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第70話 排除処理


 白光。


 空間が削られる。



 レインの左腕が、消えかける。


 だが即座に生成で補強。


 “自分”を固定する。


 肉体の輪郭を、構造として定義し直す。



視聴者:2,340,882

【腕消えた!?】

【再配置キモ】

【えぐみ】



 観測者は、感情がない。


 ただ処理。


 再配置の前段階――初期化。


 存在を“無かった位置”へ一旦戻す。



 造形師が空中に巨大紋様を展開。


 鉱石の力を最大出力。


 再配置の流れを斜めへ逸らす。


 街上空いっぱいに、蒼白の幾何学が咲き乱れる。



 だが。


 観測者は上書きする。



 造形師の紋様が、一瞬で崩壊。


 式の根幹が書き換えられる。



 男の外套が裂ける。


 だが彼は退かない。



「人類は管理可能だ!」



 レインは叫ぶ。


「再配置は必要ない!」



 二人の生成が重なる。



 その瞬間。


 空が、二重になる。


 蒼い鉱石紋様と、白い生成層が絡み合い、

 巨大な立体術式へと昇華する。


 街の上空に、円環が幾重にも展開。


 回転する環、連結する符、

 縦横無尽に走る光の線。


 まるで世界そのものを書き換える設計図。



視聴者:2,510,114

【うおおおお】

【術式でかっ】

【神降臨】



 同時に、レインは足元からダンジョンの生成を開始。


 地中深くへ深くへ。


 造形師の蒼い紋様を足場に、

 自らの白い層を重ねる。


 反発ではない。


 重奏。


 管理と肩代わり、

 二つの思想が、巨大な術式として一体化する。



 観測者の構造に、亀裂が入る。


 無色の幾何が歪む。



 観測者の“手”が振り下ろされる。


 初期化。



 だが。


 二人の術式が、それを正面から受け止める。



 衝撃。


 空間が波打つ。


 霧が消え、再び生まれる。


 石畳が浮き、静止し、砕けずに戻る。



視聴者:2,700,882

【世界書き換え合戦】

【規模おかしい】

【鳥肌ぶつぶつぶつ】



 レインは決断する。



 溜まっている古い力の解放を、強制的に再開。



 力を、自分へ引き寄せる。


 観測者の圧を、横取りする。



視聴者:2,780,554

【無茶するな】

【全部受ける気か】

【主人公パネー】



 レインの核が、悲鳴を上げる。


 胸の奥が焼ける。


 視界が白む。


 だが止めない。



 観測者の再配置処理が、鈍る。


 構造が揺らぐ。



 造形師が静かに言う。


「……先程とは違う。無理だ!」



 レインは笑う。


「そうかもな」



 最後の圧。


 街全体が揺れる。


 人々は知らない。


 だが世界は、崩壊寸前で止まる。



 そして――


 観測者の構造が、収束する。


 処理中断。



《一時保留》

《観測継続》



 裂け目が閉じる。


 霧が戻る。



視聴者:3,102,991

【止まった】

【生きてるのか】

【涙で見えない】



 街は、崩壊寸前で止まった。



 造形師がレインを見る。


 初めて、わずかに感情が滲む。


「……想定以上だ」



 レインは息を切らす。


 核が、熱い。


 今、受け止めた分が、内部で暴れている。



「今度は、二人とも排除対象だな」



 造形師は言う。


「そうだな」



 三者対立、確定。



 レインは膝をつく。


 胸を押さえる。



 核が、限界を超えている。



 ミナが駆け寄る。


「レイン!」



 レインは苦く笑う。


「……前も、こうだったな」



 地面に、円が描かれる。


 静かに。


 優しく。


 白い光が、花のように広がる。



 生成ダンジョン。


 深層への入口が開く。



「前は三年かかった」


 レインはミナを見る。


 まっすぐに。


「今回は、どれだけかかるかわからない」



 光が、足元に階段を描く。


 霧の粒子が、淡く揺れる。


 まるで、別れを惜しむように。



「ミナ、元気でな」



 ミナの目が潤む。


「そんな言い方、やめてよ」



 レインは微笑む。


 無理をしていない顔で。


「戻るさ」


「肩代わりは、俺の仕事だ」



 白い階段が、深く、深く続く。


 光の粒子が舞い、

 静かな夜の底へと誘う。


 まるで星の内部へ還る道。



 レインは、一歩踏み出す。


 光が足元で揺れる。


 振り返らない。


 ただ、静かに潜る。



 背中が、霧の中へ消えていく。



 最後に残ったのは、

 白い光の残滓。



 ミナが、震える声で言う。


「……ありがとう」



(第70話・完)

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