な現象ではなかったように思う。

「大丈夫か? 少年」

 突然頭の上から声をかけられた。

 正体不明の相手に警戒するべきなのだろうが、ふらつく頭でなにができよう。

「む。これはいけない、すぐに手当てをしなければ」

 眠い。もう目を開けていられない。目の前の人がなにかいっているが、沈んでいく意識にはまるで子守唄のようだった。

―二つで囲まれた部分はこの主人公くんが書いたものだとおもってください。

小説の中に小説って表現をやってみたかったのです。

途中でわけわからなくなったらどうしようと不安です(^q^)

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